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若い人たちに期待しかない

 YouTubeかぁ~・・・面倒くさいな。

 ネットで検索をして(候補に)YouTubeがあがってくると、正直そう思ってきた。完全にテキスト(文字)から情報を収集するタイプなので、動画を観たい気持ちにならないと同時に、「あああ!早く結論を教えてくれぇぇぇ!!」と悶えることになる。雰囲気など込みで全体を楽しむとか、過程を楽しむとかいうことができないつまんないヤツには全く向いてない媒体なのだけれども。今の子どもたちが夢中になって楽しんでいるということはそこに何か大きな魅力があるのだろうし、子どもたちがどんな世界を見ているのかなという関心は常にあった。でも私の脳の特性と相性が悪いもんだから積極的に観てみようという気持ちになれないまま月日が経ち(きっと10年くらい過ぎちゃってるんだろうな。YouTubeっていつからあるのー?)、ただ一つ心掛けていたのは「相性が悪いっていうだけのものを、経験もせずに”そんなもん”とか(それを好きな子どもに向かって)言ったり、むやみに規制や管理をしないようにしよう」ということだった。私が大好きな本を「そんなもんばっかり読まんときな。」なんて言われたら、悲しいしカチンとくるもんね。「本は教育的に善で、YouTubeは悪。」とテキスト依存勢は言いそうだけれども、そもそもそんな判断(比較)ができるほどYouTubeを観ているのか?ギモンだし、フェアじゃないなと思う。

 そんな私がYouTubeを観てまわるようになったのは、やはり子どもたちの学習によい動画がないか知りたかったからである。はじめは教育系YouTuberさんの単元ごとの動画をみてまわっていたのだけれども、その内にどんどん脱線していき・・・つい最近ひたすら観てゲラゲラ笑って楽しんでいたのは「QuizKnock」という、東大生たちのクイズチャンネル。東大生たちの知的なチャレンジがどれも面白く、かつ改めてものすごく勉強になった。そのチャンネルから学びにつながるほかのチャンネルの動画にたくさん辿りついたので、「わー、なんか世界が広がったなぁ♡」とホクホクした気持ちでいる。今週末はムスメといっしょに「GENKI Labo」の元気先生の科学実験zoomの会に参加予定である。

 さらに「あつ森」どはまりの中で、「そういえばヒカキン(さん。以降敬称略)ってあつ森の実況やっているのかな?」と思って検索したところ・・・動画あった~!ヒカキンて、ほんとに私何にも知らなかったのですよ。子どもたちに大人気っていうことだとか、子どもたちが「これみて」って勧めてくれるヒカキンの動画をちらりと見たことはあった。だから突然の休校になり、人と人との距離を保つことが言われるようになった時に、「子どもたちに人気のヒカキンは何か子どもたちに向かって語りかけてくれているのかな。」と気になって、初めて自分から動画を見に行ったこともあったが、知っているのはそれだけ。(ちなみに、ヒカキンは自分の言葉で子どもたちに語りかけてくれていた。よく知らないながら、どこぞの国の首相が子どもたちに全く語りかけていない状況と比較してすごいなと感心した。)

 そうしてあつ森の実況動画を観たのだが、すんごく面白いんだなこれがまた。脳の特性上、再生スピードをだいぶアップにして観たのだけれども(全然問題なく観れることを知って喜んでいる)、あははあははと笑っているうちに動画終了。あつ森実況動画は(私の知る限り)3本くらいしかなかったのだけれども、マジで少なくて救われてマス。もしたくさんあったらえんえん「あははあはは」で、大量の時間が溶けていってしまっただろうから。いやそれが悪いわけじゃないんですけど、大人は(子どももね)時間の使い方に気を付けねばならぬので。

 いやしかし、「(YouTubeなど動画を)好きな人に向かって”そんな(くだらない)もん”と言わないでいよう」という自制はあったのだけれども、正直なことを申し上げれば頑張ってそうしてたところがあり、心の中ではぼんやり「知性や品のない一般の人が、おもしろおかしく大声で何かを言っているものなんだろう」という勝手な(けっこうヒドイ)偏見があった。知らないでいるということは、ひとえに怖いもんだと改めて思う。もちろんまぁ「いかがなものか」という動画だってたくさんあるのだろうけれども、少なくとも私が今まで観た動画はそんな偏見を吹き飛ばしてくれた。本だろうと動画だろうとなんだろうと、媒体に拘わらず品や知性のある人はあるし、ない人はないしという、ただそれだけのことなんだな。(品や知性はなければならないのか?その価値基準は妥当なのか?というご意見もあろうかと思うが、私はそれらを求めている。ほかの方はどうか知らない。)

 そんなこんなで今更YouTubeを観まくって、あつ森で離島ガチャに燃え(ちゃちゃまる狙いです!)、鬼滅に涙し作品完結のニュースにどよめき・・・と、ムスメ氏ほか若い人たちの見ている世界の一部をシェアさせてもらう日々の中で、「若い人たちに、信じて託したい」という気持ちが以前よりも強まった。このコロナ禍でわが国の惨憺たる現状がどんどこどんどこ明るみに出て、そりゃあもうガッカリすることの連続・・・でもこの状況を作ってきたのはほかでもない自分を含めた大人たちなわけで、もうこの構成員だけでは自浄さえ期待できない(とコロナ禍で思うようになった・・・諦めてはいけないと思いつつ)。だから自分自身の価値判断で若い人たちをジャッジしたり、教え導くようなことは到底できんということを改めて認識して、若い人たちにパートナーになってもらわなければならないのだと思う。我が子だって、同じである。「YouTubeばっかり観てないで課題をちゃんとやれ。」とか「ダラダラしてないで目標を持て。」なんていう言葉(思い)は、「果たしてこの、こなすだけのために出された課題の方がYouTubeより意味(価値)があるのか?」とか「今の社会がこのまま5年後、10年後にあるのか分からない中で目標を立てたってその通りにいくのか?」という自問に変えるべきなんじゃないかと思うようになった。

 子どもに「どうあるべきか」を押しつけるより、子どもが楽しんでいたり夢中になっているものを「それってどんなものなの?」って、子どもから学ぶほうがいいんじゃないかなと。変化がとんでもなく早いこの時代には、とりわけ必要なことなのだと思う。

 そんなことを考えていたら、昨日のニュースでヒカキンが医療従事者を支援するため「コロナ医療支援募金」を設立し、1億円を寄付したということを知った。すでにご本人による動画も公開されているのでそれも見せてもらったのだが、「時代は確実に変化しているな。」と希望しかなかった。ヒカキンのこの行動に対して、個人の寄付ではなく政治的に解決すべき問題なんじゃないのとか、思惑があるんだろうとか、いろんな意見があるとは思う。私もヒカキンのいくつかの動画しか観ていないから判断できない部分はあるんだけれども、それでもとにかく「自分が経験したことをもとに」「自分に何ができるか自分で考え」「自分に今できることをしたい」「今の自分があるのはYouTubeやネットのおかげ」「だからその力を信じている」「協力してほしい」という語りかけは、本当にフラットですっと入ってきた。私やそれ以上の年齢で成功している人にみられがちなオラオラな感じもなく(1億円出すぜ、どや!みたいなことがなく)、自分の考えを押しつけるでもなく、でも何をきっかけにこの行動に出たのかをきちんと話し、聞いてくれている人たちを信頼して、協力を呼びかけられるって・・・すごいなと思う。それがたとえ戦略だとしても、何の問題があるだろう。彼が呼びかけている先には、本当に多くの子どもたち、若者たちがいるのだ。「自分にできることは何か真剣に考え、真摯に協力を依頼する」という姿そのものが、彼の動画を楽しむ人々に伝わることが大事なのだ。国の長が、それをしてくれたか?学校が、職場が、そんな振る舞いを見せてくれたか?単なる「形」さえ、示してくれなかったじゃないか。私は、そのことに一番傷ついたんだよ。

 そしてもう一つ心動かされたのは、彼は寄付を呼びかけるだけではなく、「どうしたら寄付ができるのか」動画で本当に分かりやすく教えてくれていた。寄付できるサイトを動画上に示し、一方で画面を割って自分自身もうつし、丁寧に一つずつその工程を説明してくれているのだ。分かっている人、できる人にとってはまどろっこしく感じるかもしれないが、そういう人は動画後半を見ないか飛ばせばいい。でも様々な事情でそういう作業が苦手な人たちはたくさんいるし、そういった人たちが彼のアクションにコミットする機会を保障しているというのは、彼がどこを向いているのか、ということを端的に示しているように感じた。できる人だけでいいよ、じゃなくて、思いがある人にコミットしてもらえるように、とりこぼさないように。そんな願いを感じずにいられなかった。

 たった2枚のマスクさえいまだ届かないようなシステムを作り上げてしまった私たちの世代にはできないようなことを、きっと若い人たちが新しいやり方で取り組んでくれるはず。もっとこうしろああしろなんていう(有害でしかない)管理の手を緩め、新しい力を応援したいと心から思ったコロナ自粛期間だった。

 ・・・ちょうどタイムリーにTwitterでオバマ前大統領が若者たちに、「私たちの言うことは聞かなくていい」ということを語りかけている動画が流れてきたのだけれども、まじそれな!この期に及んでどの口で「もっとちゃんとせい!私たちの言うことを聞け!」と言えるのか・・・自戒をこめて、この記事を書いておくことにした。

※ちなみに冒頭の写真は、科学コミュニケーターでお笑い芸人の黒ラブ教授のzoomでのワークショップで、ムスメ氏が作ったテンセグリティ構造の物体。とても楽しいワークショップでした。なんでもオンラインがいいわけじゃないけれど、地方住みとしては今まで参加を諦めてきた講座やワークショップが数えきれないくらいあるわけで、オンラインで参加できる素敵な企画が増えたことを嬉しく、ありがたく思っている。

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