引き込まれた世界の中で⑥
この日の授業が終わり翔は咄嗟に出た言葉の事を考えながらクラブに行く用意をしていた。
『友達という便利な逃げ道...本当にこれでよかったのかな?』
ぼんやりと席を立つと教室を出て行った。
「翔...?」
少し様子のおかしい翔を麗は心配しながら見ていた。
「チーっす。」
翔が部室の扉を開けるとキャプテンの二階堂がいた。
「おう、武藤。早いな。俺とアップでもどうだ?」
「もちろんオッケーです。外周何周しますか?」
「3周ってとこで。じゃあ行こうか。」
二階堂は部室のホワイトボードに、
『武藤と外周回ってくる。各自来たらアップしておく様に。全員集まったら今日はフォーメーション決めするからな。二階堂』
と書き殴った。2人は校門まで歩くと校舎の周りを走り始めた。
「そういえば2人でアップするのは初めてだな。」
「そうですね。先輩は男女問わず人気ですから。」
「そうだと嬉しいな。本当はもっと厳しくして上を目指して、今は無名なこの高校でインターハイとか行けたら嬉しいんだけど、もう春と夏の大会で俺の高校サッカー人生も終わりだ。もう後がないんだ。だから今年は勝ちたいんだ。武藤、何かあったらどんどん意見言ってくれ。」
「はい。じゃあ先輩にもどんどん意見しますね。」
「生意気といいたい所だが、お前のDFの位置から見る眼は俺も認める程だ。頼むよ。」
2人は肩を並べて走って行く。
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