見出し画像

愛とSIX

内容紹介
もし絶対に運命の人と出会えるとしたら? 

>「知り合いの知り合いの知り合い……」で、世界中の人は皆6人目までにつながってるって、知ってた?
「スモール・ワールド」とかっていうらしいの。

っていうことは……知り合いの知り合いの知り合いって辿って行ったら……私の「運命の人」ともつながっているはずよね?

絶対に浮気しない、私の「運命の人」って、世界のどこにいるのか分からないけど。
それも6人目までに!!
それなら、辿って行ってみよう、って感じよ!<

愛とSIX

DESTINY-2 「6次の隔たり」、それぞれ

Ch7 裕子

良く考えたら、スモール・ワールド・ネットワークを辿り始めてから、出会う女、出会う女、だんだんとよくなって行く。先が楽しみだ。
……て、別に無理に6人目まで行かなければならない訳じゃないんだ。勘違いするな。
俺は上手く香織から切り抜けることに成功した。別に悪い気はしないね。デブ専の大島と結ばせてやったんだから。むしろ感謝して欲しいくらいだ。

裕子は見るからに真面目な子だ。普通ならそんな乗換えなんて許す訳がない。
しかし、そこはさすがミスター臨機応変。大島は強引に最初から自分が香織のカレだと名乗って、逆に俺を友人として連れて来たと言い出した。香織も最初は何かのアソビだと思って、合わせているうちにその気になったらしい。俺が黙っていると本当にそういうことになって、あっという間に大島は香織をお持ち帰りしてしまった。

それより、こっちだ。上品で固そうな裕子とは「お友達から」ということで時々会うことになった。彼女は国際線のCAで、国外の有名人にも知り合いがいる。こいつぁ、本当にスカーレット・ヨハンソンとつながるかも知れねぇ。

世界中を飛び回る裕子は反対に日本文化を愛した。好んで俺を誘ったのが……寄席だった。
こちとら浅草橋の生れで……落語なんか聴きに行ったことがなかった。裕子はなかでも白鳥たらいうのがいる新作派の落語会のスケジュールを調べては聴きに行き、帰りは蕎麦をすすった。

いい子だ……。彼女こそが俺の「運命の人」か……うーん。6人目が気になる。
これで充分、跳マンはあるのに、わざわざ手を崩すリスクを冒してまで倍マンを狙うべきどうか……俺の翼がヒクヒクしてやがる。

裕子の実家は吉祥寺で小さな居酒屋を営んでいて、CAの仕事が休みの日は彼女も手伝っていた。
そこに俺の大学時代の友人で、イシカリビール営業マンの池内が通っているとは知らなかった。
職業病というより、アルコール依存症同然の池内が病院の診察券をシャッフルして見せると、裕子は笑いながらも労わり、癒してあげていたなんて。

相変わらず身持ち硬い裕子だったが、俺も真面目につき合おうと思った。
時間をかけて、お互いを分かり合おうと、色々な所に2人で出掛けた……のだが、その風景は以前にも見た覚えがある。
それはデジャブなんかじゃなく……愛と行った場所じゃないか!?
いや、裕子とだけじゃない。あれからスモール・ワールド・ネットワークでつき合った、智子はともかくとして、香織ともそうだった。
しかし、そのことに先に気づいたのは、裕子の方だったと知って、驚いた。

裕子が、まさか……愛とつながっていたとは知らなかった!
このことは俺は知らなかったのだが……愛と裕子は小学校の時からソフトボールのライバルで、一度だけ選抜チームでバッテリーを組んで、関東大会で優勝したのだそうだ。平成のKKコンビなどと言われ、愛はいまだにその写真を部屋に飾っている。
ある日、裕子の携帯に愛から電話がかかってきた。こんなことは珍しく、そんな時はたいてい大きな悩みを抱えている時らしい。
愛はスモール・ワールド・ネットワークのこと、色々な男とつき合ったことを話した。デートに元カレとの思い出の場所を通ると、つい、その人を思い出すのだと言う。
そのデートコースを聞いて、裕子はハッとし、名前を聞き出して、その元カレがこの俺だと気づいたのだ。

そんなことは何も知らず、ある時、裕子の方から友達に会わせたいと言われて、少し迷った。俺は遂に6人目に会うのか? 裕子には何の不満もなかったのだが……。

期待と不安を胸に待ち合わせの店を外から覗いた…・・・!?
裕子が愛と2人で待っているではないか!
俺は思わず、すっぽかして逃げ出してしまった……。この江戸っ子でMBAの俺が……。

それから一週間ほどして、落ち着いた頃、今度は珍しく、異父兄弟の兄=中村から連絡が入った。紹介したい人がいると言うから行ってみたら、その人というのが愛だった!
今度は逃げられなかった。

いったい、どうなっている? 一度ならず、二度まで?
……まさか、6人目がまた愛だなんて!?
「振り出しに戻る」てか?
それとも、愛が俺の「運命の人」? 運命ってこんなのか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?