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『荒野の避雷針』5話(最終話)

【五】

 

 ありがとう、楽しかったわと、お約束の台詞でヒロヤと別れた。
 いてもたってもいられず、玄関を閉めると早速リビングの受話器をとって数字を押す。
『もしもし?』
 電話口に出たのは案の定同居人の田中さんで、吟子はよそよそしく自分の名を告げる。
「あ、高篠ですけど」
『ああ、はい、山瀬ね?』
「いますか?」
『ごめんなさい、お昼頃に出掛けたんですけど、まだ帰ってなくて。何か伝えておきましょうか?』
 人違いかも知れないという期待もほぼ裏切られ、そのまま受話器を置きそうになる。電話があった旨だけ伝えてもらえるようにと言い残して、崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。
「何だ、ケンカでもしたのか?」
 突然降ってきた声に驚いて見上げると、昨夜は帰って来なかった兄の康之がいた。
「やけに帰りが早いじゃないか。古いがいい車に乗ってるな」
 ケンカとはヒロヤとのことを言っているらしい。やはり何も言わなくても恋人同士に見られるのだ、男と女という最低条件さえあれば。
「そんなんじゃないよ。疲れちゃった」
「えらくショックを受けた顔だな」
 こういう時、兄はすごいと思う。親にもわからないことに気付くのは、同じ血を分けているからか、飛び抜けて頭脳明晰だからなのか。
「そう言えば昼過ぎに、田村葉月から電話があったぞ。またかけてくるとか言ってたから、暇ならかけてやれ」
「お兄は何するの」
「寝る。昨日は一晩中飲んでたからな」
 それが本当かどうかは知らないが、どう見ても眠そうな気配はなかった。
 そうだ、葉月に話そう。ヒロヤという恋人がいることはどこか後ろめたくて打ち明けていなかったが、そこのところはうまく省けばいい。とにかくどこかにこの想いを一部でも放り出さなければ、パンクして飛び散ってしまいそうだった。
 ダイヤルしようと吟子が受話器をはずすのと、ル、と鳴り出したのはほぼ同時。思わず受話器を耳にあてて、もしもし? と言う。
『もしもし?』
 相手も同じく不審そうに問う。噂をすれば影、その声は葉月だった。
「葉月?」
『あ、吟子。びっくりした、すごく早いんだもん』
 吟子は自分も電話をかけようと思っていたことや、呼び出し音と同時に受話器を取ったこと、相手が葉月で驚いたことなどを伝えた。
『ところで用件は何?』
 自分のことは棚に上げて葉月が言う。
「うん、今日かけてくれたみたいだから。私もいろいろあって、葉月と話したいことがあるんだ。今から行ってもいいかな」
 本当は、こんな言い方は嫌いだった。
 葉月は「いろいろ、ね」と強い語調で繰り返した後、吟子の申し出を承諾した。
 とりあえず電話を切った吟子は自分の部屋へ急ぐ。頭の中はまだ混乱しているが、それでもだいぶ落ち着いてきたようだ。
 あんなに激しいショックを受けながら、それでもヒロヤや兄や葉月と普通に話せることが、理由(わけ)もなく自分自身を苛立たせた。本当はもっと深く傷付いているのに、走り寄って叫び出したい程、力が抜けて気を失いそうな程、頭がおかしくなって全てめちゃめちゃにしてしまいたい程。
 それなのにどうだろう。事前に葉月に電話で連絡を取って、改めて出掛ける準備を整えて、着替えを出してシャワーなど浴びている、ここにいる自分は一体誰だ。
 海風に当たって少し身体がベタついている気がする。喉も渇いた。もしも美緒にあの男を恋人だと紹介されたとしても、一時的に取り乱すだけで、またすぐにいつも通りに戻ってしまうのだろうか。毎朝八時に出勤、月に一度は葉月と夕食、週末ごとには恋人と称するヒロヤに会いにストリートライブに出掛ける。そして心の奥で、美緒を想い続けるのだろう。
 きっと何も変わらない。

  葉月の部屋は先日とは打って変わって落ち着いていた。きちんと片付けられた、さっぱりとした空間。ベッドサイドに鮮やかな赤いバラが一輪だけ、不似合いなブルーのマグカップに生けてある。
「いらっしゃい」
 愛想笑いとも苦笑いともつかない不自然な笑みを浮かべ、葉月は吟子を招き入れた。また何かあったのだろうか。
「今日はどこへ行ってたの? 案外デートだったりして」
 まるで自分自身を責めるように、葉月は辛そうな目をしている。無理に意地悪を仕掛けようとしているかのようだ。
「……葉月?」
「あーあ、嘘よ。吟子を責めるのもお門違いよね。私から先に話していい?」
 既にそのつもりなのだろう。吟子の返事を待たずに続ける。
「朱に、最後のプレゼントをもらったわ」
 視線をやらずに指先だけで教えたのは、さっき目に入ったベッドサイドのバラだ。
「昨日の夜よ。びっくりしちゃった。少しだけ、だけど大事な話をしたの。もしも朱以上に愛せる人ができたら、そのときは笑い話にして吟子に教えてあげる。それで私決めたんだ。もう少し視野を広く持って、いろんな人を見ようって」
 わかるようなわからないような話だが、どうやら朱のことに関してはふっ切れたらしい。「今日、一人でぶらぶらしてたらナンパされたの。二人組の男。バンドやってるんだって。いつもだったらそんな話聞きもしないで行っちゃうんだけど、そういうのって視野が狭いかなとか考えてる間に乗せられちゃってさ。私としたことが」
 葉月の声がバラバラになって頭に入ってくる。男と聞いて、美緒と知らない男が浮かび、バンドと聞いてヒロヤを思い出す。
「私知らなかった。もちろん話さなきゃいけない義務なんかないけどさ。吟子、彼氏いたんだ」
 聞いてから理解するまでに、しばらくかかった。葉月の言葉が繋がらない。何の話をしていたっけ。
「その二人、安藤さんて人と、守山さんて人。そこのヴォーカルの人が吟子の彼氏?」
 それでもまだわからなかったのは、「守山さん」が思い当たらなかったからだ。吟子の中でいう「広野さん」が守山広野という形になるまでの間に、葉月がもう一度口を開く。
「先に言っとくけど、責めるつもりじゃないの。吟子が山瀬を好きなのは山瀬だからだって知ってる。たまたま好きになったのが同性だったってことよね。私みたく、最初から同性に限定して恋愛してるんじゃないもの。だから教えて。吟子にとっての山瀬と、その彼氏っていう人と、何か愛し方が違うのか」
 終わりの方は懇願に近かった。どういう偶然で彼らと葉月が出会うことになったのかは不思議だったが、多分ヒロヤの噂を持ち出したのは広野だろう。大事な友人のことをまるで自分のことのように自慢するが、安藤さんならそんなに目に見えてはしない。どういうわけか吟子の名前も出てきて、相手が葉月だったばかりに聞き覚えがあったのだ。「えーっ、お吟ちゃんの友達なんだぁ」と話が進んだ、だいたいそんなところだろう。
「……ごめん」
 考えがまとまる前に口をついて出たのがそれだった。自分でも少し驚く。
「隠すつもりはなかった。ただ言い出しにくくて、言っても仕方ない気がして、自分でもよくわからない。本当は今でも、葛城のこと好きなのか自信ないんだ。今だから、かも知れないけど」
 今度はヒロヤのことを思い出して胸が痛んだ。裕也(ひろや)、と呼ぶよりも、葛城、という響きがとても好きだった。
「今日海を見に行ってた。すごくきれいなところでさ、私のために下見までして計画練ってくれてて、それを思うとなんか重かった。嬉しいのも本当だし、どうしようって気もあった。私はきっとこの人が好きなんだろうって思ってたのに、その気持ちまでが疑わしくなって」
 自分でも理解できていないことを、何も知らない他人にわかるように説明するのは容易なことではない。今この瞬間にわかったことと言えば、やっぱり自分はヒロヤのことが好きなのかも知れないという、何度も否定と肯定を繰り返してきた憶測だけだった。
「……帰りの車の中から、美緒を見た。ものすごい人の中なのに、なんか目印でも光ってるみたいに飛び込んできた。知らない男に肩抱かれて、笑ってた」
 やっぱり目眩がしそうな程ショックだった。ただ今になって気付くのは、その時のヒロヤの顔が全く思い出せないことだ。頭の中が美緒のことだけで一杯になっていて、すぐ隣の触れられる距離にいるヒロヤが見えなかった。一番の罪悪は、自分では何も気が付かなかったこと。
「自分は葛城といながら、美緒が同じことをするのが許せなくて、もう葛城のことなんかどうでもいいから、美緒にだけ振り向いてほしくなった。こんな自分嫌になるよ。それでもこんな私に心底優しい葛城も、どうしても私の中から消えてくれない美緒も、どうしようもないくらい腹が立つ。自分で自分がわからないから、どうすることもできないんだ。八つ当たりばっかりの生き方、だから本当は葉月が羨ましい」
 感情の高まりに頭の回転がついてこれないのかも知れない。吟子の口調はいたって穏やかで、内容のまとまりのなさは自覚の上、一見世間話でもしているかのように思える。
「……吟子、やっぱり知らなかったんだ」
 申し訳なさそうな葉月の声に、直感的にああそうか、と悟った。やっぱりあれは美緒の恋人だったのだ。それも今日昨日の関係ではなく。
「でも一カ月くらい前よ。偶然見かけちゃって、冗談ぽく訊いたら本当にデートだって。信じられなかったわ。大きなお世話だろうけど」
 ちょうど吟子がヒロヤと出会ったのと同じ頃だろうか。しかし他人のことを偉そうに言えた義理ではない。黙っていたのは自分も同じなのだから。
「美緒といる時に葛城のことを思い出して、葛城といる時に美緒に会いたくなるのって、やっぱり優柔不断でフタマタなのかと思ってた。でも今日二人を同時に見た時、美緒のところに走って行きたくなったんだ。もうだめだと思った。自分でわかっちゃったら、これ以上葛城とは一緒にいられない」
 流れるように言葉にして初めて、自分の気持ちの行方に気が付いた。そう。ここまできてやっと。
「葉月ィ……」
 それまでとは打って変わって気の抜けた声。小さなテーブルに突っ伏して、吟子はゆっくりと呟く。
「葛城のことは美緒とは全然違う気持ちで、すごく大事だった気がするんだよ」
 ヒロヤのために泣けない自分が、今ただぼんやりと哀しかった。

 「お吟ちゃん、昨日さぁ」
 顔を見るなり早速切り出した広野。安藤さんが隣で苦笑しながら、両手を拝むカタチで顔の前でくっつけ、申し訳なさそうに口パクで吟子に謝っている。ヒロヤの姿はまだ見えない。こんなことは初めてで、思わず昨日言いかけていたバンドを辞めるという話をリアルに感じた。
「すごく楽しかったって言ってなかった? 葉月ちゃん」
 ベースを抱えて嬉々としている姿が、ヒロヤを失ったとなるとどうなるだろうか。そのまま吟子とも会うことがなくなるとしたら。
「そうね、言ってた言ってた」
 我ながら無責任な答え。いつもと少しも変わらないはずの週末が、もう二度と来ないかも知れないと思う分、吟子にはひどく重みがあった。
「ヒロヤ、遅いな」
 思い余ったように安藤さんが呟く。今のところはまだ間に合わない時間ではないが、いつもの暗黙の了解の集合時間を軽くオーバーしている。
「電車でしょ?」
「そう。だから事故とかの心配はないんだけど。連絡もなしに遅れるなんてしない奴だから、家で何かあったらと思ってちょっと」
「一人暮らしだしなぁ」
 広野のその台詞に追い打ちをかけられた形になって、安藤さんは渋い顔をして吟子を見る。昨日会っているだけに、一晩で発熱して動けなくなっているとは考えにくい。
「財布失くして電車乗れなくて、電話もしてこれないとか」
「家に電話あるだろ」
「部屋の鍵も一緒に失くしちゃって、ドアの前で途方に暮れてるとかどう?」
「お前じゃあるまいし」
 今日の自分に後ろめたいところがあるせいか、どうしてもヒロヤ不在の不安が消せない。まるで自分のせいのように思えてくる。せっかくの決意が揺らぎ出す。早く来て。
「吟ちゃん、タコ焼き食わない?」
「え?」
 思わぬ誘いにしばし茫然。すると広野がジュース缶を両手に「どっちがいい?」と訊く。思わずコーラを選んだ自分に呆れたが、それを肯定と見て取った安藤さんがタコ焼きを買いに行ってしまった。
「……いいの?」
「いーのいーの。生きてるんならそのうち来るって」
 ほんの少しだけほっとしたような、不思議な気持ちになる。あの葉月でさえ乗せられてしまうのだから、この二人にはとてもかなわない。
 ややあって安藤さんが戻って来る。まるで二人は吟子の気持ちなどお見通しのように思えて、なんだか泣けてきそうだった。
「……おっそーい」
 タコ焼きが残り四個になった時、顔を上げてボヤいた広野の視線を追うとヒロヤがいた。
「──っごめん!」
「俺もお吟ちゃんも泣いて心配してたんだぜ」
「……」
 いつもの冗談なのに、ヒロヤは驚いた顔をする。広野はともかく、吟子の目を見て。
「ごめん。心配かけたかな」
「連絡なしに遅れるなんて、ヒロヤらしくないな。何があったんだ?」
 まぁ食べろよ、と四個になったタコ焼きを差し出して安藤さんは言う。それを真似て広野も、まぁ飲めよ、と自分の飲みかけのスプライトを差し出して格好をつける。
「……寝坊です、ごめんなさい」
「なぁーにぃーっ!?」
「いや、昨日の夜中に電話かかってきてさ、友達が、バイクで事故ったって聞いて」
 苦笑から表情が変わらないところを見ると、容体はたいしたことはないのだろう。広野から受け取ったスプライトを一口飲む。
「それで慌てて病院行って。結果的に骨折が何ケ所かあっただけで、脳とか全然大丈夫だったんだけど」
 ヒロヤいわく、他の連中がすっかりパニックになってしまって、親に連絡するよりも彼女に会わせてやった方があいつも楽になる、などと言い出したため、唯一車で来ていたヒロヤが送迎係にならざるを得なかったということらしい。
 その騒動はほぼ明け方まで続き、目が覚めた本人とその彼女にさんざん笑い者にされた挙句、一睡もできないまま帰宅。
「寝たらヤバイからと思ってたのに、いつの間にか寝ちゃってて。あーもう、ホントごめん」
 空いた缶を広野に押し付け、その手を顔の前に立ててひたすら謝るヒロヤを、深い安堵感に包まれて見ていた自分に吟子はやっと気が付いた。
「何やってんだか」
 半分は自分に向けて呟く。
「なーっ、お吟ちゃんもっとキツく言ってやってよ」
 何やってんだか……自分が心底情けない。優柔不断を通り越して二重人格なのだろうか。全然違う気持ちで美緒とヒロヤの両方が好きだと言ったら、やっぱり多数決で非難を浴びるだろうか。
「まぁいい。ヒロヤに何もなかったんなら、そろそろ準備しに行こうぜ」
「お騒がせしました」
「本当に」
 ヒロヤは途中のゴミ箱にタコ焼きのスチロール容器を捨て、ちょっと吟子を振り返って歩き出す。吟子は右手でゲンコツを作り、突然ヒロヤの背中に叩きつけた。
「──!? 何するかなぁ」
 驚いて振り返ると吟子は笑っている。何だかよくわからない。
「どうかした?」
「葛城、私今日、別れようかって言おうと思って来たんだけど、そしたらどうする?」
「泣く」
「嘘ばっかり」
 こいつめ、ともう一度ヒロヤの背中を叩き、吟子は満足げに頷いた。
「昨日はありがとう。それからごめん。葛城のこといつか泣かせるかも知れないけど、またどこか連れて行って」
 もしも今、本当は他に好きな人がいて、それが女なんだと打ち明けたなら、ヒロヤはどんな顔をするだろう。言ってみたい気もしたが、吟子が思う通りのヒロヤなら「俺より吟子に優しい?」などと笑うだろう。そんなところを好きになったのだ。
「いつか泣かせようと思ってる? それでもいいけど俺、俺は吟子を泣かさない」
 わかっているのかいないのか、そんなことはどうでもよかった。自分でも自信がない。ただ好きなことは事実に違いないのだから、その気持ちに嘘をつかないでいようと思ったのだ。今ここで、ヒロヤの姿を見た時に。
「吟子ちゃぁん」
 慣れない呼ばれ方にぞっとして声の主を探す。しかし吟子よりも早く広野が反応したことで、それが誰かを知った。
「葉月っちゃーん、来てくれたんだっ」
 友達? と訊くヒロヤに頷く。
「びっくりしたぁ。来る予定だったの?」
「実はね。黙ってたのはささやかな仕返し、なんちゃって」
 ちらりとヒロヤの方を見て、意外なことににっこりする。
 彼らが準備をしている間、二人は日陰に座って話していた。
「思ってたのと全然違うタイプ」
「葉月こそ、誘われて出て来るなんてどういう風の吹き回しよ」
「昨日言ったじゃない。もっと視野を広くしようって決めたからよ。こういうところから出会いは始まるんだから」
「……ってもしかして」
「違う違うっ。あの人たちにそういう気持ちはないわ。いい人だなとは思うけど。だから今日だって出てきたんだし」
 確かに、葉月の努力は目に見えてすごいと思う。自分は結局何も変わってはいないのだけれど。
「あの、さ」
 昨日の気持ちと今の考えが違うということを、葉月に伝えなければ。彼女なら多分、多数決の少数派だと思うから。
「待って待って、私から言わせて。吟子、結論を焦らなくていいと思う」
 してやったり、という顔をしている葉月は晴れ晴れとしていた。
「バラが枯れたの。枯れたって言うか、しょんぼりしてきたから、埋めた。生けてたカップね、朱がずっと使ってたんだけど、それと一緒に。これでもう、思い出の人よ」
「……ずっるーい」
「へへっ」
 出端(でばな)をくじかれた格好で吟子も自分の決意を話す。
「私もう、焦らないことにした。同姓のフタマタって極悪って感じがするけど、異性なら問題ないかーなんて勝手に思って。そしたら何か楽になったみたい。葛城といるの、やっぱりいいんだもん。でも美緒が好き」
 あはは、と笑うと楽しい気持ちになる。
 きっと今度美緒に会った時にはまたどうしようもない感情に襲われるのだろう。それでも諦められない程好きなのだから、仕方がない。それが、吟子なのだ。
「葉月ちゃーん、お吟ちゃーん、早く来ないと立つとこなくなるよ」
 大袈裟に呼びに来た広野に手を振りながら腰を上げる。
「広野さん、いつの間にか葉月の方を先に呼ぶようになってる」
 ぼそりと呟く吟子を置いて葉月が駆け出す。
「へっへー、結構いい気分よねぇ」

                      〈了〉              

#創作大賞2024 #恋愛小説部門


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