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一本の木


300文字


朝は木の目覚め
幾百年の時をこえて
鳥のさえずり
今日限りかもしれぬ命の歌声


予感は木の祈り
木の陰に光さす命の不思議
きみのこれから
二度と来ない朝がはじまる


木に語りかけた
あのひとと語りあうように
鳥と話した
朝日が斜めに歌った
歩きはじめた


前をむくだけ
自分の背中は見えないままに
そのまま歩く
足跡はみなくてもいい
後進にゆずればいい


ゆく
きみはただそれだけだ
いのちは遥か彼方へとゆく
思い出は後ろへとゆく
今この時が過ぎゆくだけ


迷ったときは
それもいい
それがきみだ
いつの日か木になれるまで
ひとは迷うものだ


一本の木になるまでに
ひとは迷い憧れる


あの一本の大きな木に
その木陰にいやされて


それが誰だったか


いつか、あの木のようなひとになる

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