街灯下で雨露をしのぐ猫
午後8時。小雨が降る中住宅街を散歩していると猫を見つけた。目と目が合う。私に近付こうとも逃げようともしない。首輪はついているので飼い猫だ。不思議な猫である。私はこの猫の目を見つめているうちに、子どもの頃に家出した事が頭に浮かんできた。
何かから逃れたくなって家を出た。しかし、一人で外へ出ると心のどこかで寂しかった。それが人生で最初で最後の家出だった。家出歴3時間の私が猫の気持ちを考えた。飼い主からのひと時の解放を望みつつも、猫なりに寂しさを感じていたタイミングなのではないかと。
私は街灯下にいた猫にようやく近づいて頭を軽く撫でた。雨露に濡れて湿っていたが、ふくよかであった。餌やおやつを常日頃から与えられているのが想像出来た。
それから数分が経っただろうか。猫は電気の付いた一軒家の庭へ入っていき見えなくなった。
飼い猫が外を歩いていたら家出中かもしれない。と思う事にして帰路についた。
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