依存①
翔と真一は翔の家の前まで来る事が出来た。
「ありがとう。今日は助かったよ。」
翔はそう言うと真一は自転車の前籠にあった鞄を渡した。
「無理するなよ。なんかあったらいつでも連絡してくれてもいいから。」
そう言うと真一は自転車に乗って自分の家へと帰って行った。
翔は家の扉を開けて家に入ると鞄をその場に置き、靴も脱がずに玄関の床のマットに座り込んでそのまま後ろに倒れた。
その音に翔の母親が飛んできた。
「どうしたの?大丈夫?」
「ちょっと疲れただけだから。」
「休むなら自分の部屋に行きなさい。こんな場所で寝たら風邪ひくわよ。」
「少し休んだら行くから。」
「どうしたの?何かあったの?」
「いや...少しだけクラブ休む事にしたんだ。」
「そう...あれだけ毎日サッカーの事しか考えなかったのに珍しいわね。喧嘩でもしたのかしら?」
「そんなんじゃないよ。ただ休みたくなっただけ。」
「変な子ね。早く自分の部屋に行きなさい。こんな事を真ちゃんや麗ちゃんも自分の家でするのかしら?」
そう言い残すと翔の母親は居間に戻っていった。
「麗ちゃん...か...。」
ぼんやりと玄関の天井を見ながら今日の事を考えていた。
『筒井、持田さん、キャプテン...。
誰もいなくなったら俺は何も縛られる事なく生きていけるのかな...。
誰も俺に期待しないで。
誰も俺に話しかけないで。
誰も俺に繋がりを求めないで。
...でも誰もいない世界って?
...麗...麗のいない世界なんて考えたくない。
何もない俺だけど俺に話しかけてくれるかい?
全てから逃げ出しても笑わないでくれるかい?
今まで通りに会えるのかな...?
歳を重ねる度にどんどん話す機会が少なくなってる。
一緒に登校はするけど俺は朝練があるから毎日は登校出来ない。
その時、真一と麗は一緒に登校してるのかな?
何を話してるのかな?
多分、真一と麗は違うクラスだけど真一は俺よりも麗と話してるはず...。
サッカーなんてしていなかったら毎日、麗と登校したり、学校が休みの日は一緒に遊んでたりしたのかな...?』
ぼんやりと天井を眺めながら考えていると急に視界に母親の顔が逆さに現れた。
「えっ!?」
翔は驚いた。母親が寝転んでいた翔を覗き込んでいた。
「早く部屋に行って休みなさいって言ったわよね。寝転んで天井見ながら考え事?青春なのね。」
「う、うるさいな。行くよ!行けばいいんだろ!」
翔は起き上がり、靴を脱ぐと自分の部屋へと向かっていった。
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