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2016年LATIN AMERICAの10枚

以下の記事は以前ブログに書いていた、その年のあるカテゴリーのベスト・アルバムです。ブログを見ると言う奇特な方はもうほとんどおりませんので、徐々に全てnoteに移動することにしました。今回の記事は2016年のアルバムからLatin Americaのものを10作品選んでいます。


ラテンアメリカ以外の10枚に続いて、ラテンアメリカの10枚。ブラジルはミナス勢を中心に、高度でいて、溢れ出る色彩感に魅了された。それはアルゼンチンの現在の音楽とも親和性が極めて高い。しかしチリやヴェネズエラ等の音楽もそれに匹敵する程の洗練に今や到達していて、最早「ラテンアメリカ」などという括りも空虚ですらある。順位はありません。





☆8 / 8

Buenos Airesで活動する、その名前の通り8人組。そのうち4人が管であることで、このグループの音が特徴付けられている。哀愁のある旋律と、プログレを思わせる、色鮮やかで複雑なアレンジ。そこにカンドンベなど、躍動するルーツのリズムが加わって、独特の陰影のある世界を構築している。

「8」に代表させたけれど、それ以外にもcribas、nadis、OJO DE AGUAなど、素晴らしいグループが犇めいていて、アルゼンチンはすごいことになっている。



☆ALFREDO RODRIGUEZ / Tocororo

Cuba人ピアニスト、Alfredo Rodriguezの3作目。これがもう頗るかっこよい。Ibeyiの参加したTr.2″Yemaya”の疾走感、Richard Bonaの参加したTr.3 ″Raices”の陽光の様な暖かさ。さらにはBachやPiazollaまでもを取り上げる幅広い音楽性。縦横無尽で力強く、炸裂するきらびやかなタッチが素晴らしい。Ibrahim Maaloufのラッパも切ない。



☆ANDRÉ MEHMARI, ANTONIO LOUREIRO / Mehmari Loureiro Duo

André MehamriとAntonio Loureiroのデュオなんて、反則です。現代のブラジル音楽界を代表する、二つの類い稀なる才能が作り上げた、このとてつもなく美しく、そして高揚感溢れる音楽には、瞬時に魅了されてしまいます。壮大で、複雑で、刺激的で、それでいて琴線に響く、とんでもない傑作です。ブラジル音楽を新たな地平に導く、驚愕すべきアルバムだよね。



☆ANDRES BEEUWSAERT / ST

Andres Beeuwsaert、一昨年の東京公演からのライブ音源。このあとJuan Pabloとのデュオで山形でも公演をしてくれました。Andresの、ジャケットのイメージそのままの、自然の中から流れ出てくるような、奥行きと色彩感のある、映像的な響きが大好きだったので、山形での公演はまさに念願でした。本作ではJuanとのデュオも4曲あり、あの公演が蘇りました。そしてTatiana ParraとVardan Ovsepianも2曲で参加。

(残念ながらアルバムの配信は発見できず。)



☆CAMILA MEZA / Traces

このアルバムで初めて聞いたんですが、突出した才能ですね。チリのサンティアゴ出身。フェミニンで伸びやかな歌声、自身のギターとのユニゾンも素晴らしい。Shai Maestro (p.)、Kendrick Scott (dr.)が参加したサウンドも爽やかで、複雑で洗練されていて、疾走感があって、でも彼女の色彩があります。ギタリストとしても、作曲家としても創造性に溢れていてます。



☆CARMELA RAMIREZ & GABRIEL CHAKARJI / Vida

なんとヴェネズエラのデュオであります。でももうそんな地理的な区別化はもう全く無意味です。このデュオの伸びやかな音楽は、今日のアルゼンチンのモダーン・フォルクローレや、ブラジルのミナス新世代の音楽同様に、圧倒的に洗練されていて、そして自分たちのアイデンティティも決っして損なわれることがない。Carmela Ramirezの端正な歌声と、Gabriel Chakarjiのダイナミックでパーカッシブなピアノ、ドラムや、菅などとのアンサンブルも完璧。



☆JACINTA CLUSELLAS / El Pajaro Azul

ブエノスアイレス出身、バークリー音楽大学を経て、NYを拠点に活動する女性シンガー・ソングライター、ハシンタ・クルセージャスのデビュー・アルバム。フォルクローレの素朴な風合いを残しつつ、その音楽性は幅広く、優美を極める。暖かく伸びやかなハシンタの歌とギターに、ピアノ、ベース、ドラム、そして弦楽器や管楽器を加えたサウンドは、幻想的で繊細である。モダーン・フォルクローレの新たな傑作。



☆JOANA QUEIROZ, RAFAEL MARTINI, BERNARDO RAMOS / Gesto

これも色彩にあふれた音楽。現代のミナスを代表する3人の音楽家、Joana Queiroz (cl.)、Rafael Martini (kb.)、そしてBernardo Ramos (g.)による作品。美しい旋律と暖かいハーモニー、そして少しの混沌と。複雑で高度な音楽であってもそれを感じさせない柔らかな触感。太古の森から聴こえてくる祝祭の様に心地よく神話的な世界観。



☆LOURENÇO REBETEZ / O Corpo de Dentro

São Pauloで活動するギタリスト/作編曲家Lourenço Rebetezのデビューアルバム。プロデュースはArto Lindsay。ジャジーで分厚いホーン・アレンジメント。そこにチンバウやドラムなどを中心としたBahia~Afro-Brasilのワイルドなリズムを組み合わせることによって、とてもとても刺激的で、しかし斬新なサウンドを作り上げています。むっとする様な湿度と熱を感じさせるグルーヴ。



☆TATIANA PARRA, VARDAN OVSEPIAN / Hand in Hand

Lighthouseに続く、TatianaとVerda Ovsepianのデュオ2作目。Tatianaの声はさらに研ぎ澄まされていますが、その可愛らしさも決して失われていません。硬質で縦横無尽なVardan Ovsepianのピアノとで作り上げられる空間は、さらに極められていて、二人の声とピアノだけとは思えないほどレンジが広く複雑で、知的でいて優美です。


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