見出し画像

#6 夏に聞きたい『後ろめたい夏』プレイリスト

アローラ、岬サニーゴです。
もうすぐ梅雨も明け、本格的な夏の兆しが見え隠れしていますが、皆さんお元気でしょうか?
自分は最近かなりゴキゲンなアロハシャツを購入した1喜びと、就活関連での100憂いを合わせたぐらいの気分で生きています。

こんな気分の時は夏の明るい曲よりも仄暗い曲を聞きたくなりますね。
もっといえば開放的な夏なのに踏み出せない女の子の曲を聞きたくなりますね。
あるいは真夏の熱さに浮かされた陽炎のような非現実を主題とした曲を聞きたくなりますね。
さもなくば夏のジメジメした夜を連想させる背徳的で淫らな曲を聞きたくなりますね。
一周廻ってこれらの曲を引き立てる陽の夏曲も聞きたくなりますね。

ということで自分が最近聞きまわしているプレイリストを紹介します。

ゼリーフィッシュ

ゾンビランドサガの、主人公サイドではないユニット『アイアンフリル』の曲で、最初聞いてからなんどもリピートしています。

夏の砂浜を感じさせる華やかなサウンドに、爽やかで切ないリリックが乗せられていてなかなか『後ろめたい夏』を表現しています。
開放的な夏なのに踏み出せない"無邪気になれない僕"の感情がとても美しいと感じていて、

君と夏の太陽 (浴びて) どこまでも深く (深く)
恋におちていく 泳ぎ疲れてみたくなる
ふたりでサカナになって 海の中泳ぎたい
時を止めたくて 思わず息を止めた 

などの歌詞で満面の笑みになれます。

なにより、わざわざ一回り長くしたサビで『諦め』の歌詞を挿入しているのが絶妙に未練がましくて、本当に夏に聞いて気分が良くなります。

あと少しだけ (もう少しだけ) 近づいてみたいけれど
触れたら消えてしまう 恋するゼリーフィッシュ

ちなみにアイアンフリルというユニットの名前はめちゃくちゃ気に入っていて、彼の世界ではトップアイドルユニットの座に降臨していることも踏まえて、自分はこのユニットに色々な想いを一方的に託しています。何かで妄言を吐きだしてみたいですね。

カン違い Summer Days

お次はときめきアイドルprojectからこのナンバーです。ときドルは内容を1mmも知らないので然るべきタイミングで全力で学ばせていきたいと思っております。

この曲の内容がかなりゼリーフィッシュに似ていたのが、自分がこの『後ろめたい夏』プレイリストを作るきっかけでした。少年を保てなくなった"僕"と純粋なままの"君"

僕らの関係が 揺れてる

という象徴的な歌詞。また

友達のセオリー
ひた隠すジェラシー

という意味深なワード。そして曲名の『カン違い』。青くて苦い、かけがえのない夏のエピソードがこの曲に凝縮されています。

あとこれは解釈次第なんですが、2番の歌詞全体がほんのワンシーンの複雑に動く心象を事細かに表していて、二人の関係が一瞬で壊れてしまうほど不安定になってしまったんだなと思うと、ふたつとない光り方をする繊細なガラス細工を見ているような気になって大変気分が良くなります。

蝉時雨 頭上で言葉遮った

という歌詞の蝉時雨が実際の蝉の鳴き声なのか脳内の叫びなのかは分かりませんが、この一文が二人の関係を決定づける分水嶺となっていることが非常に美しく感じます。

14歳のサマーソーダ

ナナシスからはまずこの曲。ナナシスといえばその執拗なまでのリフレインから夏の季語としても使用されることで知られていますが、その中でも夏と縁があまりなかったサンボンリボンの曲です。

ちなみにこっちのジャケ絵がめちゃくちゃ好きです。

画像1

前2曲が子供から大人になる瞬間を歌った曲だとするならば、こちらはその当時を俯瞰して見ている立場の曲と捉えられます。

時が経っても揺れたまま

という歌詞には勝手に前曲との関連性を見出したくなりますね。

君に言えなかった言葉は
まだ消えないで夏が来るたび
泡のようにフッと湧いてくるよ
別に難しく考えた末じゃなくて
胸騒ぎとか向日葵とか
いつのまにかもう消えていたんだ
抜けるような青空の下
いつまでも ロンリー・フォーティーン・ソーダ
忘れないよ 君だけが夏だった

など歌詞が表している事象を、前2曲にエモを感じた読者さんなら手に取るように理解できると思います。

上手く説明できないんですが、この曲が歌っている感情は、自分が過去の甘酸っぱい青春(実在しない)に想いを馳せている感情に似ている気がするんですよね。つまり、この曲はある意味ありきたりな青春でもあり存在しない青春でもあるということで、ある意味メタ的な感情も歌われているということです。
14歳を超えたサワラ、14歳のカジカ、そして14歳はまだ見ぬ未来なシンジュ、この3方向からの視点がそうさせているのかもしれません。まあ、解釈は自由なので。

曲単体ももちろんいいのですが、この曲を歌うサンボンリボンという三姉妹ユニットの背景や関係性を考えることで、様々に解釈が進みます。ナナシスのエピソードは本当にいいので、興味がある方は是非始めて見てください。

ひまわりのストーリー

ナナシスの同じアルバムからもう一曲、Le☆S☆Caの曲です。
レモンスカッシュが由来のこのユニットは『爽やか微炭酸系の3人組青春ユニット』と紹介されており、すでに『後ろめたい夏』という要求定義をほぼほぼ満たしています。そのなかでも飛び切り夏を感じるナンバーを持ってきました。

ちなみにこの曲のジャケ絵もとても良いです。

画像2

この曲は前曲の郷愁的側面を強めたもので、典型的な夏の田舎のオネショタを表しています。少なくとも自分はそう感じています。

田舎の果てしなく高い青空とそよ風になびく草原を感じさせるイントロから始まり、抽象的で美しい歌詞が流れるように紡がれていて、全日本人が持っている存在しない故郷の幸せな想い出を想起させます。ぼくのなつやすみの世界観。"君"ではなく"キミ"なのもボクくんを連想させる要因かもしれません。

そんな風情の中で

キミはいつも笑って
ジョークを言って
木漏れ日の中 猫みたいに
真実をくれるから
かわりに僕のすべてをあげる
風を掴んで
夢を刻んで
大人になんかなるなよだって

なんて誘惑めいた歌詞が降り注いだ日にはもうどうしようもなく田舎に囚われてしまいます。

炭酸要素が無く極めて甘いこの曲ですが、現実感が無さすぎるせいで現実逃避を続けている『後ろめたさ』が絶えず付きまとってくることから、本プレイリストにランクインさせていただきました。
普通にLe☆S☆Caの曲として聞いた場合もなかなかいい歌詞をしているのですが、このユニットに関しては偉大な先輩が身内に居ますので詳細は語らないことにします。ちなみにアイドル的観点で見ると次の歌詞が異様にデカくて後ろめたくて、どうしようもなく頭を抱えることになります。

約束だよ
どこにだって行かないよ
ふたりで行くんだ
太陽などなくたって
この花に誓うよ

アイカツ!○○話のこと?

余談なんですが、ナナシスの花の名前を冠した曲は大概後ろめたいので聞いていて気分がいいです。よければ聞く曲の参考にしてみてください。

アイノウ・アイノウ

続きましてRe:Stageのユニットオルタンシアからはこのソロ曲です。画面右側の金髪の娘のソロ曲で、なかなかに激しいサウンドをしています。
夏曲かと言われると割と微妙なラインではありますが、まだまだ梅雨も終わらなそうなので現役かなと感じています。

歌詞はギターサウンドに負けず劣らずな重さをしており、"あなた"への大きな大きな感情がひしひしと伝わってきます。2人ユニットというものは2人のバランスが難しいとされており、特にこのユニットの2人は非常に特殊な関係性を持っているため、もうね......

今宵 濽濽濽濽と降る雨と
遠く 何何何何度も鳴る警報と
そして段々段々と嵩むこの想いも
あなたは見ようとしないのでしょう?
アイノウ・アイノウ

アイノウ・アイノウ......

本プレイリストにおいてこの曲は、ひたすらに重い負の感情を浴びることでいったん頭を冷静にさせる役割があるのかもしれません。

さよならレイニーレイディ

またしてもナナシスの楽曲です。SiSHという少し年齢の高めのカノジョをテーマにしたユニットの曲で、ジャケ絵はこちらとなります。

画像3

こちらも今までのナナシス楽曲同様ユニットの曲、特に前曲との関連を踏まえての解釈をするととても気分が良くなるのですが、例の如く偉大な先輩後輩が身内に居ますので詳細は語らないことにします。

今まで紹介した歌詞では"踏み出せない"というテーマが多かった一方で、この曲は完全に"別れ"の曲を表しています。ただ、その”別れ”についての感情が、梅雨が終わり初夏の兆しがくる季節感に対し非常にジメジメしたものであることから、今回この『後ろめたい夏』プレイリストに無事ノミネートされる運びとなりました。

街はきっと戻れたはずの
昨日を引き換えに光って
重ねた嘘やふたりの距離が
雨になって消えればいいと
本当はずっと祈ってたんだ
もう届かないあの日に

この辺りの歌詞から、個人的には比較的後ろめたい理由で別れることになったと思っているんですが、どうなんでしょうか。概念的な歌詞が多いため色々と理解しきれてないところが多いです。
といっても完全に理解しなくても楽しめるのが楽曲のいいところで、例えば

ひとつだけ壁に残った時計
なんだかうまく進まない

という歌詞の時計が進まない理由が自分なのかレイディなのか、そしてその上で"僕"はどうしたいのか。この辺りの感情を考えると全体像は見えずともなかなかの『後ろめたさ』を感じれて幸せになります。

それはそれとして、この楽しかったはずの過去少年だったころの理想のレイディ、それらが梅雨と同時に喪失したというエピソード。陽気な夏が来ても一人梅雨に取り残されたかのように湿っぽい"僕"。この撞着がたまらなく後ろめたく愛おしく感じてしまうわけです。

不埒なCANVAS

画像4

唯一アイマスから持ってきたこの曲は、この撞着の権化のような夏曲です。Spotifyに曲が無いので、ジャケ絵だけ飾っておきました。

この曲は踊るFLAGSHIPイケナイGO AHEADと合わせた3部作の最初なのですが、単体での攻撃力が非常に高いです。あとエッチです、非常に。
ここ好きポイントを上げるときりが無いので撞着感情ポイントを上げると、

半分は廃墟だ ガラス細工 高いビル
隙間を突き抜ける飛行機雲が かっこいいな
素足の爪が艶めかしくて アジサイの方へと目をそらした
むせかえるほどに きついサイダーを
飲み干し空をあおいだ

ですね。この飛行機雲アジサイも何かしらの比喩だとすると、飛行機雲は飛行機が「立派に飛び立った」ものだとするならば上手くいった人間orカップルの軌跡、アジサイは「イロを変える」ことからアソビの異性と考えられます。そうするとこの曲の”僕”はまぁろくでもない人間なんですが、その退廃の中で少年のように純粋な恋愛感情を持つわけで、ある意味で今までの心の成長と関係性とのズレの話と一致しますね。
このズレを認識してからの”僕”の心の葛藤が不連続な歌詞に現れていて、本当に良い感情になります。葛藤が尚更あからさまにする『後ろめたさ』を聞いて、みなさんの夏も鮮やか彩りませんか?

Mani Mani

電音部の最序盤に出た、TAKU INOUEの優れたところが遺憾なく発揮されている曲です。大変エッチサウンドリリックで、大音量で聞くとそれはもうエラいことになります。

ちなみにここから4曲は今までの後ろめたい夏曲を引き立たせる陽曲に属する夏曲となります。といっても100%の陽というわけではないのですが、今まで上げた曲と比べると明るいパートが多すぎるのでこの場では陽曲と定義した所存です。

陽の曲に長文を書く気はあまりないんで歌詞全体には触れませんが、このプレイリストを見つめると何となく最初に紹介したゼリーフィッシュのあり得た未来のように感じませんか?自分は感じます。
特に

そう もっと深く沈んでみたいのよ

はゼリーフィッシュの

ふたりでサカナになって 海の中泳ぎたい

に完全に重なる気がしています。

あとアイドル文脈で言うと

さあ 星明かりが遠くなっていく

という歌詞は完全にアイドルの世界から離れることを指しているため、アイアンフリル的には完全に御法度な『後ろめたい』表現となっています。まあこの曲はアイドル曲ではないんですが。

Seventeen Feels

Re:Stageからもう一曲、テトラルキアの少し特殊なナンバーです。このユニットは分かり易くぶつかり合う青春を表現していて、そんな彼女たちが歌うこの成長の曲はまさに"激情"。静かなギターリフから始まり静かなギターリフで終わるバンドサウンドの中に、彼女たちの前に進む不安彼女たちが選んだ最強の手段が刻まれています。

まあどれだけ壮大に書いても結局相対的には陽曲なんですけど、今が楽しいからこその将来への不安や変わることへの恐れをストレートに描いたこの曲は、この曲にしか持てない唯一の輝きを帯びています。

So, Everything must go away 繰り返しては彷徨って
大切なものから順番に失くしてしまうの
No matter where we go from now ためらえば見失いそうで
いつだって今日を少しずつ 忘れてしまうから

ところでリステワンマンのテトラルキアは本当に最高だったので、早く円盤化されて何度も見たいですね。

メロディーフラッグ

またもやナナシスから一曲、4Uという3ピースガールズバンドで、なんとアイドルユニットではありません。この辺りの機微はEP.4Uを是非読んでください、本当にいい話なので。
4Uの総決算ともいえるこの曲は、4人目のメンバーを含む彼女達の苦楽と未来への宣誓が掲げられています。高校生が背負うには少しばかり重すぎた彼女たちの"苦難"、それを経験したからこそ歌えるストレートで"背中を押す"言葉の数々は、だからこそ人々の胸に深く染み込むのかもしれません。

この曲は

ひとつふたつ
ただ拾いあつめた思い出も

と、思い出に「ただ拾いあつめた」という表現を使うなどの『後ろめたさ』を持ちながらも、

僕らの行き先に
管制塔はいらない
不安定な風でいい
ずっとずっとホントは欲しかった輝きも
まだ捨てないで 全部 君になるから

と、人を励ますような表現が非常に多いです。まるで過去の自分が当時欲しかった言葉を投げかけるように

この曲を聴く度に、本当に後ろめたいのは自分自身なのかもしれないと反省しています。

SUN² SUMMER STEP!

最後はときめきアイドルprojectからこの曲、眩しい夏を体現した曲で、まあほとんど後ろめたさが無いです。なぜこの曲をこのプレイリストに入れているかというと、単純に曲調が好きなのと真に『後ろめたい夏』曲を際立たせるために入れています。

青空SUNSUNハレルヤ 大好きあふれる季節
潮風追い風にして君へもっと近づこう

という歌詞からも分かる通り、"踏み出せた"側の歌詞です。つまり敵。輝かしい未来しか見ていない。俺たちはありえたかもしない輝かしい過去しか見てないというのに。

この曲がありつつもカン違いSummer DaysをA面の表題曲に置くときめきアイドルprojectとかいうコンテンツは端的に異常だと思うので、末永く続いてほしく思います。

最後に

以上11曲が最近自分がループして聞いている曲です。大体の曲はSpotifyで聞けるので、知らない曲があればぜひ聞いてみて下さい。
また、他に似た情緒を引き起こす曲があれば教えてください。自分の夏の楽しみがまた増えます。

ところで夏の楽しみと言えば、今週末のTokyo 7th シスターズによる- NANASUTA L-I-V-E!! - in PIA ARENA MMですね。
自分はとても楽しみにしており、両日とも参戦するつもりです。弊サークルの会報も最近更新されており、メンバーの期待もかなり高まっています。

次回の#7ではナナシスに関することが書ければいいなぁと思っているので、もしよろしければ読んでいただければ幸いです。それでは、よい夏を。


2021/07/27追記

Spotifyのプレイリストを作りました。コラボ設定をオンにしているので、よければ『後ろめたい夏』楽曲の追加をしてみてください。