ある放送局の閉局
3月31日、新潟県民エフエム放送・FM PORT(ポート)が6月30日に「停波」するとの報道がなされた。全県をエリアとするラジオ局の放送終了は全国で初めてだという。
そうか、放送局が終わるときには「停波」というのだな、との感慨もよそにして・・・。
ただただ、ショックだ。
開局は今から20年前の2000年12月。5大都市圏以外で民放FM2局体制になるのは初めてとの事実が誇らしかった。「どれどれ、どんな番組を・・・」と思い、聴き始めると、都会のFMのようなおしゃれさとも、地域FMのようなほのぼのさとも違う、いい意味ではっちゃけた、チャレンジングな番組が満載であった。ナビゲーター(パーソナリティ)の際立つ個性も魅力的だった。それまで、車の中で何かを聴くといえばカセットかCDだったのだが、そこに「ラジオを聴く」という習慣が加わったのはPORTがきっかけだった。
「スタンピングラウンド」豊さんのだみ声で繰り出す明るいトーク。 「ストンピンナイト」ちひろさんの少々眠たい感じのけだるいトーク。 「杉真理のPOP‘N ROLL」大物ミュージシャンを相手に堂々と渡り合う高橋佳奈子さんのパーソナリティ力。 そして現在も続く「NIGHT i」普通にしゃべってセクシーボイスの松本愛さん(「スタンピン・・・」ではレポーターでした)。
懐かしい想い出がよみがえる。大げさでなく、新潟の新たな可能性を感じたものだった。
月日は経ち、歳を重ね、ライフスタイル・嗜好が変わるとAM、特にBSNラジオを好んで聴くようになり、だんだんとPORTから遠ざかるようになった。 それでも、「たまにFMを」と思ったらやはり選ぶのはPORTだった。 開局当初と比べ、特に夜の時間帯において新潟とはあまりゆかりのないパーソナリティーが増えているのだが、それでも朝、昼は長くいるパーソナリティが頑張っている。遠藤麻理さん、立石勇生さん、佐藤智香子さん、島村仁さん・・・。それぞれの個性を生かしながらも落ち着いた番組の数々は、最初のころの模索期を経て局のカラーが確立し、成熟、そして安心感を抱かせるものになっている。
だが、終わりは突然知らされた。報道によるとスポンサー不足による経営悪化のための閉局であり、03年からは恒常的な債務超過状態に陥っていたという。累積損失は11億円だったとのことだ。
FM PORTは「新潟県民エフエム放送」である。と、ここまで書いて、かつて、新潟・市民映画館シネ・ウインドが映写機のデジタル化のために市民などから募金を募り、1900万円あまりを集めたことを思い浮かべた。FM PORTは運営形態も規模もシネ・ウインドとは全然違い、募金くらいではどうにもならないのかもしれないが、それでももっと県民に何かを訴えてもよかったのではないか。何かができたかもしれないと思うと残念だ。
とはいえ、文化、カルチャーの東京絶対主義が進む中、広島、仙台もなし得ていない民放FM2局体制の一翼を担ってきた功績は大きい。そして、ラジオの楽しさを教えてくれたPORTには感謝の気持ちでいっぱいである。
大半が自社制作番組だったFM PORT。「ネットワークに属する地方局」ではない、「新潟県の放送局」だった。挑戦は終わるが、最後まで聞き届けようと思う。
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