ジャイナ教地区のスーパーは、肉が一切買えない
ジャイナ教徒が多い地区のスーパーは、肉や魚製品が一切売っていない。彼らの多くが、同じ店に肉や魚が扱われていることを嫌い、「ピュアベジなものだけを売っている店で買物したい」と考えるからだ。
マヨネーズは卵なし、ゼラチンも植物由来。
卵使用のマヨネーズや豚由来のゼラチン(いわゆる普通の品)を買おうと思うと、一番下の右端にひっそりある。
冷凍食品の棚があったと思ったら、中は様々な形のフライドポテトとベジバーガー。
卵は、食べる人が一部いるので、ものすごく隅の方の暗い一角に肩身狭そうに置かれている。乳製品はOKだけれど肉は論外。結果冷蔵コーナーがとても小さい。
商品パッケージについているマークで、四角の中に🟢があるのがベジで、🔴がノンベジ(肉魚由来品使用)なのだけれど、あらゆるお菓子や食材に🟢がついている。
卵の他にも境界領域はあって、「厳格なジャイナ教徒は食べないけれど許している人もいる」というものは売られている。
例えばハチミツ。ハチの巣を壊すので、ヴィーガンと同様の理由でだめだけれど、ベジ/ノンベジの区分だとベジになる。緑マークがついて売られている。
野菜売り場に行くと、じゃがいもを始めとする根菜類、にんにくや玉ねぎは、堂々と並んでいる。「私は食べないけれど、ベジの範疇だからいやじゃない」ということらしい。ノンベジ食品を同じ店で扱われたくない理由は、気持ちが穏やかでないから見たくない、ベジ食品の浄性が保たれない、など人それぞれでけっこう感覚的。
ポテチ棚の横にはバナナチップス。これはジャイナの定番スナック。
チョコケーキは、卵やイーストなしで作れるキットがある。ちなみにインド菓子はほとんどオーブンを使わず、家にオーブンがある家は少ないので、チョコケーキケーキキットも鍋で蒸して作る仕様。
その他にも、豆類を使ったベジスナックがたくさん。他にはナッツやドライフルーツも豊富だ。
ここまで徹底されていると、ただただすごいなと驚くと同時に、同じ街に住んでいても生活が交わることはないんじゃないかとも思えてくる。ノンベジとの接触を避ける結果、食が分断を生んでいるというか。
ジャイナ教の人たちと話していると、「付き合う人を宗教や生活スタイルで選ぶことはない」という。少数派の集団だけに、それはそうなのだろう。一方で、住む地区は分離している。ジャイナ教徒はお金持ちなので、ジャイナ寺院付きの高級マンションを建てたら8割はジャイナ教家庭が入居する。マンションでなくても、毎日寺に通うので寺の近くに必然的に集まるようになる。その周辺の店は肉や魚を扱わず、ジャイナ地区ができていく。KFCは商売にならないので撤退し、ベジワッフルの店が人気になる。
食はインフラというけれど、住む場所を規定し、小さな社会をも作っているのだ。
いただいたサポートは、 ①次の台所探検の旅費 または ②あなたのもとでお話させていただく際の交通費 に使わせていただきます。