中国の酒造

中国人留学生だった人に聞いた話。
彼は、若い頃に地元の酒造で働いていたという。
伝統ある古い酒蔵だったというが、何代続いているかわからないくらい古いという事しかわからないらしい。
古いだけに、変わった酒や醸造の仕方をしていたという。

例えば、固形酒。
一般に固形酒というのは、壺に穀物と麹を入れて発酵させ、呑む時に水を入れ、大勢で壺に竹筒やストローを入れて、めでたい時やお祭りの日に呑む物である。
彼の所の酒造で作っていた固形酒は、竹筒に果物や穀物と一緒に酒麹を入れ、発酵させてから乾燥させ、お茶やお湯に溶いて呑むものだという。

また、発酵蔵という物もあった。
そこには、幅1m長さ2m深さ2mくらいの穴が、5~8個均等に掘ってあり、そこで酒を造るという、こちらも珍しい酒の造り方ある。
天然土壌の酵母が酒に複雑な味を付けるのだそうだ。

何代か前の社長が、若い職人に恋をした。BLってやつである。
社長は、自分の親指を切り落とし、それを固形酒に入れて呑ませた。固形酒に自分の体の一部を入れ、相手に呑ますという事は、呪術の一つである。
だが、そこまでしたのに若い職人は自分に思いを寄せてくれなかった為、首を絞めて殺してしまった。首を絞めた後に、社長は彼の遺体を酒造の発酵蔵の穴の中へと沈めた。

若い職人が行方不明になってからしばらくは、「仕事が辛くて逃げたんだろう」とか「社長があからさまに言い寄るからそれが嫌で逃げた」というように噂されていたが、そのうち「深夜の発酵蔵の穴の一つの側に立って出る」という噂が出始めた。

ほとんど全員が発酵蔵で見たという事と、実際に見て怖くて逃げ出す職人が相次いだ為、当局がその発酵蔵を調べたところ、一つの穴の中から死蝋化した死体が発見されたため、社長は逮捕されたという。

今も、その発酵蔵で酒が造られているという。

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