中里斉展|Painting Outside Part I MEM
MEM(東京、恵比寿)では中里斉の仕事を作品や資料とともに振り返る展示が開催されています。2022年10月16日(日)まで。
第1室 展示風景
ペインティング作品を中心に構成された空間で、作品の他、関連資料も多数展示されており、原美術館で行われた個展の図録に掲載されているインスタレーションビューでは本展展示作品を確認することができます。
横長の《El Caso en Nueva Segovia》と正方形の《One Two Three》は組作品で、前者の構造を後者で解説するような構成になっています。
第2室 展示風景
版画を中心に展示した空間。こちらにも資料が多数展示されています。
会場では富井玲子さんの中里に関する論考が配布されています(WEBからダウンロード可能)。
富井玲子 「Painting Outside: 中里斉の〈ポスト絵画の絵画〉を版画から考える」 2022年(PDF)
今回に続くpart2は来年3月に開催されるそうです。両方あわせて70~90年代における中里の表現の変化を追うような展示構成となり、次回までに複数の論考とインスタレーションビューも入れた本をリリースするとのことです。
中里の来歴を振り返ると東京画廊などで展示を何度も行うなど日本での発表も多く、日本各地の美術館へ収蔵されているものの、アメリカを主な活動の場とし日本の主要な美術運動やコレクティブに参加していなかったことが美術史上の記述しにくさにつながり、結局どのように表に出せばいいのかわからない作家になってしまったのではないでしょうか。その結果あまり目にしない作家となってしまったのかもしれません。
しかし当時世界的な潮流であったミニマリズムやコンセプチュアルアートなど同時代性をもった表現や思考をしていたことは作品を見ればわかるので美術史の外にいたわけではないでしょうし、またアメリカに渡る日本人作家の手助けをするなど多摩美術大学を軸に多様な人間関係を持った人のようでその点から歴史を掘り起こすと発見がありそうでした。
遺族と協力しながら作品と資料を集め作家を振り返る展示を行い、そして本を出版するというのは地道なアーカイブ作業であり、再評価のための布石でしょう。本展は美術作品が商品として消費されていく現状と異なるギャラリーの優れた仕事でもある展示だと思います。
見出し画像 画像提供:MEM
作家プロフィール
中里 斉(なかざと ひとし)
1936年、町田市生まれ。多摩美術大学油画科を卒業後、北海タイムス社に美術記者として入社。1962年よりウィスコンシン大学大学院、ペンシルベニア大学美術大学院に学ぶ。1968年から3年間多摩美術大学で専任講師を務める。1971年、アメリカに戻ってからは、母校のペンシルベニア大学で教鞭を取る。2010年、町田市立国際版画美術館での個展開催中ニューヨークにて急逝。
パブリックコレクションとして、京都国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、大原美術館、ニューヨーク近代美術館、ブルックリン美術館等多数。
概要
会期:2022年9月17日(土)—10月16日(日)
時間:12:00 – 19:00
会場:MEM
定休:月曜日 (月曜日が祝休日の場合は開廊し、翌平日休廊)
WEB
https://mem-inc.jp/2022/09/03/nakazato2022_jp/
大阪のアートコートギャラリーでも同時開催中です。こちらは日本に戻っていた時期に焦点をあてた展示となっています。
中里斉:1968–1971 東京
会場:9月24日(土)-10月22日(日)
会場・主催:アートコートギャラリー
https://www.artcourtgallery.com/exhibitions/15061/
レビューとレポート