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爆走!韓国旅行 その2

 車内で電話がかかってきたのでデッキに行って出ると「オハヨー。こっちはもうついてて朝ご飯」というHちゃんの声。11時頃の出発にもかかわらず、免税店とビジネスラウンジを楽しむために集合がなんと7時半だったのです。あ、携帯電話は存在していました。折りたたみでパタパタやったり、やったら小さいのが流行ったり。

 まだレストランにいた二人と合流。ママ初対面。でもファックス友なので全然違和感がない。まあー本当に私ったらめちゃくちゃで勝手な人だからさ、ごめんね、Kちゃん、最初に謝っとくわ、なんていう挨拶を受けていざチェックイン。初めて「ビジネス」のお客様カウンターに行きます。詳細は忘れてしまいましたが丁寧な説明を受け、スーツケースを預け、いざ、手荷物検査場へ向かいます。

 最初の事件はここで起きました。

 「これ持って行ってね」
 分厚い封筒を渡されます。エッなにこれ。「なにか聞かれたら自分のお金ですって言うのよ。ソウルまで持っていってね」ちらり見るとドル札が詰まっています。もう何十年もたちましたので許してください。なんだろう、当時の韓国は外貨持ち込み制限でもあったんだろうか。なんだか分からないまま押し付けられ、ポシェットにぎゅうぎゅうとしまいます。Hちゃんも当然のように受け取り、ポシェットに詰め込んでいます。

 この旅行、ほんとに旅行なの?なんなの?運び屋?え、このためにもしかして私追加されたのか?お金持ちってコワイ!

 小心者ゆえ、震えながら検査場を通りました。ポシェットも検査の機械に吸い込まれ、そして無事に出てきて返されました。後からくるママは…と振り返るとものすごい恰好でブラウスをめくりあげて下着を見せています。超高級補正下着のホックが激しく金属探知機に反応してしまった様子。既に通過したHちゃんはけらけら笑っています。
 思わず「あの!その人一緒です!私たちと一緒です!手伝いに戻ってもいいですか!」と叫びました。すると一瞬その場の全員の動きが止まり、私とママを見比べ「あ、そのままでけっこうですよ」と言われ、ママは半脱ぎの状態で進んできました。よかった、と近づこうとすると、今度はバッグから出て来た透明な小瓶について係員に説明を求められています。

 これ、出発できるんかいな。

 ママはにこにこと小瓶をあけて一口飲んで見せました。そして無事通過してきました。「あれ、焼酎なんだよ」Hちゃんがぼそっと言います。「お酒がないとダメなの」アル中ー?!心臓悪いって言ってなかったっけー?!
 「水だってごまかせなかったけど許された」とママは嬉しそう。そして「あっお店があるね!タバコ買わないと!」と免税店へ向かっていきました。

 荷物が増えるので、私は出発前に成田であまり買い物をしたことがありませんでした。姉に持っていくお土産も免税店のものはなく、母から託されたマルタイラーメンとかなんかの佃煮とか…。
 Kちゃん、レスポのバッグが安いよ!買いなよ!と言われますが、持っている封筒が気になってこっちは買い物どころではありません。二人は自由自在に歩き回り、恐らくあちらの方々へのお土産と思われるタバコやお酒などを目いっぱい買っていました。ここで恐るべき大荷物になりました。

 それでもまだ1時間以上あったので、ラウンジへ向かいます。二人とも初めてだったのが意外でした。私ももちろん初めてです。航空券を見せて丁重に案内され、若干緊張がほどけます。おもてなしって大事。
 広いソファ、検査場の騒乱が聞こえない静かな環境…、スーツを着たビジネスマンの中に、女三人遊び旅行と分かる恰好で明らかに我々は目立っていました。
 あー疲れた、Kちゃん、飲み物見ておいでよと言われ、初めてのラウンジを探検しました。グランドスタッフが「コーヒーはこちらに、生ビールもございますし、ジュースはこちらの冷蔵庫に」と案内してくれました。冷蔵庫をあけるとリンゴ、オレンジ、ブドウ、牛乳の小さな缶が詰まっていました。ミニサイズの缶ビールもぎっしりと。

 見たこともない高級そうな絵柄のオレンジジュースを手に取ると氷をいれたグラスをスタッフが渡してくれました。欲張って高級あられの袋も持ってソファに戻ると、二人は買ったばかりのレスポのバッグを袋から取り出していました。
 「あれ、缶?」とママが言いました。はい、あの冷蔵庫にいろいろ入ってます、というと二人がダッと冷蔵庫へ向かいました。そんなに喉乾いてたのか…、持ってきてあげればよかったと思ったのもつかの間。

 事件が起きました。

 二人は買ったばかりのレスポの巨大バッグを持ち、冷蔵庫から缶を取り出してはバッグに入れていきました。バッグにはまだタグがついています。ありとあらゆるジュース、牛乳も。もちろん缶ビールも。ど、どどどどういうこと?!と眺めるしかできませんでした。
 令和の今ならご遠慮下さいと注意されるのでしょうが、平成のあの頃はあまりの勢いのせいか、皆呆然と眺めるだけでした。そのあとママは…、当時は喫煙者でしたので、ゆったりと煙草を吸っておりました。

 ぎっしりと重みを増したレスポのバッグと山盛りの買い物をカートに積み、優先搭乗へ。もちろん席には置けない量ですから、ゲート前でにこやかに取り上げられ…お預かりされ、やっと席についたのでした。

つづく

ちょっとは役にたったかも、と思われましたら少し置いていっていただけるとありがたいです。