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仲本直輝の漫画家もがき紀行その15(8/25)

この紀行文は、漫画活動継続の危機を迎えたしあわせジョンの作者仲本直輝のもがき旅の記録です。

■20240825

5:00起き。昨日は夜中に大雨が降っていて何度か目が覚めたが、一応は寝た。

連日旅行鞄を持って歩いているからか、久々に全身筋肉痛になった。鏡を見ると、心なしか体が少しガッシリしてきたようにも見えた。良いことだ。やはり、漫画ばかり描いているのでは心にも体にも良くない。小さい頃から、体が弱いほうで外遊びをしてこなかっただけで、ほんとうは私は体を使うことが好きなのかもしれない。1日中描き続けるホンモノの漫画家よりも、やっぱり他の仕事もこなすまがい物の方が性分に合っていると感じた。

noteに紀行文を載せていると、なぜかたまに通販が売れるので、少し気が楽になる(ありがとうございます)。

ぼちぼち台風が来るというので、食品や日用品を買い出し。ラジオ文化放送で、最近亡くなった高石ともやに触れ、「受験生ブルース」を少し流していた。受験生ではないが、世の中、やけのやんぱち石も投げたくなるようなことが多い。また、ブッダが宮殿を出て生老病死に触れる基本の話をしていた。「あらゆる娯楽も一時のごまかしにすぎない」…という。そんな中でも私ができることは何なのか。このラジオのおかげで、高森顕徹という人を今知る。

午前は体を休め、引き続き新たなスタンプの製作。3月の旅で、どこでも執筆できる能力を得たことが、このスタンプ製作にも役立っているわけで、感慨深い。今回は持ってこなかったけど、ここにパソコンとスキャナーを足せば、現地でスタンプの入稿や、漫画の発表だってできるのだ。

この東京の旅には、友人の助けを借りて書店への売り込みをしたいというのが目的のひとつとしてあるが、まだ予定の日は遠い。できることをやらねば…。

昼は東京で2回目に来店する、鷹の台のジュノン。前回来たときはおやこ丼を食べたが、今回は基本のカツライス500円を注文。サラダにトンカツ、少しごま塩がかかった白飯、そして味噌汁というものである。武蔵美が近くにある学生向きのガッツリ系で、油まみれの店内が歴史を物語っている。何年もひたすら店を営業する店主、その人生はどんな気持ちなのだろうか。老舗に来るといつも考えてしまう。流れ続けるAMラジオは、その声もCMやジングルもほとんど昔のままで落ち着く。やっぱり私はAMラジオが好きだ。テレビやネットが失った温かさがあるから。


店を出て、鷹の台の駅前を歩くと、蝉の鳴き声がいっそう懐かしい夏の風情をかき立てていた。「米は生協にあるだよ」と、世間話するおばあさんの声がした。令和米騒動の最中である。コープのスーパーで無洗米など、台風の備えも兼ねて食材を買い、猛暑の中歩いて帰る。

帰ってからぼやっと、少し落ち込む考えごとをしたが、その流れで、自分は悩むのが好きで、悩むことが嗜好品みたいなものだな、とか、楽しみとは「自主的な苦しみ」ではないか、とか考えて横になっていたら、気づいたら少し寝ていた。

寝て起きてから、人の「性格」について思いを馳せた。

性格って何なのだろう?「こういう性格の人」なんてこの世にいるのか?実は無意識に他人をキャラ付けしてるだけかもしれない。私たちは自分を演出して自分を見失っているし、他人を自分の色眼鏡で見てキャラ付けしている。文字を見て他人をこういう人だと決めつけることはもちろん、ましてや会っても、他人のことなどわからないのではないか…。

と、いったぐあいのこと。

ほんとに、悩むのが好きだな。何はなくとも一人で時間を潰せてしまう。東京まで来て何をやっているのか、と苦笑しつつも、少しそんな自分が好きになれたのは、単に少し寝て疲れが取れただけのことかもしれない。本当に人間の思考は、体調に左右されるものだ。

細かいことを悩む時も、悩まない時も、どちらもあっていいじゃないか。悩まない人間になろうとしたって無理なのだから、悩む自分を肯定できたほうが、「悩んでしまう」という悩みがひとつ減っていいというものだ…。

晩は東郷清丸さんに連絡して、知っている書店を教えてもらった。清丸さんは、彼のZINEを取り扱っている店はもちろん、気になる店も含めて、詳しく各地の書店を教えてくれた。私は書店に疎いので、非常に有益な情報を得て、まるで冒険のマップが広がった気持ちになった。一つ一つできる限り自分の足で回って、なるべく実際に店主に会ってみたい、と思った。やっぱりそれが一番、大変だけど、しっくり来る気がする。メールは楽だけど、伝わらないことや分からないことが多く逆に不便だったりする。自分や自分の作品と合う店やその人と巡り会うこと、これは今後の長期的な旅の目的・軸になりそうだ。

買い物程度で1日あまり動かなかったが、体が少し休まり、頭がよく動いた日であった。





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