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いつかの原っぱ~おおいぬのふぐり

いぬのふぐりは
薔薇にあこがれました


うす青い花びらは
いかにも小さくて
花束にもなれない

地面をはうように
ひっそりと

花びらの枚数も少ない気がする
背がとても低いので


お日さまにさらに遠く
ときどき猫が寝そべるから
また折れた

まただよ
かなしいし
いたいし
ぺったりしたね
花びらがちぎれてかなしいね


もしも薔薇のように
トゲがあったなら
猫が寝そべることはない

きっともっと背が高ければ
お日さまにも手が届くし
あったかい


薔薇のような美しい色だったら
花束になれて素敵だろうな
きっとみんながみとれるし
いい香りが香水になるね

薔薇のようにアーチをつくれたら
みんながくぐって笑顔になるし
幸せいっぱいになるね

薔薇のような美しい花に
なりたかったね。。
なれなかったね。。



いぬのふぐりは朝露にぬれながら
そうっと涙しました

薔薇にあこがれました
でもいぬのふぐりです


ある日の日
小さな子が下を見てしゃがみこむ
いぬのふぐりは見つめられて
ふまれることを覚悟した
さあ、、きた

『かーいい。』

あれ、、
ほめてくれたの?
ほめてくれたんだね

『さあ、ふまないように
あっちで遊びましょう』
ママはたからもののような娘を抱きしめてやさしかった


しあわせは
原っぱいっぱいひろがって
いぬのふぐりは小さな花をふるわせた



ある日の日
『星のような花だね』
彼は彼女にそっとつぶやく
『小さくてきれい』
彼女は星の瞳で見つめてくれた

『ぼくと結婚してください』
『あなたをたいせつにします』

いぬのふぐりは二人を見上げた
朝露の涙を光にすかして
お幸せにと
ほほえんだ

黄色い薔薇の花束を
彼女は胸に抱いたまま
静かにうなずいて
うつむきざまに星の瞳に涙をためて

ぽつり。

いぬのふぐりは小さな花びらで受けとめた涙をポッケにしまって

ありがとうと


原っぱいっぱい幸せにつつまれて


ありがとう
ありがとう


薔薇にはなれなかったね


薔薇になれなくてもいいんだね
黄色い薔薇の花束は幸せだったね
おおいぬのふぐりは幸せなんだね



いつかの原っぱで



そのままのあなたがいい








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