三十路裏之助

三十路裏之助

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恋に破れて。

久し振りだねって友達にラインを送って、そうだったけ?って返信が来る。長い間連絡しないでごめんねってラインを送って、いや別にと返信が来る。ツンデレってやつなのか。わかっているぜ。サンキュー。いつも気にかけてくれてありがとう。心の中でそう呟いて、スマホを枕元に放り出した。ここんとこ忙しかったからね。いやホンマに。 *** 何をしていたのか、というと、恋をしていたのであった。素敵な少女と二人、いろんな所に出かけたり話をしたりしていたのであった。なので、とても友達などに連絡を取る

    • 写真の中のシュレディンガー

      別にしょんぼりしているわけではなかったけど、夕闇のベンチで一人ぼんやりしていると、知り合いの女の子が話しかけてきた。どうしたの?元気、ないね。なんかあったの?などと言うので、私もついついその気になって、いやぁ、人生ってのは、なかなかね、などと適当な事を言う。そうやって項垂れて深い悲しみを背負った趣を全開にしていると、すとんと太陽が海に沈んで本当に悲しい気持ちになってしまった。 暗闇に溶けてゆっくり形を失っていく指先を見つめながら、君さ、死にたいって思った事ある?って聞いたら

      • 電気をつけてセックスをする人間には一切の感受性が欠けている

        週末の夕暮れ時。映画館の椅子に身を沈めて、映画のアウトロを見ていた。なんとも納得のいかない映画だったけど、それとは別に席を立つ人の輪郭が、スクリーンの光によって青白く暗闇に浮かびあがり、大層綺麗だと思った。自分の手のひらを目の前に翳してみると、私の白い手が暗闇に浮かびあがった。まるで骨じゃん。そう思った。 映画のアウトロは眠い。いや映画の途中も眠かった。というか、最近はいつでも眠い。椅子に身を沈めて目を瞑ると、まぶたの裏に浮かぶのは、骨の様に美しい手だった。 ***

      恋に破れて。