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愛とSIX

内容紹介
もし絶対に運命の人と出会えるとしたら? 

>「知り合いの知り合いの知り合い……」で、世界中の人は皆6人目までにつながってるって、知ってた?
「スモール・ワールド」とかっていうらしいの。

っていうことは……知り合いの知り合いの知り合いって辿って行ったら……私の「運命の人」ともつながっているはずよね?

絶対に浮気しない、私の「運命の人」って、世界のどこにいるのか分からないけど。
それも6人目までに!!
それなら、辿って行ってみよう、って感じよ!<

愛とSIX

DESTINY-3 愛のリスタート?

Ch9 愛の逆流

中村の官舎に突然、愛が現れた。奥から「誰?」との声がすると、慌てて中村は一度、中に戻り、「いや。いいこと考えた。ちょっと待ってて」と微笑むと、智子を手錠でベッドにつないだ。智子が微笑み返すと、中村は外に出る。
そして中村が愛にぶっきらぼうに「何だ? あれ、お別れメールで終わりだったんじゃないのか?」と訊く。と、愛はニコニコして黙っていた。

世間というものは分らない。この前まで世襲だと批判されていた二世議員が注目されるようになった。チヤホヤされて調子に乗った桑野は大島とともに、若い支援者なのか何なのか分らない女性たちと会合(実際には合コン)を持つことが増えた。
「こいつ(桑野)は確かにええ政治家や。けどオヤジと一緒で女性問題で失脚せぇへんか、心配や。この前も浮気しよって。もう、たいへんよ」
「あれは……本当に、ちょっと魔が差したんだよ」
「何が魔が差したや。他のモンも刺したんとちゃうか?」
と、大島は桑野の股間をはたくと、大笑いした。

「私って酷い女。略奪愛されちゃったなんて。なんだか後ろめたいわ……でも」と言いつつ、香織は榊原と激しく抱き合い、口づけを交わした。
こんなことなかったのに……今の香織は自信に満ち溢れている。
その、榊原の病院の診察室に突然、愛が現れ、お互いに気づいた3人は驚く。
ベルを鳴らしても反応がなく、入口が開いていたので、「勝手知ったる」で入って来たのだ。

その頃、桑野の事務所に、大島が渡米時代の友人=島野育也(34)を連れて来た。何年ぶりだろうか。懐かしい再会だ。特に仲の良かった大島にとっては。
若者の政治参加を推進する市民運動をしているという島野は、今の政治は投票率の低い若年層の発言力が弱まり、彼らのための政策が後回しにされ、損をしていること、そのためにさらに若い世代の政治離れが進む悪循環を指摘した。
そして、若年層の発言力が強くなるような施策をと熱く訴えた。
桑野は愛想よく受けとめたが、本心はそうではない。ジバン、カバン、カンバンを武器にする彼には高齢者こそが味方だ。島野が帰ると、「死ぬ前にいい思いさせてやって何が悪いんだよ。若者よ苦労せよ」と吐き捨る桑野をミスター臨機応変=大島は睨みつけた。

愛が榊原の病院から出て来ると、裕子に手を引かれてやって来た池内とばったり会う。
驚いた3人は互いの顔を見合わせる。

合コン会場らしい場所で、また若い支援者なのか何なのか分らない女性たちと酔っている桑野は陽気にはしゃいでいた。
が、なぜか大島ひとり、浮かない顔をしている。
「いや、スモール・ワールド・ネットワークってのも、こいつ(大島)が先で、浮気してさ。何? 魔が差した? 何が魔が差しただよ。他のモノも刺したんじゃねぇの?」と桑野が大島の股間をはたく。と、大島は桑野の頭を軽くたたき返し、グラスの水をかけた。

女子1部昇格をかけたソフトボールの試合のマウンドに美咲が立っていた。愛のミットを目掛けて投球すると、満塁のランナーは一斉にスタートした。
ボール。押し出しでランナーが1人返り、愛が苦い顔をするのを見て、監督は投手の交代を告げた。美咲はベンチに帰ると、ベンチにグラブを投げつけた。

更衣室で美咲は黙って愛の愚痴を聞かされている。
スモール・ワールド・ネットワークを途中からやり直そうと、さかのぼって行ったのだが、3人の男たちは誰一人として聞き入れてくれず、誰ももう一度「次の人」を紹介してくれなかったどころか、怒られたのだ。
確かに、いきなりお別れメールだけ送ってサヨナラというのは悪かったと思うが、もう少し優しくしてくれても良かったじゃないか。仮にも元カノだぞ、というのが愛の言い分だった。
3人の男たちには、その時に初めてスモール・ワールド・ネットワークを辿って行ったという事実を知らせたのだが、そのことも彼らの心証を害したらしい。
しかし、愛は素直に自分が悪かったとは思わなかった。そもそもが浮気した桑野が一番悪いのだ。
その桑野が「6人目」だった。そこから→5人目の中村→4人目の榊原→3人目の池内と、さかのぼったのはいいが、次の2人目がまた桑野になるのだ。
まさか、本当に桑野が「運命の人」なのか?
それで、どうしようかと、美咲に相談したところ、ただ一言「知らねぇよ」と言い捨てられ、帰って行ってしまったのだった。


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