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タイ山岳部、山道の食べ放題パインの味

世界各地様々な家庭の台所を訪れてきたが、「少数民族」という響きには神秘的な近づきがたさがあり、遠い存在のように感じていた。なので、知人の紹介で東北タイの少数民族 アカ族 の村を訪問することになったのは、格別にうれしいことだった。

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数日間を一緒に過ごしたのは、縁側が楽しいおじいちゃんおばあちゃんの家。おじいちゃんはいつもこの縁側で竹細工をしていた。

毎日の食卓は、山から採ってくる野草が中心。水辺や林に生える様々な野草を匠におばあちゃんが料理して、緑一色なはずなのに色とりどりだ。

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野草をとりに山へ

朝10時。「山に行くよ」と出かける72歳のおばあちゃんに、私もついていった。力強い足取りで慣れた道を進むパワフルばあちゃんに置いていかれそうになりながら、山二つ越えた先まで必死でついていった。

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汗だくでヘトヘトになったころ、パイナップル畑を通りすがったら、そこらじゅうに"パインの頭"が投げ捨てられていた。頭に混じって、時々完熟のパイナップル本体が落ちている。

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蜜色になったパインが地面で温められて香り立ち、目をそらそうと思ってもそらせられない。きれいなパインを選り好み、スイカのようにかじりつく。

太陽味のジュースだ。もう一つ。青空の下で完熟パインの食べ放題、贅沢だ。

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パイン畑の過去

しかしここにパイン畑が広がっている理由を考えると、甘いパインも少し苦くなる。

ミャンマー・タイ・ラオスにまたがるこの地域は元々ケシを栽培していた。しかし1950年代、国際的な麻薬規制の変化で生産が急増し、「ゴールデントライアングル」と呼ばれる世界最大の麻薬密造地帯へと発展した。

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麻薬が密造されるところには、権力が育つ。この地でも、アヘン中毒や麻薬輸送を担うシンジケートの存在が問題になり、政府の旗振りで他の換金作物への転作が進められた。コーヒーや茶などの作物がある中で、この村ではパイナップルが選ばれた。

たまたまあった伝統(ケシ栽培)が不運にも注目されてしまい、国際的な決まりごとや国内政治に翻弄された歴史がなかったら、ここにパイナップル畑は広がっていない。そう考えると、食べ放題パインを喜んでよいものか、なんとも息が詰まる思いがした。

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ちなみに、アカ族の人々は日常的にパインを食べない。売るために育てている作物であり、彼らの暮らしの中にあるものではないからだろう。
おばあちゃんはパイン畑を素通りし、小川のせせらぐ音の方に向かう。沢に到着して、ばあちゃんが小さい頃から食べている野草を摘みながら、なんだかほっと生きた心地を取り戻した。


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世界各地の家庭の台所を訪れ、一緒に料理をしています。そこで見つけた「料理や食卓の楽しみ方」や、料理から見える社会文化背景を伝えています。学校で出張授業したりも。訪問国60カ国以上、クックパッド。 過去記事はこちら:https://medium.com/@misatookaneya
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