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デスティニーズ・チャイルドによろしく

内容紹介
『デスティニーズ・チャイルドによろしく』【シナリオ形式】(400字×10枚)

もし複雑な関係になったら?

そんなストーリーをテラってみました!

デスティニーズ・チャイルドによろしく_page-0001

『デスティニーズ・チャイルドによろしく』【シナリオ形式】(400字×10枚)

『デスティニーズ・チャイルドによろしく』

○ 洋風居酒屋(夜)
   居酒屋の喧騒が聞こえる。
   村沢良樹(二九)と西村敦也(二九)
   が勢いよく飲み食いしている。その音。
村沢「熱ちちち……全く。俺の運の悪いのは
 お前との出会いに始まったんだよ」
西村「君、愛のキューピットに何て事を」
村沢「本当かよ。また、お前の使い古し、押
 し付けんじゃねぇだろうな。覚えてるか?
 お前、俺に押し付けたボロ車」
西村「3日乗ったじゃん」
村沢「3日で廃車。費用、俺もち」
西村「後になれば皆、いい思い出だね」
村沢「何言ってんだよ」
   石塚志保(二九)が入って来る。
志保「ごめーん。遅れちゃって」
村沢「あれ?志保……ちゃん」
志保「久しぶり」
   志保が座る、椅子の音。
村沢「え?何?……今日、ダブルデート?」
西村「いや……志保、なんだよ。村沢」
村沢「え?」
西村「今日、お前に紹介してやろうっての」
村沢「え?……彼女だろ?……お前の」
志保「別れたの」
村沢「えぇ!?」
西村「……俺の使い古し、押し付けるんじゃ
 ねぇよ」
村沢「あぁ?」
西村「て言うか……お前の元彼女。……前に
 お前が紹介してくれた、ての?」
村沢「おい西村!ふざけんなよ!」
   椅子が倒れる音。食器類が当る音。
西村「いや……村沢……」
村沢「どんな気持ちで志保、お前に譲ったと
 思ってんだよ!!」
志保「ヨッちゃん、ごめんなさい!私……私
 が頼んだのよ、アッちゃんに!」
村沢「えぇ!?」
志保「手……手、放して」
西村「……あ、もしもし?すみませーん。こ
 こ電波悪くて。一寸待って下さい」
   西村の足音(小走り)。店外に出る。
志保「嘘。電話なんか、来てないくせに」
村沢「あいつ、バイブにしてるんだよ」
志保「着信のランプ、点いてなかった」
村沢「あ……」
志保「あんな人なんだから」
村沢「いい仕事するんだけどな……昇進、断
 ったんだぜ。責任が持てないからって」
   椅子を立てる音
志保「本当は私たち……とっくに冷めちゃっ
 てたの」
村沢「……お前が言ったんだぞ。西村と付き
 合いたいって」
志保「うん……」
村沢「自分の彼女、自分の親友に譲ったんだ
 ぞ。めでたい奴だよな、俺って……」
   間。
志保「……この前、亡くなったじゃない?…
 …私のお母さん」
村沢「えぇ?……あぁ」
志保「仲、良かったじゃない?ヨッちゃんと。
 お母さん……芋煮会にはまっちゃってさ」
村沢「どうせ俺はイモ兄ちゃんだよ」
志保「私だって田舎者よ」
村沢「元ジュリアン東京の女王様が?」
志保「……お母さんに似たのよ」
   間。
志保「……私って、いつもああいう男に惹か
 れていくんだよね。アッちゃんみたいな」
村沢「……みたいだな」
志保「前まではお母さん、喜んでくれたの。
 ああいう男と付き合ってると。逆にヨッち
 ゃんみたいな人、別れさせようとしたの」
村沢「どういう事?」
志保「よく考えたら……アッちゃん、よく似
 てるのよね。お父さんと」
村沢「お父さんと?離婚した?」
志保「うん」
村沢「父親と似た男、望むんだ……やっぱり、
 母親って」
志保「女を幸せに出来ない男なのにね」
村沢「え?」
志保「本当は教えてくれてたのね。私を大切
 にしてくれる人……ヨッちゃんだよって」
   間。
村沢「……田舎から出て来て……あいつとだ
 けはいつも一緒で……」
志保「うん……」
村沢「あのバカが言い出したんだ。オリンピ
 ックの近くに滑りに行こうって」
志保「私も。いつも新潟なのに。滅多にない
 し。日本でオリンピックなんて」
村沢「だから……滅多にない事が起きそうな
 気がしてたんだ。あの時は」
志保「本当……起きちゃったよね」
   間。
村沢「あのバカ……親友なんだよ」
西村「……悪い」
   西村が戻って来て、座る、椅子の音。
西村「そういう訳で」
村沢「そういう訳?」
西村「いや……聞いただろ?志保?」
志保「うう!(吐き気をもよおす)ごめん!
 一寸トイレ」
   椅子を引く音。志保の足音(小走り)。
村沢「おい……」
西村「え?」
村沢「……お前、何か身に覚え、ある?」
西村「……食中りじゃねぇの?」
村沢「一口も食ってねぇよ」
西村「……で、決めた?志保との事」
村沢「今の見て何も思わねぇのかよ……ひょ
 っとして志保、妊娠してんじゃねぇの?」
西村「すげぇ。パパになったんだ……村沢」
村沢「バカ!冗談じゃねぇ!」
西村「お前知ってるだろ?俺、貯金ないの」
村沢「お前、いい加減、自分に責任持てよ」
西村「でもいい仕事する、ての?」
村沢「何の仕事だよ」
志保「ごめんなさい」
   志保が戻って来て、座る、椅子の音。
西村「志保……」
村沢「お前……まさか」
志保「そう。あなたの子よ……ヨッちゃん」
村沢「えぇ!?」
志保「……あの時の……愛の、結晶が……今、
 ようやく……」
村沢「一寸待て!いつの話してんだよ!」
西村「そうか……俺たち、冷めてたからよ。
 冷凍保存されてたっての?なぁ、志保?」
村沢「何言ってんだ!マンモスのDNAじゃ
 あるまいし!」
西村「そう、DNA……DNAに書き込まれ
 た……運命なんだよ。村沢の」
村沢「お前のDNAだろ!」
志保「……ほら……DNAって、変るんだよ
 ……あんじゃん。遺伝子組み替えって。て
 ことは……運命も変るんだよ」
西村「そうか。DNAが変った……それで村
 沢の子……そこまで冷凍技術は進んだか」
村沢「バカ!子供の運命の事も考えろよ!」
西村「子供?子供も……自らその運命を選ん
 だんだ。俺が神様ならそう言うね」
村沢「お前は悪魔だからそう言ってんだ!」
西村「悪魔は彼女紹介したりしねぇよ。ボク、
 愛のキューピット」
村沢「キューピット?悪魔に魂、売ったな」
志保「……運命の子……なのよ。きっと」
西村「運命の子?こりゃ、『大地の子』を越
 えるよ。いやぁ、ドラマだね」
村沢「冗談言ってる場合じゃねぇよ!」
西村「運命の子……デスティニーズ・チャイ
 ルドだよ。お前、好きじゃん」
村沢「おい!いい加減にしろ!」
西村「うるせぇ!うるせぇ!(怒鳴る)」
村沢「あん?」
西村「落ち着けぇー!!(怒鳴る)」
   沈黙。
西村「志保、いつ……いつからなんだ?」
志保「いつって……まだ……」
西村「まだ分からない……まだ分からないん
 だ。そ、そうなんだろ?」
志保「え?ええ……そりゃ、まぁ……」
西村「そうなんだ……まだ妊娠したって決ま
 った訳じゃないんだ。まず、調べなきゃ」
村沢「そ、そうだな」
西村「だろ?ほら……想像妊娠とかって、事
 も、あんじゃねぇの?」
村沢「想像妊娠って?」
   志保がすすり泣く。
志保「私って……お母さんと同じね」
村沢「……志保」
志保「この子も女の子かしら」
西村「いや、だから、まだ妊娠したって……
 決まった訳じゃ……」
志保「私もそうだったの」
村沢「え?」
志保「お母さん……出来ちゃったからって、
 頼りない男、頼りにして……失敗して」
村沢「おい、志保。落ち着けよ」
志保「こんな事、グルグル繰り返してんじゃ
 ん。変らなきゃ……私がここで変えなきゃ、
 だよね」
西村「え?変るって?」
志保「そう。決めたわ。変える。こんな運命
 はここで断ち切る!」
西村「ど……どういう事だ?」
志保「私、一人で育てる!頼りない父親なん
 かいらない!」
村沢「落ち着けって、おい」
志保「もう、こんな運命の子にはさせない。
 私が立派に育ててみせる!」
西村「志保……お前って凄い責任感だな」
志保「母は強し、よ!」
西村「すげぇ……村沢、志保の事、俺に譲っ
 てくんねぇ?」
        ―終わり―

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