結奈と静香①
「はぁ...。」
「それで12回目。あと何回溜息を吐いたら気が済むのよ。一緒にいる私の気持ちも考えてよね。」
「わかってるんだけど...失恋ってこんな気持ちになるんだね。こうやって大人になっていくのかな...。」
結奈と静香は学校を出てファミレスに向かう途中で結奈の溜息が止まらずにいた。
「結局...あそこまでしても先輩は振り向く所か私の事なんて1ミリも見てなかったんだわ。」
「その結果がわかったなら十分でしょ。先輩の事はもう忘れた方がいいよ。あの世界であれだけ酷い事しておいても何も起こらなかった。それどころかあんなに先輩を追い詰めて、手を差し伸べても振り払われたんだからもう可能性はないよ。」
「それでも...そんなに簡単には忘れられないよ。新しい恋でも見つからない限りは暫くは引きずりそう...。世界中に男女が2人しかいなかったら、普通に考えたら絶対に結ばれると思ってた。あの世界に入れる様になってからずっとそう考えてたのに...。」
「確かに。世界があの世界『だけ』だったらね。残念だけど世界で言えばこっちが本当の世界なんだから出来たばかりの向こうの世界なんて嘘みたいな物だわ。それに一瞬だったけど恋人同士になれたんだからいいじゃない。すぐに別れたけど。」
結奈は怒りと悲しみで顔を赤くしたが次の瞬間に何かを閃めいたかの様に静香を見た。
「...静香。私...別れてない!別れてなんかない!付き合う事にオッケーはもらった後、別れ話なんてしてないよ!まだ先輩とあの世界で付き合ってるの!これからお互いの事をもっと知っていけばいいカップルになれると思うの。」
「あそこまで言われてそう思えるなんて病気なの?」
「付き合っていれば誰だって喧嘩するよ。それを乗り越えるから愛って大きくなっていくんじゃないの?」
「本当にそう思ってるならどれだけおめでたい人なの?先輩に付き纏うのはもうやめた方がいいから止めてるのに...。」
「私もそれはわかってるけど...。先輩をあんな風にしてしまった罪悪感もある様な...。」
2人はファミレスの前で立ち止まった。
「とりあえずこの話の続きはご飯を食べた後ね。今日は映画はやめてカラオケボックスに行こう。」
「...急に歌いたくなったの?」
静香の急な切り返しに結奈が聴くと、
「誰にも聞かれちゃいけない話をするから見たかった映画を我慢してカラオケボックスに行くの!それくらいわかってよ!」
「ごめんごめん。冗談だって静香が私の為にしてくれてるのよくわかってるから。」
「...ディッシュバーも追加ね。」
「そんなぁ、私のお小遣い...。」
2人はファミレスに入っていった。
ファミレスではメインディッシュの商品を1つ頼むと追加料金でバイキング形式の御飯や料理とドリンクバーが楽しめるというものであった。
「私、チーズハンバーグ300グラムとディッシュバーとドリンクバーね。」
静香はもう食べる物を決めていた様でメニューを開いて自分の食べたい商品があるのを確認するとすぐに言った。
「結構食べるんだね。やっぱりお肉をいっぱい食べると背も高くなってスタイルも良くなるのかな?」
結奈は静香の胸元を見ながら言うと静香は胸元を両手で隠した。
「何を言ってるの!?これは遺伝。別に好きでこんなスタイルになったんじゃないんだから。」
静香は背が低い結奈とは対称的に身長は165cm位あり、スタイルも出る所は出ており、引っ込める所は引き締まっていた。
「いいなぁ。私とは全然違うから...。私も静香みたいな姿だったらいい男の子が近寄ってくるのかな?」
「そんなのないよ。むしろ男の下心満載の気持ち悪い目線が飛んできて本当に嫌なんだから。プールの授業の時は休みたくてしょうがないの。」
「でもそれだけ男の子が静香の事見てくれてるんだからいい事なんじゃないの?」
「身体だけ見られても嬉しくないでしょ。心まで見てくれるなら話は別だけど。」
「私も静香と同じ位食べれたら大きくなるのかな?」
「横になら大きくなれるんじゃない?」
「う〜、静香の意地悪。でも失恋したんだからやけ食いしてやる。私も静香と同じのにする。店員さーん。」
結奈が手を挙げると店員が来て注文をした。
「結奈、ひとつ言っておくけど太ったら次の恋は遠退くと思うんだけど...。」
「今日だけは許してよ。傷心の時は美味しい物を食べて元気付けた方がいいんだから。」
店員が来て、
「お先にこちら、ディッシュバーのお皿とドリンクバーのコップになります。ディッシュバーの食べ残しが多いと追加料金が発生しますのでご注意下さい。」
と言って去っていった。
「先にディッシュバー取りに行こう。」
結奈がそう言うと静香は返事をしてディッシュバーがある所へ皿を持って行った。
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