重なる不安要素①
翔と萌音はその後、昨日の動画の話や他におすすめの漫才師がいないかなど会話は途切れる事は無かった。
学校に着くとジャージに着替える為に2人は別れ、それぞれの更衣室へと向かった。
翔は更衣室の扉を開き「おはようございます!」と大きな声で挨拶をすると、
「武藤君のエッチ。」
二階堂が上半身裸でシャツを胸元に当てた。
「キャ...キャプテン...。」
翔の顔が引きつると、
「冗談だ。それよりも身体の方は大丈夫か?」
「何とか...でもまだ本調子ではないのでお手柔らかにお願いします。」
「そうか。無理はしないようにな。体調が良くなかったらいつでも休んでくれ。」
「...すみません。」
「謝るなって。選手の体調管理もキャプテンの仕事だ。不調な時は誰にでもあるさ。」
着替え終わった二階堂は翔の肩をポンポンと叩くと行ってしまった。
翔もジャージに着替えると外に出ようとドアノブを捻り出て行った。
更衣室にいた他の部員がヒソヒソと話し始める。
「昨日から筒井とべったりだな。」
「付き合ってんじゃねーの?」
「昨日はずっと保健室で付き添って、今日は一緒に登校...これは怪しい。絶対に怪しい!」
「まぁ...さすが我が校のエース様は違うな。サッカー上手くなれば女も付いてくるってか。」
「いいよなぁ。今度の試合はスタメンで活躍するんだろうな。」
「悔しいけど今はあいつに頼らないと勝てないのも事実なんだよな...。」
「まぁ、グダグダ言ってても仕方ない。悔しかったら武藤よりも上手くなって見返すしかない。練習に行くぞ。」
3年の黒木がそう言うと部員達は部室を出て行った。
運動場に部員全員が集まると、
「よしまずは外周3周して身体を温めるぞ。」
マネージャーを含めた部員全員は二階堂を先頭に学校の外を走り始めた。
翔もそれに混じって走り始める。走っていると横を萌音が並ぶ。
「身体、大丈夫?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。無理しない様に頑張るから。」
「しんどかったらいつでも言ってね。保健室まで肩を貸すから。」
「ありがとう。」
2人は並びながら走っていった。
それを校舎の屋上から結奈と静香が見ていた。
「心配で来てみたけどちゃんと部活に来てるし、特に問題なさそうね。昨日はちゃんと戻れたのかしら。」
「そうみたいだけど...隣のあの女。いつまで先輩にくっつけば気が済むのよ。そこは私の場所なのに。」
結奈は屋上の格子を持つ手に力が入る。
「夢の世界では付き合ってるんでしょ。それで満足しなさいよ。」
「そうだけどまだ恋人らしい事を何もしてないよ。」
「付き合っていきなりそんな事するカップルなんてロクなもんじゃないわ。それよりも先輩の確認も出来た事だし映画でも行きましょ。観たい映画が今日が公開日なのよ。」
「もうちょっと。もうちょっとだけ先輩を監視しないと。いつもより先輩の走ってる速度が遅い気がするの。もしかしたら無理をしているのかも...。映画は午後にご飯を食べた後で行こう。だからお願い。」
「わかったわ。約束ね。」
結奈は静香の言葉を聞かずに翔を見続けていた。
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