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みそぎ
2019年10月1日 23:30
六段の本棚 一節僕が彼に初めて組み立てられたのは、彼が中学2年生の秋だっただろうか。誕生日のプレゼントと言えばゲームとか、服とか、そういったものなのだろうけれど、彼はなぜか僕をねだった。母親からも「これでいいの?もっと他に欲しいのがあればそれも買おうか?」と言われたほどだった。数日後に彼の部屋に郵送されて組み立てが終わると、彼は僕の前に段ボールを何箱か置き、ぶつぶつと独り言を言い始めた。「
2019年9月3日 23:41
コットンの枕 私にとって初めての引っ越しが、つい昨日、三月二四日に行われました。彼が私を使い始めてから約十年、ずっと同じ部屋の中にいたので、車というものに乗せられたときは不覚にもワクワクしてしまったものです。 彼は私をトランクから降ろすと、”205”と書かれた部屋へ連れて行きました。そこで、前の部屋にもあった本棚を組み立てて、たくさんの小説を並び終えると、これも前の部屋の時から使っていたベッドを
2019年8月23日 22:17
角部屋のワンルーム彼と私が初めて出会ったのは、世間がそわそわと慌ただしくなる、三月の頭でした。いつものように南から暖かな日の光を浴びていると、ふいに北側の玄関から音がなり、ゆっくりと開いたのです。外の冷たい空気が流れ込むのと同時に、彼が中に入ってきたのです。「どうぞどうぞ、遠慮せず。靴を脱いで」白髪混じりのおじさんに促されて、廊下を進んでこちらへ向かってきます。「この205号室は先程もお