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菜食かつニンニクも玉ネギもキノコも禁じられたジャイナ教徒はどう料理にうまみを出すのか

ジャイナ教の食戒律では、肉や魚や卵といった動物の命はもちろん、気持ちを掻き立てるニンニクや玉ネギも、菌から生まれるキノコすらも使えない。根底にあるのは「徹底した不殺生」だ。
しかしそうすると、うまみ食材や料理をおいしくする食材がとことん使えない。どうやって料理にうまみをを出すのか。

※本文での「うまみ」は、甘味や酸味と並んで五味に数えられる「うま味」のことではなく、「おいしさの素」くらいの緩い意味で使っています。

ニンニクや玉ネギの代わりの”悪魔の糞"

一つ目のアイテムは、ヒング。強烈な匂いを持ち、悪魔の糞とも言われるスパイスだ。通常インド料理では豆や芋料理にしか使わないけれど(間違っていたら識者の方教えてください)、菜食インド料理では多用し、特にジャイナの人々はキャベツにも青菜にも何にでも使う。油で加熱すると、硫黄臭がニンニクや玉ねぎのような味わいを出し、うまみを下支えする。
ほんの少量を時々使うくらいのものと思っていたけれど、スタメンのスパイスだけを入れるマサラボックスに入れている人がいたのは驚いた。

ここで疑問だったのが、ニンニクや玉ネギの代わりが務まるならば、ヒングも同じように気持ちを掻き立てる(tamaik)んじゃないの?ということ。しかし誰に聞いても、ヒングは大丈夫だという(使っている人に聞いているんだから当たり前だ)。
しかし調べていると、「仏教ではニンニクや玉ネギと並んで五葷のひとつとして禁止されている」という情報もある。インド菜食ではOKだけれど仏教ではだめ。微妙な線だ。

当たり前すぎて書きそびれたが、スパイス全般自体も、料理をおいしくしてくれる素晴らしい調味料だ。

何にでも砂糖

もう一つは、砂糖。砂糖は苦味や酸味を抑え、コクを出してくれる働きがある。
ジャグリー(粗製糖)のことも白砂糖のこともあるけれど、ダール(豆スープ)にもサブジ(スパイス野菜炒め)にも砂糖が入る。菜食者の多いグジャラート州の料理は、なんでも甘いことで知られている。

甘い豆のスープ?と思うけれど、最後にレモンをひと搾りすると、辛甘塩酸苦みが時間差でやってきて、すごくおいしい。

ヘルシーなのか?


ところで、菜食と聞くとヘルシーそうだけれど、油はやっぱりたっぷり使うし、砂糖はふんだんに使うし、ジャイナ食は一体ヘルシーなのだろうか。

わからないけれど、今のところは、トータルでヘルシーなのではないかと思っている。

肉や魚を食べないし、外で買うものは素性がわからないからと家庭料理を好むし、それに根本的に「食べ物は生きるためのエネルギーだから無駄なものは食べない、無駄に食べすぎない」という考え方があるのだ。日没後に食事をとらない、前日の残り物を食べないといったルールは、消化や衛生観点からの示唆もある(ただし現代社会ではすべて厳格に守っている人ばかりではない)。

また、植物性ばかりで体がカサカサにならないかと最初は思ったのだけれど、乳製品はゆるされている。ギー(精製バター)は良質な脂肪だし、チャイのミルクもダヒ(ヨーグルト)もパニール(チーズ)も、乳製品はけっこうしっかりとっているのだ。

健康観点からジャイナ教に注目している人もいる。

話がずれたが、肉も魚もニンニクも玉ネギもキノコも使わなくても、おいしい料理は作れるのだ。


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