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嘘を真実に②

それでもどうにか2人が納得してくれる言葉を探していた。すると後ろから独り言の様に上坂が呟く。

「そんなに不安なら自分で返信すりゃいいじゃん。」

「はぁ??」

適当に上坂の口から飛び出した言葉の意味がわからない。

他人の事だからそんなに適当な事を言えるのだ。

それでも人生は上坂の様にある程度、適当に生きた方が楽しいのかもしれない。

もし自分が本人であった場合、同じ言葉を言われた時にどんな気持ちになるのか考えていないのだろう。

しかしこの言葉を頭の中で転がしているとふと気付く。

「…そうか!!」

「いきなりどうしたんだよ?」

「わかった!わかったよ!」

「変な奴だな。まぁ、解決したのならそれでいいと思うけど。」

真一はとある作戦を思い付く。

『毒を食らわば皿まで。』

いけない方向へとどんどんと突き進んでいるのもわかっていたがもう引き返せない。

自分の為なのか、翔の為なのかわからないまま、今は前に進むしかないと考えていた。

その後の授業も殆ど頭に入らずに放課後にどうするかを考えていた。

そして授業が終わり、終礼を終えると真一は鞄に教科書などを雑に入れて、スッと立ち上がった。

「何だ、今日は早いんだな。」

上坂の言葉に右手で合図を送ると教室を後にした。

真一の1組の教室から下駄箱に行くまでに麗のいる3組の教室を横切る。麗も帰り支度をしていると早歩きで通り過ぎる真一を見かけた。

麗は真一に翔が学校を休んだ理由を聞きたくて、慌てて鞄を背負って真一を追いかけた。

下駄箱辺りで麗が、

「待ってよ、真ちゃん。一緒に帰ろう。」

と誘われたが、

「ごめん、今日は急ぎの用事があるんだ。」

「そうなんだ。あのね…今日、かけ…。」

麗が話している時に、

「神崎先輩。」

と麗の後ろから結奈が声を掛けた。

麗は振り返るとそこには結奈と静香がいた。

「何…かしら?」

「神崎先輩ですよね。」

「そうだけど…。」

「私は1年の持田っていいます。突然ですみませんが今日の放課後は空いていませんか?よければ武藤先輩の話が聞きたいのですが…。」

「…だったら真ちゃんも一緒の方がいいかも。」

麗は真一の方を見たが、

「ごめん、さっきも言ったけど俺は用事があるから。」

と言って真一は靴を履き替えて行ってしまった。


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