愛とＳＩＸ

内容紹介
もし絶対に運命の人と出会えるとしたら？　

＞「知り合いの知り合いの知り合い……」で、世界中の人は皆６人目までにつながってるって、知ってた？
「スモール・ワールド」とかっていうらしいの。

っていうことは……知り合いの知り合いの知り合いって辿って行ったら……私の「運命の人」ともつながっているはずよね？

絶対に浮気しない、私の「運命の人」って、世界のどこにいるのか分からないけど。
それも６人目までに！！
それなら、辿って行ってみよう、って感じよ！＜

ＤＥＳＴＩＮＹ－２　「６次の隔たり」、それぞれ

Ｃｈ５　智子

「知り合いの知り合いの知り合い……」で、世界中の人は皆６人目までにつながっているだって？
知り合いのネットワークを手繰って行ったら、少なくとも６人目で「運命の人」と出会える、だって？
愛のやつ、面白いことを言う。
そう言えば、俺＝桑野哲也も、いとこの姉ちゃんから聞いたなぁ……姉ちゃん、が帰りの飛行機の中で知り合った友達、の友達、のお父さん、が誰だと思う？
ジョン・レノンだ！　あのビートルズのジョン・レノンだ！
凄い！　俺は４人目であの世ともつながっているのか？
ジョン・レノンとつながってるってことは当然、ポール・マッカートニーともつながっているし、そこからさらにマイケル・ジャクソンともつながっているてか？　面白い！
じゃ、愛から、今度は智子を経由して、このネットワークの先に俺の運命の人って、ひょっとして……スカーレット・ヨハンソンとか！？
まさか、６人目の「運命の人」もあの世にいるとか言わねぇよな？

愛は俺の大学時代の友人＝池内大輔を紹介したら気持ち良く去って行った。
スモール・ワールド・ネットワーク、６次の隔たり、か……。
てことは、もし……次にいい女につながらなかったら、そん時はこの智子が俺の「運命の人」ってことか。うん。なかなか良いアイデアだ。

近づいて来たのは智子の方だった。智子は愛の高校の後輩で、創立８０年祭の実行委員を一緒にやってから今までずっと仲が良かったらしい。それで女子飲みの時に、愛が俺のことをイケメンのカレだって、自慢したっていうんだから仕方がない。要は愛が油断したからこうなったんだ。
智子は俺を一度「見たい」と言ったんだそうだ。「会いたい」と言ったら愛は警戒したかも知れないけど、「見たい」と言ったあたりが智子の上手いところだ。
智子はとろそうに見えて実は計算高い。その智子を甘く見た愛は、俺達がよく行く店に智子を呼んで３人でメシを食った。
それから智子はその店の前で俺を待ち伏せしたんだ。偶然を装ってさ。
アメリカでＭＢＡ（経営学修士）を取って、オヤジの政策ブレーンもやって来た俺は人を見る眼が鋭い。その俺に言わせたら、今どき自分から学校のイベントの実行委員をやると言い出すような子は、何かあると見るね。

ゲームが始まったら、智子は俺が愛とよく行った店に誘った。その店を自分の匂いで塗り替えるかのように。そう、まるでマーキングするかのようにだ。
俺としたことが、そのことに気づくのが遅かった。マーキング女は束縛女だってことだ。

それはちょっと、頂けない。俺はＢ型なんだ。Ｂ型ってのは、最初アフリカに現れたＯ型の人類が進化する上で農耕民族になっていったＡ型と分かれて行って、狩猟民族になっていった血なんだそうだ。俺は一箇所に留まるような男じゃない。今の俺があるのはオヤジの残したジバン、カバン、カンバンのおかげだなんて言う奴がいるが、俺はこんな東京の下町の名士なんかでは納まらない。どこまでも外に飛び出して行くんだ。
まだ一年生議員だけど、いずれ俺は総理になり、そして初代アジア合衆国大統領になる！
智子は風水やら色々な占いにはまっていて、血液型のことも何か言っていたが、そのことは智子は何も知らない。何も分っちゃいない。要するに……俺は翼を持っているんだ！

音大出の智子はバーでピアノを弾いたり、子供に教えたりしていたが、それだけでは食えないので、他にサイドビジネスを手掛けていた。
俺の健康を気遣って、よくサプリメントを勧めたのだが、智子がそのサプリメントのマルチをやってることを知って驚いた。
智子は俺のことを別に商売に利用した訳じゃないって、泣いて訴えた。正直、その時は引いた。俺のキャリアに傷がつきかねないが、この時は彼女を受け入れてやることにした。何となくその方が良いような気がしたんだ。器の大きいところを見せようとしたのかな？　いや、ＭＢＡの鋭い勘とでも言っておこう。
それに……俺のスモール・ワールド・ネットワークもある意味、マルチかも知れない。

しかし、智子と俺の兄貴（異父兄弟）＝中村健一がそのマルチのセミナーでよく会う仲だとは知らなかった。
兄貴に占い好きの智子が「近々、彼女が出来るわよ。でもあまり良い縁じゃないわね。悪友とのつながりからそうなるわ」と言っていたなんて。

マルチについて何も言わなかったのが良かったのか、計算高いマーキング・束縛女も隙を見せた。２人を公認の仲にしようとして、互いの友達を呼んでメシを食ったのだ。よし！　この束縛女から次を手繰り寄せるチャンス到来だ。
しかし……そんなことだと思った……女は絶対に自分より可愛い子を紹介しない！

智子が紹介した、その思いっきり太った友達＝上田香織（２６）とは前にバイトしていた会社で知り合ったのだという。そのバイト先というのが葬儀会社で、香織はそこの社長の一人娘だ。……待てよ。こういう体質の古い業界、票になるかも知れん。
よく考えたら別にこの子に乗り換えなければならない訳じゃない。チェンジしたければしても構わないんだ。さあ、どうする？