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わたしって汚いのかな

オリンピック前までは月に一度上京していたの。南インド屋のおっかさんのもうひとつの顔があって、ご希望の方と70分間お話をしたりエネルギーの具合を見て調整をするという名前のつけられない仕事をしているの。

東京で知らない人に「札幌から来たんです」と言うと一瞬怯んだ顔をされるの。

あ、どうしてよく知らない人にどこから来たかと説明するのかというとね。実際にわたし会った人はわかると思うのだけれども妙に日焼けした顔と変に派手な服と髪の毛で「いったいナニジンなんだ」と思われることが多くて「どこ(の国)から来たんですか?」ってよく聞かれるわけよ。で、「札幌です」っていうと(あの病気の感染者多いんだよね。このオバちゃん大丈夫かな)って顔されちゃうのよね。

でね、札幌に戻って来て友人に「上京していたの」と言うとやっぱり一瞬嫌な顔されるのよねえ。(東京はあの病気多いのよね。操ちゃん感染してるんじゃない?)ってことね。まあ仕方ないか。なんとか事態でなんとか宣言でフヨウだかフキュウだかだもんね。

あーあ、わたしって汚いって思われているんだよねえ。

子供同士の悪口や意地悪でバカやブスやノロマビンボーお前の母ちゃんデベソなど色々あるけど汎用性の高さでは「汚い」が一番じゃないかな。「なんとか菌つーけた!」ってバイキン扱いするとかね、エンガチョ!っていうのは北海道弁かな。汚い人に触ったときにいう言葉。みんな汚いもの嫌いだよねえ。いやあわたしだって嫌いだけどね。

話逸れるけど大正、昭和の頃は結婚前に男性と深い仲になっちゃうことを「汚れた娘」と言ったんだよ。許婚者がいる若い娘さんが押し込み強盗入られてにお金のついでに貞操まで奪われたら「君は汚れている」って破談になって嘆きのあまり身投げしちゃうんだよ。きゃー怖い。

いやあわたしが汚いのは貞操の問題(これは岩より硬い)じゃなくてバイキンに感染しているかもしれないからだけれどね。

まあ、上京して2週間経つと、なんていうの?保護観察期間終了っていうの?「操ちゃんそろそろ会わない?」なんてお誘いが来るんだけどね。まあだいたいは断るんだけどね。

仕方ないのよね、みんな自分と自分の家族を守りたいから汚れている(かもしれない)操ちゃんには会わない方がいいよね。

あーあ、自分の意思で上京しているんだから。個人セッションはただひとつのわたしの天職だと思っているんだから、納得ずくの結果なんだけどねえ。ん?あれあれ?思い出しちゃったのよ。わたしが汚いって疎まれてしまった過去を。ヒー!思い出さなければ良かった。

あれは50年前。小学一年生のみさおは初めての検便をしたの。ウンコを割りばしでマッチ箱に入れて学校に提出してそれで終了ね。ところがしばらくして担任のスガノツネオ先生が優しく「八島さんのお腹に虫がいたからお家に帰ってからこれを飲んでね」と赤いフィルムに包まれたちょっと可愛らしいお薬を渡してくれたの。

「ふーん、そうなんだ」と家に帰って母と姉に「あのねわたしお腹に虫がいたからこのお薬貰っちゃった!」と赤いお薬を見せて自慢気に報告すると目の玉が飛び出るほど叱られてしまったのよ。

普段から汚くしているからお腹に虫が入ったということなのよ。こんなことお父さんには絶対に秘密だからね!よその人に言ったらダメだからね!なのよ。姉に至っては、妹のお腹に虫がいたことを学校の人に知られたら恥ずかしい!スガノ先生はわたしのことも汚いと思っている。と。こんな妹は恥ずかしいのね。

50年経ってから考えたら、拾い食いも買い食いもしたことなくて、家のなかでお絵描きとお人形遊びしかしないんだもん母親が作った食事に何か入っていたんじゃないの?と思うけれどもね。って言い返すには遅い。50年遅い。

ちなみにこの一件があってからわたしが内気になったとか神経質になったとか親にたいするわだかまりが出来たってことは全然ないわね。あはは。性格明るいのよね。大したことじゃないわよ。

でもね、これが50年後のいまにあてはめると検便がPCR検査で蟯虫発見が陽性ってこと?

家族に蟯虫保持者が出たってことを怒って恥として世間から隠そうとすることがそのまま今の小学生にも起きているのだろうか。

それどころじゃないか。パラなんとか見学のためにいっぱいの小学生が検査をするとかなんとか報道されているから50年前のわたしみたいな子供が量産されているのではないだろうか。しかもスガノツネオ先生みたいにこっそりお薬をくれるのではなくてバレバレなのよね。八島さんのせいでうちのクラスは観戦できなくなったんだ!って肩身狭いだろうなあ。


でも「あれ、わたしって汚いと思われているんだあ」って思っちゃう出来事はその後もあってね。え?何かって?いやあああ、両親の間でわたしの肌が黒いのは母がお風呂でちゃんと洗っていないからだってことになってね。どうやらそれで揉めたらしいのよ。「あなたの肌が黒いとお父さんに怒られるから」って毎晩お風呂で石鹸とナイロンタオルで強力にこすられていたの。洗って白くなるのは牛蒡だけよ。と、いうか庇ってよ!お母さん!

まあこれは家庭内で起こる人種差別ってことでしょうかねえ。

しつこいけどそのせいで内気にも神経質にもならなかったけどね。

でもねでもね、わたしは「汚い」って思われる辛さはちょっとわかるわよ。いまもどこかの小学校でナントカが陽性とか身内に発症者がとか、あと生まれつきの色黒でバイキン扱いをされて悔しい思いをしている子供がきっといる。負けるな!感染対策は医者や親御さんやその他のエライ大人に任せていいから。色黒だって80歳になったら老人斑が目立たなくて良かったなあって思うわよ。多分だけれど。

「汚い」って言われても鼻で「フン!」って吹き飛ばすのよ!わかった?

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