すれ違う心③
朝、目覚まし時計が鳴り響く。
翔は目覚まし時計に手を伸ばして止めると、頭痛と気怠さが襲う。
起きてクラブに行かないといけないのは自覚しているが身体が言う事を聞かず、二階堂にショートメールを打ち出した。
『すみませんが体調が良くないので朝練休ませて下さい。』
と送り、携帯電話を置くとまたすぐに眠り始めると今度は母親が部屋に入ってきた。
「朝練はどうしたの?」
「今日は体調が良くないから休む。」
「あら珍しいわね。学校は行ける?」
「行けたら行くよ。あと少しだけ寝かして欲しい。」
「じゃあもう少し寝てから決めなさい。」
母親が部屋から出て行くと翔はそのまま二度寝に入った。
『何もしたくないな...。』
眠っている間、何も考えずに熟睡する事ができた。次に目覚めた時時刻は9:30。授業はとっくに始まっており、遅刻は確実なものとなっていた。行こうか迷ったがクラブの事もあり、明日は土曜日なのでしんどくても行かないとと思いベッドから出た。リビングに向かうと家族は仕事の為、誰も居らず、テーブルの上には母親が作った弁当が置いてあった。
冷蔵庫から牛乳を取り出してパンを1枚頬張った後、学校に行く準備をした。
街中を歩いていても頭はぼんやりとしたままで学校に着いて教室の扉を開ける。結奈は学校の校門を通る翔の姿を見つけていた。
「武藤、遅刻か?」
数学の柱谷が授業を止めて翔に話し掛けてきた。
「すみません。起きたら頭痛くて...。」
「まぁ、いい。早く座れ。」
翔は席に着くといつも通りに授業を受けた。
4限、体育で翔は運動場に出ると、今日はサッカーをすると言う。同じチームになった他の生徒は翔と一緒という事で勝利を確信した人は多かった。
クラスを半分にしての試合が始まるとクラスメイトの1人が翔に話掛けてきた。
「今日は思いっきり前に出て点数でも取ってみたら?」
「点を取るだけがサッカーじゃない。調子良くないから後ろでゆっくりしておくさ。」
「そっか。とりあえず頑張ろうな。」
クラスメイトは前衛に行ってしまった。試合が始まると始めはどれだけ攻めても翔にボールを取られてしまう。翔は攻める事なく前にパスをだした。
試合は20分間の1本勝負。15分を過ぎたところでも0-0のまま硬直していた。翔のチームは攻める事が弱く、ボールを渡しても点数に結びつく様な事はなかった。
翔がパスカットを成功させると翔はボールを持ちながら前に走り出した。上手く抜いて行くと、
「武藤からボールを奪えって!」
と相手チームのクラスメイトが叫んだ。
そうすると相手のチームの殆どが翔に寄ってきたが翔は仲間がフリーになっているところにパスを送ると翔は前に全速力で走った。
「もう1回こっち!」
翔がボールを渡したクラスメイトに言うとクラスメイトはボールを翔の方へ蹴った。ボールは高く上がっていたが翔は頭でトラップすると前方に落ちるボールをそのままシュートに持っていった。
素人のキーパーでは上手く取る事も出来ず、そのまま点数へと繋がった。
チームメートからはさすがサッカー部のエースと持て囃された。そのまま試合は終わり翔のチームが勝利して授業は終わった。
体育準備室に着替えに向かおうとした瞬間に強烈な眩暈が翔を襲う。
翔はその場に崩れ落ちる様に倒れてしまった。
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