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隣のアナウンサー

(この記事は、現在ほぼ閉鎖状態になっている私のブログ「新潟をブログする」に今から3年前に掲載した文章を改題、加筆、修正をしたものです。掲載当時と変わらぬ印象を持ち続けているので再掲載させていただきました。お許しいただけたらと存じます。)


UX新潟テレビ21の朝の情報番組「ナマ+トク」の中継コーナーに、近正仁さんが出演している。

現在の肩書はディレクター。とはいえ、昔からの新潟県民ならご存知の通り、近さんは長い期間アナウンサーだった。

その人となりは故安田辰昭氏の名著「近ちゃんの高校野球」に詳しい。

明るくにぎやかで愛嬌がある。そして前向きで、ひたむき。それでいて少し不器用。そんな近さんを安田氏は「いかにも田舎向けのアナウンサー」と評していた。

そんな性格の証とでも言おうか、忘れられないTVの記憶がある。

今から27・8年くらい前、UXがまだNT21だったころ、土曜の朝に「THE7」という自社制作の情報バラエティ番組があった。
2人MC体制で、一人は同局の山本肇アナウンサー、もう一人の女性MCはキー局テレビ朝日の夜の番組「トゥナイト」の歴代ホステスが務めていた。
東京の、いかにも都会的な番組のホステスを相手に全く臆することなく軽妙なやり取りを繰り広げていた山本アナを、半ば楽しく、半ば感心しながら見ていたのだが、その山本アナが夕方のニュースキャスターになるために番組を離れることになり、後任はこの番組の一コーナーの中継を担当していた近さんが務めることになった。
だが、この人選は明らかにミスキャストだった。
地方局の男性アナウンサーはそれほど人員が多いわけではなく仕方がない部分もあるのだが、「田舎向けのアナウンサー」近さんが女性MC相手にスマートなやり取りができる訳がなく、画面からはお互いのやりづらさがありありと伝わっていた。
わたしは昔から「アナウンサーがタレント並みに面白い」という様が大好きで、それが地元局であればなおさらであった。そういった意味ではわたしにとって近さんは、いい人なのは十分わかるのだが少し物足りない存在だった。

その近さんが、今もテレビに出ている。こういった形でテレビに出続けているのは、多少強引な物言いになってしまうが半分アナウンサーであるといっていい。

1983年のNT21開局の時からの局員であるので、断続的ではあるがもう37年ほど新潟のテレビ画面に登場している。このような人は、最初東京で活躍していたTeNYの堀敏彦アナウンサーを除いては他にいない。新潟のテレビ界にとって非常に稀有な存在である。

局のアナウンサーがいつまでもアナウンサーであり続けるというのは地方局ではもちろん、東京のキー局でもそれほど多いわけではない。女性アナウンサーなら結婚などで退職するケースが多く、男性アナウンサーなら異動や役職に就くなどで画面に出てこなくなることが少なからずある。そんな中でアナウンサー生活を全うする人は、何らかの喋りのスキルにたけていていつまでもその需要がある場合だろうか。報道なら「ジャーナリズム力」、スポーツ中継なら「実況力」、バラエティなら「MC力」等々。

近さんは・・・、「親近力」か。

もう大ベテランなのであるがいい意味で威厳を持たず、親しみやすさが全く失われていない。甲高く、今にも声が裏返りそうなくらい熱い調子でしゃべるのも相変わらずだ。何よりいくつになっても近所のおじさんのような雰囲気が漂っている。「立て板に水」「軽妙洒脱」そんなものからは少し遠いが、テレビに出る人は視聴者に喜ばれてなんぼである。この人柄が穏やかな県民性にも合うのだろう、ディレクターでありながらレポーターをやるという異例の待遇を受けている。

先述のとおり、近さんはNT21開局の時からの局員である。もう60歳を超えているかもしれないがまだまだ現役で画面に登場している。UXはもう数年で退職なのだろうが、体の続く限りテレビに出続けていてほしい。それほど新潟のTVになくてはならない人だと思っている。

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