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愛とSIX

内容紹介
もし絶対に運命の人と出会えるとしたら? 

>「知り合いの知り合いの知り合い……」で、世界中の人は皆6人目までにつながってるって、知ってた?
「スモール・ワールド」とかっていうらしいの。

っていうことは……知り合いの知り合いの知り合いって辿って行ったら……私の「運命の人」ともつながっているはずよね?

絶対に浮気しない、私の「運命の人」って、世界のどこにいるのか分からないけど。
それも6人目までに!!
それなら、辿って行ってみよう、って感じよ!<

愛とSIX

DESTINY-4 そして、「運命の人」

Ch11 ともに歩んで欲しい人は

寄席の会場。そこでは池内と裕子が大笑いしていた。

街角。そこでは智子と中村がピアノ占いのパフォーマンスを見せていた。

総合病院の建設予定地。そこでは榊原と香織が大の字になって寝転がっていた。

そんな頃、「世代別選挙区制」導入を目指して離党し、二世議員たちから非難中傷を浴びていた桑野がテレビの政治関連番組に出演し、その制度について説明していた。

世代別選挙区制とは、従来の地域ごとに分けていた選挙区を、有権者の年齢、世代ごとに分けたものである。
例えば、「22歳選挙区」や「36歳選挙区」や「68~69歳選挙区」のように、それぞれ、人口比に合せて定員を割り振る選挙区制度である。
この選挙制度は今まで問題となっていたことを同時にいくつも解決できる妙案であると言っていい。
まず、各世代選挙区の当選議席数を全世代有権者数との人口比からその都度、容易に変更、決定し易く、「一票の格差」をなくすことが可能になる。
また、各世代の意見が反映されることから、世代間の不公平感を是正することが出来、若い世代の関心が高まり、投票率の向上が見込まれる。
さらに、地域と切り離されることから、これまでのような政財界の癒着や利権に関わる汚職等の問題を解決することが期待できる。
しかし、これまでの地域とのつながりから、「ジバン・カバン・カンバン」を武器として来た世襲・二世議員にとっては、全く旨みがなくなってしまうのだ。

この提案をして、桑野が得することは何もないと言っていい。彼も二世議員だったからだ。
それでも、若い世代の発言力を強化する政策を実現したいと訴えた。なぜか……。
私事ではあるが、と一言添えてその理由を述べた。

島野が死んだのだ。桑野、大島とともに渡米時代を過ごした後、「日本には市民革命の経験がなく、民主主義を勝ち取ったという意識がない。与えられたものだから粗末にするのだ。だから自ら勝ち取ったという感動をインストールしたい」と市民運動に没頭していた。
その島野が不治の病に侵されていたことと運動の行き詰まりから、衝動的に自殺したのだろうというのが警察の見解だった。

「スモール・ワールドといって、世界中の人は全て6次の隔たりでつながっているらしい。この先進国で自殺した彼や彼女も私やあなたと6人目以内でつながっている。人の生命は何か眼に見えない根底でつながっているのだ。だからこれは他人事ではない」

「かのケネディー大統領はこう、民衆に呼びかけた。

”われわれの問題は、人間が生んだものである。それゆえ、人間はそれを解決することができる。そして人間は自分が望むだけ大きくなれる。人間の運命に関するどんな問題も、人間の力の範囲外のものではない”
(『ケネディ名言集』細野軍治 編/講談社 昭和39年5月20日 第1刷発行・昭和40年9月30日 第8刷発行)

と。だから若い皆さんも私とともに、望んで欲しい。そしてともに歩んで欲しい」

「最後にその親友が、島野くんがよく暗唱していたホイットマンの詩を引用したい――」

ちょうどこの番組を観ていた愛は強い衝撃を受けた。

このホイットマンの詩は幾度となく、桑野に聞かされ、元気づけられた詩であった。

愛は美咲の言葉を、桑野の言葉を、これまでのスモール・ワールド・ネットワークのことを思い起こした。

答えが出ない愛……携帯を取り出し、電話する……。

喫茶店でその愛を微笑みで迎えてくれたのは……裕子だった。

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