ドラフト2024⑤ 高校生野手

暑い暑い夏も終わり、長い長い残暑の季節が始まろうとしています。
今回は5項目のうちの最後、高校生野手についてまとめてみます。

こと上位指名という点についてで言いますと、高校生野手は即戦力という項目から言いますとかなり遠い位置にあるということもあってか、年によって上位指名人数にかなりバラツキがあります。例を挙げますと、2022年は9名だった上位指名が、2023年は3名でした。特に、大学生投手のレベルが高い年ですと、高校生野手の上位指名が減る傾向にあると感じます。

今回も、まずは上位指名の予想をし、その後、ポジション別に、支配下指名されそうな選手名を挙げていこうと思います。


《上位指名予想》

高校生野手の上位指名で多いポジションは、やはりセンターライン。それに加え、サードも割と上位指名されることが多いです。

一塁の場合、打力がかなり高くても、4巡目までしか行かないこともままありますし、両翼の場合であれば、かなり打てて、かつ、身体能力が高ければワンチャン上位指名といった状況。高校時代からセカンドの選手は、球団によっては上位指名に踏み切られるケースもありますが、かなりレアケースと言って良いでしょう。

身長で言えば、捕手とショートは身長180㎝未満であってもマイナス評価になることはありません(身長175㎝未満だと少し厳しい)。外野手の場合、身長180㎝以上でないと厳しくはなりますが、長打力に加え、50m6.0以内の足を持っていれば、身長170㎝台後半でも上位指名されることがあります
なお、身長184㎝以上は長身枠に入り、甲子園出場や代表選出がなくても、50m6.3秒以内であれば、ロマンを買われて上位指名というケースは珍しくありません。

50mタイムに関しては、ショートの場合、50m6.1秒以内が基本。大柄の中長距離砲であれば、6.3秒までは許容される印象。外野手ならば6.0秒以内は欲しいところです。サードや捕手に関しては、7.0秒に近い数字でも上位指名されることがありますが、とりあえず6.5秒以内に収まっていればマイナス評価にはなりません。
一塁到達タイムでいえば、左打者なら4.0秒台以内、右打者なら4.4秒台以内であれば、俊足と考えて差し支えないです。

高校代表のスタメンに選ばれていた場合、センターラインが本職の選手であれば、上位指名の可能性がいくぶんか高まります。下馬評ではそこまで上位候補とされていないような、少し意外な選手が上位指名されることもあります。

以上の項目を踏まえ、各ポジションから上位指名されそうな選手をピックアップしてみますと、

【捕手】箱山遥人 (健大高崎・身長177㎝・50m6.5)
【遊撃】石塚裕惺 (花咲徳栄・身長181㎝・50m6.2)
    宇野真仁朗(早稲田実・身長177㎝・50m6.1)
    齋藤大翔 (金沢高校・身長181㎝・50m6.0)
    森井翔太郎(桐朋高校・身長183㎝・50m6.1)
【中堅】M・ニキータ(豊川高校・身長181㎝・50m6.2)
    正林輝大 (神村学園・身長178㎝・50m6.0)

このあたりかなと感じます。やや高評価しすぎか?と自分でも思う選手が混ざっていますが、過去の上位指名を考えた場合、スケール感やフィジカル>現時点での技術力 で選ばれている面が強いので、このような予想をしています。それでは上から順番に。

●箱山遥人(高校代表) 今夏予選 打率.563 OPS1.792 三振率.000

グラウンドの刺客。走者が少しでも隙を見せれば徹底的に刺してきます。少し送球する場面が多すぎるようにも思いますが、スローイングが正確なので場を乱しません。今春センバツでは打率.444、あと一歩でホームランという三塁打を放つ場面も。今夏予選ではレジェンド級の爆発力を見せましたが、甲子園では1安打どまり。ただ、高く舞い上がる打球も放っており、甲子園の広さに負けたという印象。高校代表にも選ばれています。

今年の早い段階から、1巡目もあるのではという声もあったようで、さすがにそれは時期尚早としても、現時点で上位候補と目されているようです。近年、捕手はどのカテゴリよりも高校生の市場価値が高く、入札された高校生捕手も複数人いることも考えますと、箱山も2巡目以上で指名されるのではないか、と思います。指名を検討している球団のシーズン順位次第では、入札されることもありそうです。

●石塚裕惺(高校代表) 今夏予選 打率.462 OPS1.240 三振率.000

埼玉のハードパンチャー。普通、打者は振りに行く際に弾みをつけて打ちに行きますが、彼は特に弾みをつけるような動作もなくハードヒットしてくるという特殊能力を持っているように感じます。昨秋の関東大会から今夏の甲子園に至るまで三振ゼロというのも、もはやタイミングを外すことが不可能だったからではないでしょうか。その割に四球はしっかり選べているのも凄いです。遊撃守備は高校生としては可もなく不可もなく。高校代表でもスタメンショートを務めそうです。

スローイングに不安が、という話もあるようですが、高校生なので特にマイナスではないでしょう。既にメディアは上位候補認定していますし、外れ1巡までありそうな予感。坂本勇人2世になれるでしょうか。

●宇野真仁朗(高校代表) 今夏予選 打率.273 OPS1.103 三振率.100

早実の火薬庫。今年に入ってからの公式戦で5本塁打を木製バットで叩き込んだアーチスト。やや上背はないものの、加速力が凄まじい走塁を見せたり、握り替えの早いスローイングを見せたりと、走攻守に隙のないところを随所に見せつけ、ついに高校代表にまで選ばれました。中日のスカウトも、「上のほうでかかるのでは」と、上位候補であることを匂わせるコメントを出しています。

気になるのは、肘を痛めてるのかどうか、スローイングがショートとしては現状だと弱い点。あと、今夏にショート復帰して以降、打率がさほど高くない(守備に意識が行っている?)点は気になるところです。四球も多いですが、三振も他の高校生上位候補野手と比べるとやや多いようにも感じます。とはいえ、セカンドに回すという選択肢も可能ですし、順位を2つ落とすほどのことでもないでしょうから、2-3巡目では指名されそうな気がします。

●齋藤大翔 今夏予選 打率.444 OPS1.056 三振率.100

金沢の風雲児。抜群の身体能力の高さが武器で、特に遊撃守備のキレの良さや力強さが際立ちます。守備のインパクトの方が勝りますが、打撃も悪くなく、石川大会では打率4割以下の大会が一度しかありません。憧れの選手は今宮健太。高校時代のフィジカルスペックでは今宮を上回っています。

甲子園や代表候補の経験はないままとなってしまいましたが、フィジカルスペックに優れた高校生ショートは上位指名される可能性が高く、齋藤も2-3巡目で指名されるのではないか、と思います。

森井翔太郎 公式戦通算 打率.364 長打率.545 2年夏以降は三振なし

魅惑の4ツールプレーヤー。183/86という、長身に加え、鍛え上げられた肉体から、投げてはMAX153km/h、走っては50m6.1、打っては高校通算45本塁打、更には高校はハイレベル進学校という、輝く未来しか感じさせないような選手。志望届を出さずにアメリカの大学に進学という話もありましたが、このほど志望届を提出。公式戦実績は少ないものの、スカウトの口からは上位候補という評価が出るほど。

守備力に関しては遊撃手として際立って上手いというほどかは分かりませんが、長打力があるなら、コンバートしても旨味は十分あります。プロで早い段階から二軍で活躍できるか等の気になる点はあるものの、齋藤とは違うタイプのフィジカルショートとして、こちらも3巡目前後での指名がありそう。ただし、渡米する可能性も高い選手なので、指名するからには、早期ポスティング容認が必須になりそうです。

モイセエフ・ニキータ 今夏予選 打率.429 OPS1.524 三振率.167

豊川の未完成スラッガー。入学時から19kgも増量して181/85という肉体に到達した努力家であり、1年夏から3年夏までの公式戦、甲子園を除くと通算打率.516、通算OPS1.606という規格外のスタッツを残した天才でもあります。今春センバツでは新規格バットでの1号ホームランも放つ長打力を見せ、センターの守備でも動きの良いところを見せています。

左投左打の外野手という、なかなか評価を上げづらいところのある選手ですが、ここまでずっと打ち続けており、かつ、まだまだ肉体の成長の余地がありそうということで、3巡目前後での指名はあるのではないか、と思います。

正林輝大(代表候補) 今夏予選 打率.450 OPS1.026 三振率.048

薩摩のスプレーヒッター。2年夏と3年春の甲子園をあわせると、32打数15安打。甲子園以外の公式戦でも打率4割近くを残し、今春センバツでは新規格バット第2号ホームランも放ちました。なお、今夏の甲子園は新フォームで挑んだ結果、無安打が続いてしまったとの自己評価だそうです。

50m6.0の足もありますが、チームではライトを任されており、守備が際立って上手いというわけではないかもしれません。こちらはモイセエフと違って右利き。身長180㎝未満とはいえ、例えば内野手を試されるという可能性はあるかもしれませんし、4巡目前後で指名されるのではないかと思います。今年は高校生野手の上位指名が多めになるのではと感じますが、そこまで上位候補は多くないように思いますから、正林も十分、候補に入ってくるでしょう。

《支配下指名候補》

それでは、ポジションごとに支配下指名候補を考えてみます。ワンチャン上位指名もありそう、という選手から、育成になるかもしれない選手まで、ピックアップして載せていきます。

【捕手】

プロ志望を表明している捕手で言えば、椎木卿五(横浜高・身長180㎝)が魅力的。肩も強いですが、破壊力抜群の打撃力が最大の武器。今夏予選では打率.538、OPS1.518という猛打を見せ、決勝でもサイクル安打を放つという無双ぶり。足はそこまで速くなさそうですが、一三塁や両翼へのコンバートなら問題なさそうですし、5巡目あたりで指名されるのではないかと思います。

先日、志望届を提出した龍山暖(エナジックスポーツ高・身長172㎝)は、スカウトからは高校生ナンバーワンの肩というコメントも出ている捕手。打撃も悪くなく、沖縄大会では常に打率3割以上、長打もコンスタントに出ています。こちらは育成か支配下かの当落線上という印象。
あと、志望届を出すか分かりませんが、木製バットで場外弾を放つなど、今夏予選で3安打のうち2本がホームランという爆発力を見せた井上和輝(駿台甲府・身長183㎝)も、プロで見てみたい選手の一人です。

【遊撃手】

今年は高校生ショートがかなり厚い年だという印象です。既に上位指名候補の中でも4人、名前を挙げましたが、あと2人ぐらい増えたとしてもそこまで驚きではないです。ただ、高校生ショートの上位指名は2018年ですら5名なので、今年も多くて5名かなという印象です。

ワンチャン上位指名ありそうと感じるのは、颯佐心汰(中央学院・身長175㎝・50m5.8)。センバツでは打率.375、今夏予選では打率.471に加え、4試合で5長打。遠投120mの肩も備え、高校代表候補にも選ばれました。守備も軽快。小園海斗を右打にしたようなものだと考えれば、まだ上位候補うんぬん言われていないことが不自然なほど。4巡目前後での指名は十分ありそうです。

50m5秒台の高校生ショートでいえば、今夏予選でまさかの初戦敗退を喫するも、春季大阪大会での活躍が際立っていた今坂幸暉(大阪学院大高・身長178㎝・50m5.9)や、好守が魅力の中村奈一輝(宮崎商・身長183㎝・50m5.9)らが指名候補でしょう。

今坂は春季大阪大会で26打数13安打の猛打ぶりを見せた選手で、少し見極めに不安も感じますが、そのままプロに行っても結果を出せそうなフォームをしています。野球の知識吸収に貪欲なのも好印象。球団によっては、素材を買ってワンチャン上位指名というパターンもなくはないかもしれませんが、4-5巡目と考えるのが妥当かなと感じています。

中村は甲子園でも見せたように、遊撃守備がかなり上手い選手。打撃もパンチ力がありますが、見極めがかなり悪く、ストライクをあっさり見逃してしまったり、ボール球にもスイングが止まらないなど、不安は正直あります。こちらは支配下ギリギリぐらいかもしれません。

50m5秒台といえば石見颯真(愛工大名電・身長174㎝)もそう。高校代表候補にも選ばれた選手ではあるのですが、ショートは今春からで、正直あまり上手いわけではありません。元のポジションである外野手として見た方が良いかもしれません。打撃は打率をしっかり残すものの、長打連発という気配はあまりせず、少し評価しづらいなと感じます。下位指名か、指名がなく進学というルートをたどるかもしれません。

少し、ここまでのタイプから外れますが、プロで即コンバートされて打撃で勝負、という形になるかもしれない2人の選手ということで、森駿太(桐光学園・身長187㎝・50m6.1)と、田中陽翔(健大高崎・身長183㎝・50m6.4)の両名も気になります。

森はtwitterの動画で、猛烈なホームランを放っているのが拡散されて話題になった大型ショートで、今春の神奈川大会では打率.500に加え、ホームランも放ちましたが、今夏予選では打率.222に沈んでしまいました(サードに転向?しています)。三振が多いのも不安。少しロマン度が強すぎるので上位指名では怖いかなと感じるものの、高身長に足も速いということが評価され、球団によっては高評価するところが出てくる可能性はまだあります。なお、フォームは少し力みすぎかなと感じますが、かなり良く見えます。

田中は恐ろしいほどフォームが良さげというのもあり、昨夏予選から今夏予選に至るまで、甲子園を除くと三振ゼロというのが素晴らしい選手。甲子園でも打率.357、28打数で4三振なので十分に合格点。今春の関東大会では7打数6安打、2本の二塁打に加えホームランも1本という大爆発を見せています。身体能力は他の怪物たちと比べると少し劣るのと、遊撃守備の怪しさを踏まえると、プロ入り後はサード等に転向することが考えられますが、5巡目前後で指名可能と思える反面、将来のスタメン野手に成長できそうなものを感じます。

なお、ヤクルトが、石塚・齋藤と並んで名前を挙げた坂口優志(樟南・身長180㎝・一塁到達4.53秒)も気になるのですが、動画が見つからないので詳細は分かりません。今夏予選では打率.357、二塁打1本、三振率.125と結果を出している、守備の上手いショートだそうです。注目したいです。

【一三塁】

今年に関しては、一三塁を専任としている高校生野手で、支配下指名確実と思えるような選手はちょっといないかな、と正直思います。サードを守る強打者は上位指名でもおかしくないわけですが、そこまで騒がれるサードも今年はいなさそうです(宇野は二遊間も守れるので一三塁専任ではなくなりましたし)。

気になるサードは、福田敦士(富山商・身長188㎝)や、三井雄心(浦和学院・身長180㎝・50m6.4)、谷村剛(和歌山東・身長177㎝・50m6.6)あたりですが、驚弾を叩き込むような野手ではなかったり、身長がそこまで高くなかったりと、支配下指名漏れも全然ありそうな野手が多い印象です。

一塁の選手ですと、中堅も守るという話もありますが、小針大輝(日大鶴ケ丘・身長191㎝・一塁到達4.0秒)がかなり気になる存在。この身長で、このタイムの一塁到達を見せる選手なんて1年にひとりいるかどうかですから、それだけで価値が大いにあります。ただ、ここまで公式戦でのホームランが、あるかどうか分からないぐらい少なく、長距離砲と見るには少し物足りない可能性はあります。それでも尖った選手なので、下位指名はありそうという印象。

【外野手】

外野手に関しては、上位候補以外ですと、すらすら名前が出てくるような状況ではありません。ただ、前述の小針や、投手としてnoteにも書きました柴田獅子らが、外野手として指名される可能性はままあるでしょう。

それ以外で気になるのは寺井広大(神村学園伊賀・身長184㎝・50m6.6)。2年時は夏予選で2試合連発をマークした大型スラッガー。ただ、それ以降の公式戦ではなかなか結果が出ておらず、育成まで残る可能性は割とあるのでは、と感じます。

おつかれさまでした!

ということで、高校生野手について、ざっくりまとめてみました。今年は高校生ショートはかなり分厚いなと感じる反面、それ以外のポジションにトッププロスペクト候補が複数いるかとなると、少し怪しいなという印象を受けます。上位指名されそうなのは、前述の7人と、森井が上位で指名されないのであれば颯佐が入ってくるかな、と予想します。予想外の名前が来るとしたら、身長184㎝以降の大型選手になりそうです。

次回はいよいよ、上位指名36名について、本格的な予想を載せていきます。今年は2巡目から、市場評価ではなくて各球団のニーズに従い、少し予想外の名前が出ることも増えるのではないかと予想しています。編成表や、過去の指名傾向から考えていく段になりそうです。できればドラフト1ヵ月前あたりには上げたいところ。それでは、またね。

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