反発⑦
「あ...あぁ...。」
翔は膝を付いてその場に座り込んだ。
周りを何度見渡しても空き地の景色以外に何も無く、人の気配も無かった。
翔は見渡し疲れると大きな溜息を吐くと翔の後ろに空からスッと結奈が降りてきて背中の羽を消した。
「先輩、急にどうしたんですか?」
翔は立ち上がり、
「あの子、あの子はどこに行ったか見てない?」
「あの子って誰ですか?私は誰も見てないですし、先輩が何で走って行ったのかもわかりません。」
「そんな...確かにいたんだ。走って行く女の子が...。」
「周りをよく見てくださいよ。この世界には私と先輩しかいないんです。他に入り込める人なんていませんよ。」
「じゃあ俺が見た子は誰だったんだろう...。」
結奈はキョロキョロする翔を見ながら思う。
『今日はもう駄目かなぁ。先輩の心ここにあらずって感じ。なかなかうまくいかないな...。また時間をかけてゆっくり振り向いてもらおう...。とりあえず今日は去ってもらおう。』
結奈は翔に夢の世界から消えてもらう様に念じたが翔は消えなかった。何度も翔に消える様に念じたが翔は遠くを見たまま立ち尽くしていた。
『駄目...消えない。やっぱり静香の言った通りこの世界はわからない事がまだまだあるのね。先輩には悪いけどもう私はここにいても仕方ない。』
「先輩、私は帰りますので先輩も早めに現実の世界に戻ってください。現実の世界で寝ていた場所で眠れば現実の世界に戻れますので。」
「わかったよ。俺はもう少しあの子を探してみる。今日はありがとう。持田さんのおかげで元気出たよ。」
「そうですか。それではおやすみなさい。」
結奈はまた羽を出すと空を飛んで自分の家へと向かった。翔を一人で取り残して。
結奈が空を飛んでいると後ろから静香が近付いてきた。
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