幼馴染の秘密⑤
真一は自分の部屋に戻るとベッドに倒れ込む様に寝そべった。
『忙しい1日だったな。明日の事は大丈夫だと思うけど、あの下級生の2人の事はまだ上手くは避けれないだろう。自分の言葉では届かないかもしれないけど、この言葉は自分で作った物だけど知らない人間からすると翔の言葉だ。
大丈夫、きっと上手くいくさ。』
そう思いながら自分の携帯電話をじっと見つめていると携帯電話が鳴り始めた。
画面を見ると麗からの電話で先程の事で翔の事が気になっているのだろう。
出る事に少し躊躇った。
麗の前では口を滑らせて言ってはいけない事を言ってしまうかもしれないと思ったから。
翔の事だけを心配している事を聞かされると自分の今おける状態の事も心配してほしい、優しくしてほしいと口走ってしまいそうだったから。
それでもきっと取らなければ麗は暫くは翔の事を心配しっぱなしになるのはわかっていたから取らなければならないのだろう。
通話ボタンに親指をゆっくりと添え、携帯電話を耳にあてた。
「あっ、もしもし真ちゃん?今、大丈夫?」
「もうすぐご飯だから少しだけなら。」
「よかった。あのね、翔の事なんだけど…。」
「だと思ったよ。俺も今日、帰りに翔の家に行ったけどお姉ちゃんが出て、移すといけないから会わない方がいいって言われたよ。流石に申し訳なさそうに言われたら何も言えないし…。」
どうしてこんなに嘘がスラスラと出てくるのか自分でも不思議に思えるくらいだった。
「そっか…真ちゃんもそうだったんだね。私も翔の家に行ったんだけど翔には会えなくて…。」
「また熱が下がったら会えるさ。今は待つしかないと思う。」
「そうだよね。ごめんね。会えないと余計心配になっちゃって。」
「構わない。それじゃもうすぐご飯だから。」
「わかった。じゃあまたね、バイバイ。」
真一は通話を終えると電話をゆっくりとその場に置いて、大きなため息を一つ吐いた。
連続殺人犯の初めの殺人は勢いのまま殺してしまい、その後に自分が殺した遺体を見て激しい後悔に見舞われるのだろうが2人目、3人目と殺して行くたびに罪悪感はどんどんと薄れていくのだろう。そして捕まった後に全ての後悔がダム崩壊の如く、押し寄せてくるのであろう。
きっと俺も同じ、1回目の嘘から嘘を重ねていくたびに罪悪感は少なくなる。
今では少し考えれば罪悪感もなく都合のいい言葉がスラスラと出てくる。
嘘を言うのは翔の為なのか自分を守る為なのかわからなくなる程に。
こんな事をしていたらきっといつかばれる。
その時はその時かと諦めがつくと考えていた。
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