見出し画像

胸郭が壊れる話②

 前回、胸郭が機能しなくなって、息が出来なくなる状態を、二つ話しました。 
 今回は、最後の、胸郭を動かす神経が壊れてしまう時の話です。
 肋骨で形作られたら胸郭の大きさを変えるのは、呼吸筋と言われる肋骨と肋骨を繋げている肋間筋、そして胸郭の底になる横隔膜です。
 これらが伸びたり縮んだりして胸郭の大きさを変えるわけです。これらの筋肉は脳からの刺激で動きます。
 無意識に呼吸している様でも、実は脳の呼吸中枢という場所から自動的に刺激が出ているので、これらが壊れると呼吸が出来なくなります。

 脳梗塞や脳出血、腫瘍なんかで脳の呼吸中枢が壊れてしまった時には、呼吸の命令が出ないので呼吸筋が動かなくなり呼吸が出来なくなります。
 もう一つが、首から続く背骨の中にある脊髄が壊れると、神経の刺激がそこから伝わらなくなるので、筋肉が動かなくなります。
 損傷する脊髄の位置で呼吸のし易さが変わってきて、三番目の頸椎以上の損傷では完全に息ができなくなり、人工呼吸器になります。
 最後が、ゆっくりと、慢性的に胸郭が動かなくなってくる状態として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)があります。
 有名なところでは『宇宙兄弟』のシャロンと、セリカのお父さんです。
 これは、筋肉を動かす神経が、徐々にゆっくり壊れていって、結果的に全身の筋肉が動かなくなる病気です。もちろん胸郭を動かすための横隔膜などの呼吸筋も動かなくなるので、息が出来なくなります。

 説明してきた、どこが壊れても息がし難くなる訳ですが、いきなり全く呼吸できなくなる訳ではなく、重症の度合いがそれぞれなので、状態に応じて、酸素投与から始まり呼吸器まで、なんらかの方法で体に酸素を送ります。

 次回から、酸素を体に入れる方法を説明します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?