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相続土地国庫帰属制度で土地を手放したい話 その2

 「相続土地国庫帰属制度のご案内」 https://www.moj.go.jp/content/001417231.pdf

 法務省が出している、これを理解しないことには始まらないので必死に読んでいます。

 恐る恐る開いてみると、なんと目次が親切で「さくっと知りたい方」「じっくり確認したい方」「申請書類を作成した方へ」の3つに分けてくれています。私も仕事柄「●●の手引き」「●●のご案内」を読んだり書いたりしますが、まあ皆さん読まないんですよね。読みたくないもんね…。この3つに分けたところに法務省の「読んでくれ!」が詰まっているとみました。
 3つ目の「申請書類を作成した方へ」は申請前のチェックリストだけでした。ここにたどり着くまで一体どんなことがあり、どんな嫌な経験をし、どんな費用が発生し、どんな母の抵抗があるんだろうか…、いったん閉じたくなりますが、何度も目を閉じて見なかったことにしてきた土地。もう一度開いてみました。さくっと編は5ページ分だけだから、これだけは見てみようねと自分を励まします。
 ところどころに「詳しくは法務省ホームページへ」と書いた二次元バーコードが記載されており、こまごま更新されてんのかもね…と想像をしてみます。でもこの二次元バーコード、なるべくなら読み取りたくない。これ以上読みたくない気持ちです。

 さくっと編のイメージフローで「却下」「不承認」の文字を見てどきっとします。そういうこともあるわけですよね…。書類を必死で作っても…ってことがあるんですよね…。
 受付してもらうと関係省庁に情報提供がされ、さらに隣接地所有者にあなたの隣の土地に帰属の申請がありましたよっていう通知をしてくれるんだそうです。と、いうように私は読みましたが違っていたらすみません(この後何度もこのフレーズが出てくると思います)
 自力で隣の人を調べてどうにかしないといけないのかと思っていましたが、そうではないようです。しかし境界が不明なときは申請前にはっきりさせる必要がありそのときはきっと隣接地にはなんか言うんでしょうなあ、勝手に杭なんか設置できないし…。そうなるとそこの登記簿を取得して住所を確認してお手紙でも書くのだろう。想像だけでもうぐったりします。お金を払って司法書士の先生に相談しよう、という最終手段が残されているのであまり悲観的にならないようにしようとまた自分を励まします。

 では勇気を出して「じっくり確認したい方」ページへ。
 ちょいちょい「コラム」が書いてあり、ミニ知識が得られます。私は所有者不明の土地が増えると持ち主を探すのが大変だとか、土地が荒れていくとか、大きな建物をたてるときに権利者を探すのがとても大変とか、そういうことは想像していましたがこのコラムに「復興事業が円滑に進まず民間取引が阻害されるなど…」と書いてあり、それに全く思い及ばずだったことに気づきました。
 激甚災害が頻発している中、なぜか幸運にもいまだ直接的被害にはあっていない自分。そう思うと「災害があったときに、あの土地のために復興が遅れないようにするためにも、何も被害経験がない我が家が手放しておかねばならぬ」という不思議な使命感がわいてきました。多分災害があってもあの場所は誰の邪魔にもなりそうにないけれど、必要なことなんだと思ったほうがやる気が出そうなので、無理やり自分の燃えカスのような使命感に点火します。

 大まかな流れは「1.法務局で事前相談をする」「2.申請書を作成する」「3.要件審査(書面)と実地調査(法務局の人が現地で審査)」「4.承認・負担金の納付」「5.国庫帰属完了」となっています。しかしだ、いろいろ読むと1と2の間にものごぉく時間と手間とお金がかかる、というのが分かってきていました。審査にはおおむね8か月かかるというし、気が遠くなります。

 こういうのを調べていると民間の会社で「不要な土地引き取ります。費用を払っていただければ~そしてそれは案外安くて~」みたいな広告がステルスマーケティングで入って来ます。国庫帰属より早いよ、というのは魅力ですがどんな契約書が作られるのかこちらは分からず、信用できるところを探さないとこれはなかなかに恐ろしいことだと思って用心しています。でもできるなら頼りたいけど、という気持ちも捨てきれません。

 その広告では「国に帰属するにも負担金がかかります」と書いてありました。負担金…そういえば、いくらなのか、我、知らぬ…!
 必死でページをめくりまして、負担金の算出方法のページにたどり着きました。原則20万円!へえっ20万円!うちの場合、固定資産税約20年分。高いか安いか微妙!広さに関わらず?と思ったら宅地や農地のうち条件によっては広さにより加算されることが書いてありました。あっそう…でも今回うちは山林だからこれは関係ないでしょう。と思ったら「山林の場合」っていう項目がない。なんで。なんでなのよぅ!(誰にも伝わらない、母の真似)

 コーヒーいれてからじっくり見てみました。申請土地が「宅地」「農用地」「森林」「その他(雑種地、原野等)」と分けられています。固定資産税の紙を見たら「台帳地目」が「山林」、「現状地目」が「雑種地」となっていました。地目…?何が違うん…?やだ、もう調べたくないです。ということでうちは「その他(雑種地)」ってとこに該当するということで、「20万円(面積にかかわらない)」ことが分かりました。これに申請のときに手数料14,000円の収入印紙代が加わります。
 その前に境界をはっきりさせるための費用とか、現地の状態を見に行く交通費とか、いろいろお金はかかるんだなと思うと頭痛。そうなると母は「毎年固定資産税さえ払っていればいいんだから…」と言い出しかねません。父、20万くらいは出せるくらい現金は残してくれているけれど、億万長者ではないので数十万以上の出費、母はちょっと躊躇してしまいます。後始末をしなかった父を本当に許せない気持ちが、費用の話になるといつもふつふつとわいてきます。お墓の下で私の怒りを想像して震えていてほしいです。お墓にはいないらしいけども。吹き渡っている風になっているなら気ままに吹いてないでなんとかせい、と思う限りの悪態をついてから正気に戻りました。

 費用よりも「申請ができる人」というのをまず確認しておかなくては。費用に気を取られて順番がおかしくなってしまった。姉とささっと確認したけれど、再度確認。
 ここでは「母」を「自身」として読み進みます。丁寧なフローチャートがあるのであみだくじよろしくたどっていきましょう。レッツゴー(棒読み)

申請が出来る人フローチャート
イメージキャラクターは「トウキツネ」さん
 

 「帰属を希望する土地は自身が相続や遺贈により取得した土地である」はい。父が亡くなったときの相続によるもの。セーフ。 
 「帰属を希望する土地は、単独所有の土地である」はい。母のみ。セーフ。あー分割協議書で母にまとめといてよかった!
 結果、申請権を有します!よかった。とにかくよかった。 
このささやかな喜びをエネルギーにして、次の「帰属ができない土地」を確認します。ここのボリュームがすごい。「ダメなこと」については詳細に書くというお役所のスタンスがしっかり出ています。

 「建物が存する土地」建物はない。セーフ。
 「担保権または使用及びなんちゃらの権利が設定されている土地」ないはず。だけど念のため登記簿で確認しよう。暫定セーフ。
 「通路その他他人による使用が予定される土地」今そこを「通路」にしている、墓地内の通路、境界地、水道用地やため池などになっている土地…多分全部該当しないのでこれもセーフ。
 「土壌汚染対策法なんちゃらに規定する特定有害物質に寄り汚染されている土地」聞いたことないが地質調査などしたことがない。野菜作っていたくらいだから大丈夫だと思いたいです。ゆえにセーフとします(私の中で)
 「境界が明らかでない土地その他の所有権の…争いがある土地」境界は…行ってみないとプレートか地面に埋まってる杭の頭があるかどうかは分からないけど隣の雑草がこっちにもきて嫌だって父が言ってたので、境界は分かっていたのでしょう、買ったときには。そして争いはない。今まで放っていたけどどこからもなにか文句が来たことはないので、境界のことは今後どうにかするとして、暫定セーフ。
 
 さらに「帰属の承認ができない土地」も書かれています。
 「崖」明らかに崖ではない、セーフ。
 「土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地」ウワー微妙。なんか捨てられてる可能性もあるし、雑木林に隣接してるから木々が出張ってきている可能性あり。
 それに…20年近く前、何を思って行ったのか知らないが、姉夫婦が見に行ったとき「木や草がすごくてとてもそばにいけなかった、それらしい場所に廃車が捨てられてて…」という恐ろしい話を聞いていました。ううむ、これは…見に行かないと分からないのでお金を払って片付けるとして、無理やり暫定セーフとします(私の中で)
 「隣接する土地の所有者その他の者との訴訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない以下の土地」ワアーもうなんか文字だけでもコワーイヤダーとしか言えない状態になってきました。
 民法上の通行が妨げられている土地、他の土地に囲まれて公道に通じない土地、池沼、河川、水路、海を通らなければ土地に出ることができない土地、崖があって土地と公道に著しい高低差がある土地。なにがなんだかわかんないけど!入ろうと思えば、そして木々が生い茂っていなければ誰でも入れるけど!!ってことでセーフとしたいです(私の中で)

 そのほか、災害の危機によりいろいろ被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地、土地に動物が生息していてそれが周辺に被害を生じさせる土地、適切な造林、間伐、保育が実施されておらず森林整備が必要な森林、帰属した後に国が金銭債務を負担する土地…だのもうこの辺は読んでもよく分かりませんけど、引き取った後に国がなんかしら迷惑をこうむると判断した土地はだめだよ!とまるっと理解して、これはもう申請後の調査に委ねるしかありません。
 次ページからフリー素材サイトいらすとやさんの絵が満載の優しい言葉でこれらの解説があるのでそれも読みまして、まあ、この辺は該当しないだろ!という結論に達しました(私の中で)
 
 このあとご案内は「申請方法」になります。この中に「弁護士、司法書士、行政書士は申請書の書類作成を代行することができます」の一文があり、最悪申請だけは先生に頼めばなんとか出せることがはっきり分かって、ちょっとだけ気持ちが落ち着きました。やはり、最後の手段は士業にあり。

 最初の方に戻って「帰属までの3ステップ」のステップ1を読み込みます。ステップ1は「法務局への相談」です。事前相談というもので、これをしないでいきなり申請書類を提出するのは一番やっちゃいけないことだと思われます。なんせステップ1として存在しているのだからして。
 土地の所在する法務局の本局に予約をして相談をしなさいと書いてあります。対面でも、資料を先に送って電話でやってもいいそうです。ZoomやLINE通話はないです。この予約は電話ではなくインターネットでやります。 
 ただ、インターネット環境がない人は法務局にお問い合わせくださいとあるので、インターネットがないから事前相談ができない、だから帰属申請もできないと悲観的にならないですみます。けっこう高齢者はこの論法で「だからできない」と言ってくるのですが、突破する方法はあるので皆でがんばろうね!いらない土地を相続したみんな!と、見えない仲間に声をかけてみました。これが届いたら幸いです。

 遠方の場合はお近くの法務局でいいということなので、都内にある法務局に行くことにしましたが、姉と一緒に行ける平日を探したら約1か月後。まだ予約がとれない日程でした。ということで予約が取れるまでの時間も活用すべく、事前相談に必要な「資料」を確認、準備します。自分に「ぼーっとしない!」と喝を入れますが、ドラクエでいえばもうHP1くらいになっています。求む、かいふくのじゅもん。

 登記事項証明書または登記簿謄本、法務局にある公図とか地図とかが必要な資料として挙げられています。まあ、そうですよね、そうですよ。でも私は思うのです。「登記事項証明書 どうやって」と検索するとでてくる法務局のホームページでは「管轄法務局の窓口で請求する」が一番に出てきます。法務局に相談に行くのにその前に法務局で請求して入手しろと…?え、行く先にあるんなら出しといて当日支払いにして、渡してくれてもいいのでは?私が法務局の偉い人になったら絶対そうする。だって間違った登記簿をもって来られたらお互い時間の無駄ではないですか。

 文句を言ってもしょうがない、インターネットでも請求できます。これは遺言書と相続放棄でやったから分かっています。固定資産税の通知書に地番も書いてあるから大丈夫。住所と地番は違う、これを分かっていればなんとかなるのよとまた自分を励まします。もうほんと、行ったり来たりの思考です。

 登記・供託オンライン申請システムっていうので請求して、手数料を口座振替(クレジットカードではない)すれば郵送してくれます。
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/whats/kantan/summary.html

 他にインターネットで閲覧ダウンロードするっていうのもあるようですが、会員の登録料とかなんちゃら書いてあったのでそっちはやめました。
 私が愛用する登記・供託オンライン申請システムは24時間ではなく平日午前8時30分から午後9時までです。インターネットなのに…と思いましたが、「何日何時までの受付分を何日にやる」っていう区切りを入れないときりがないんでしょう、と理解を示してみました。
 しかし平日フルタイムで働いている身にはなかなかつらい。しかも帰ってから家のお仕事が発生する身。結局月曜日残業になってしまい、すっとんで帰って来て夕食も食べずに申請作業をし、火曜日昼休みに「受け付けました。水曜日までに払ってね」というメールをもらい、しかし見たのは会社でしたので、帰宅してまた夕食も食べずにインターネットバンキングで納付し、恐らく納付が確認されたのが水曜日。そして普通郵便で金曜日に入手という段取りでした。普通郵便は送料かかりませんが、確か速達は別途送料かかったような…。納付期限も短いのでちょっと焦ります。

 以前ユーザー登録していても30日?だったかけっこう短い期間で利用がないと登録が削除されるので、毎回こんなことが起きる度に登録しています。やれやれです。こういう面倒の積み重ねで、父への恨みが増します。

 今回は「登記事項証明書」の「全部事項」と「地図証明書」とよくわかんないけど「図面証明書」の「土地所在地/地積測量図」を頼みました。とにかくぽちっとできるものは全部!な気持ちです。そうしたら地積測量図はその地番だけのはないので却下します、だけどこれこれこういうものならありますけどー?いるなら改めて申請してねーとヒント付のお知らせが来ました。案外親切だな…と思ったりしました。
 ヒントが「事件ID」っていって全く無知識の者には恐ろしい響きだったけど、一般的な事件の意味ではないよというのをネットで読み、じゃあこのIDで申請したらどうなのやろか、と改めてやったらそれはすんなり受け付けてもらえました。この後から頼んだものはこれを書いている時点では届くのを待っているのですが、正直、何が届くのか全く分からないです(笑)
 ただ分筆という、一つの土地をこまごま分けて売り出したうちの一つを父が買ったので、事件IDの中身をよくよく見ると隣接地ばかりで、はあ、なんかそういうところのはまとまってる図なのかな…という想像はできました。

 そんなわけで証明書の取得でまずは費用が発生。手数料は窓口と郵送で違っていて全部事項の証明書は500円で、図が450円だったような…。届いた郵送物に料金の明細もなく、メールにも書かれず、システムに入って申請履歴を見ると個別に料金が分かる仕組みです。そしてそれはまた平日21時までですので…、私は大抵深夜になってから「あれいくらだったっけ」って知ろうとして「あ、もう閉まってるんだっけね…」ってなっています。インターネット=24時間受付ではないということをよく覚えておかなければなりません。

 他、事前相談には可能な限りの物をもってこいとのことで、母から預かっている去年の固定資産税通知書を追加。相談に行くまでに最新版がくればそれを持って行こうということにします。
 土地の話ですので当たり前ですが「土地の現況・全体が分かる画像または写真」も事前相談に持ってきてねと書かれていました。行こうと思えば行けるところだけど、ジャングル化しているかもしれない、車が捨てられているかもしれないところを見に行くのは怖い。姉とGoogleEarthでガン見してみましたが、「多分このあたりかな」というところは「森」でした。車は見えず。

 開拓しないとたどり着けないかもしれない恐ろしさ。私はそれでも「現地写真は相談にはあったほうがいいと思う」と言ってみましたが、姉は「でもわざわざ見に行って開拓して写真撮って、それで申請もできないところですって言われたらその労力がもったいないしがっくりくるから」と写真は出さない方向です。
 ちょっとどうしようかな…役所には最初に熱意だけは見せておきたいんだよな…、でも行くにしろ場所がいまいちわかんないんだよね…と思いながらあれこれ見ていましたら「登記所備付地図データ」というものにたどり着きました。なんでも法務省登記所までいかないと出してもらえない地図データを公開しています、自分でダウンロードできますというものでした。地番を調べるのにも便利らしく、地番は今回分かっていますがそれでもなんか追加資料が欲しい一心で探し回りました、インターネットを。
 
 でもその公開データを使うには専用のソフトが必要で、素人にはとてもとても。しつこく探したらなんとまっぷるが!あのまっぷるガイドのまっぷるが!公開されている登記所備付地図をまっぷるの航空写真地図みたいなのと重ねてみることができるサービスをやっていました。
https://labs.mapple.com/mapplexml.html
 後から知りましたがこれを活用している人がかなりいらっしゃるようです。早く誰か教えてほしかったわ。

 ここで初めて、地図上で土地につけられた地番と形をはっきり確認することができました。今まで半信半疑だった父の買っちゃった土地、確かに存在していました。気になるのはまっぷるの写真で見るとGoogleEarthで見た通り、「森」にしか見えないことですが、道もちゃんと見えるのでなんとかしてこれで行くことはできそう。なんなら平日半休とって一人でも行ってくるか、の気持ちになりました。

 ご案内を手にしてここまで一週間。

 

ちょっとは役にたったかも、と思われましたら少し置いていっていただけるとありがたいです。