源夢さんの置手紙

通りすがり、ふと道端の白壁に残っている落書きに目がとまる。
風雨に打たれた文字の所々が消えかかって、読み取れない言葉の端はしを繋いでみる。
うつむき加減の脳裏に、言葉の意味とは無関係の妙に懐かしい香りがこみ上げてくる。
壁から目を離して歩いてきた道の奥を眺めると、誰もいない昼下がりの空気がまどろんでいる。
再度、落書きに目を落とすと、
「さよなら・・・」とまではなんとか読み取れるが、その他にはかろうじて三つの点が残っているだけだった。


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