目黒のおじさん

前述の目黒の親戚の続きである。
目黒の叔母さんが亡くなった数年後、配偶者であった叔父さんが一人で暮らしていたのだが、孤独死をした。死因はよくわからない。葬式は近所でやってくれ、区で無縁仏の墓に埋葬する事までやってくれたようだ。
我が家に区の職員から連絡があったのはそれから少し後のこと。

同じ都内に住む親戚で遠縁とはいえ、他に身寄りがなかったようで、特殊清掃というか、遺品の売却と家の明け渡しの立ち会いがあった。古い下町然とした場所にあるアパートだったような記憶がある、とは当時パートの休みで自由だったので、立ち会いに行った母の言葉。

遺品の中にこんな物があったので、と渡されたのは、一冊の黒革の手帳。メモや何かが色々挟まって分厚かったそうだが、何気なく開いたページが母の目に留まった。
一行しか書かれていない見開き。
「5人連れて行く」

直感的に、これはどこかのお寺か神社で供養しないといけない、と感じた母は、立ち会いが終わったその足で、近所にあったお寺に持ち込み、預かってもらったという。結局それ以上は何も見てない読んでないけど、
「5人連れて行く」と見開きで書かれてたのは気持ち悪かったと言っていた。

そこまで遠い記憶の中で、詳細を聞き出したり思い出させたりしたのだけど、結局、お寺の住所も親戚の家の住所も覚えてないという事で、話はここで終わるのだけど、謎だけが残った話。

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