見出し画像

古作こぎん刺しのバッグブランド「kosaku」について⑤〜図案の選び方とアレンジのこと

古作こぎん刺しのバッグブランド「kosaku」では、江戸時代から明治中期にかけて作られた「古作」と呼ばれる着物などから図案をとっています。
お世話になっているのは、私の師匠である山端家昌氏(デザイナー、kogin.net主宰)の著作『青森市所蔵古作こぎん刺し着物 写真集 コギン』シリーズです。主にはここから図案を選び、バッグにしていきます。

古作着物だけを写真集にした『青森市所蔵古作こぎん刺し着物 写真集 コギン〈1〉オモテ』(著者:山端家昌/発行:イエティワールド株式会社)。タイトル画像も。

選ぶ基準は何かというと、まずは直感的に好きかどうか。kosakuはセミオーダースタイルなので、オーダー主様がパッと見て好きだなあと思う気持ちをできる限り優先します。

「できる限り」と言ったのは、バッグに仕立てる都合上、どうしても「向く・向かない」があるからです。それは見た目上のことではなく、機能的なことで。
手で持ち歩くバッグで、しかも刺繍ものは、どうしても糸をひっかけてしまう危険が避けられません。ゼロにはできないのですが、極力その危険度を下げるため、糸が長く渡る部分がある図案は避けています。使う布にもよりますが、私が現在使っている布では最大7目を目安にしています。

基本のショルダートートや小さい手さげでは、裏に渡る糸の目数も大事です。この2つは、布を強化するこぎん刺しの元々の役割を活かしたいのと、美しい裏模様を見てほしいから、内布をつけません。モノを出し入れするときに触れる裏側は、表以上にひっかけ危険度が高まります。
そのため、図案を選ぶときは、表とともに裏にどのくらい糸が渡るかをじっくりチェックします。
だから、ショルダートートや小さい手さげをオーダーする方が「これが好き!」と言っても、表か裏に長く糸が渡る図案だった場合、上記の説明をして考え直してもらうことがあります。

もう一つの道として、目を小さくアレンジする場合もあります。

私の一番気に入っている図案。写真は、裏模様をあえて表側に使っています。

私が最も気に入っている図案は、青森市管理番号10005、10016(青森県有形民俗文化財です)の古作着物の図案です。まさに先ほど紹介した写真集〈1〉の表紙に使われたもの。
上の写真も同じ図案で、コンセプトブックのメインビジュアルなどにも使っています。これまでで一番多く刺している図案だと思います。
この図案、実はちょっとアレンジをしています。

元の図案では「囲み」と呼ばれる額縁のような部分に、「かちゃらず」という名前の菱形の模様を使っているのですが、これが7目7段のかちゃらず。昔の着物は布目が細かく糸も細かったので、7目のかちゃらずでもほとんどひっかける心配はなかったと思いますが、今私がバッグに使っている布は布目がずっと大きいので、このままではちょっと心配です。
なので、私はかちゃらずを5目5段に書き換えて刺しています。

(左)元の古作着物の菱形のかちゃらずは7目7段。(右)私はこれを5目5段に小さくして刺しています。

そうしたアレンジは加えているものの、全体として見た印象は元の図案と変わらないはずです。こぎんを刺す方であっても「目を小さくしてますよね」と指摘されたことは一度もないくらいです。
アレンジをする場合は、元の古作図案と同じものだと見える域を超えないように、と心がけています。

これからの課題は、使える図案を増やせるようアレンジ力を磨くことです。オーダー主様が「これ!」と選んだとき、できるだけNOを言わないようでありたいなあと思っています。

さて、一方で、クラッチバッグとポーチは少し条件が違ってきます。これについては次回。


Instagramでもkosakuを紹介しています
kosakuの商品概要やオーダーについてはHPをご覧ください

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?