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探し物はなんですか~第7話:落胆~

ぬか。ぬか漬け、米ぬか。

穀物を精白した際に出る果皮、種皮、胚芽などの部分のことであるが、私はそのぬかに対していいイメージがなかった。
栄養があるのかもしれないけども、単に食わず嫌いなだけかもしれないけども、どうしてもあの単語しか思い浮かばないからである。

そう、喜びだ。

最近ではワールドカップで格上チームに対して後半に2点を奪取し、これは勝っただろうと確信した瞬間に怒涛のように失点し逆転負けをしたときにそのぬかを感じてしまったことがあった。

あの日の私と言えば茫然自失でやる気がすべて失われ、無気力状態の廃人のようにただ息を吸うことしかできなかった。人間をそこまで陥れいる魔力がぬかにはあった。

だから鍵のような影を発見したその時ですら、私は落ち着こうと心に決めた。ぬかはダメだ。

そう思いながらもおそるおそる近づき光を当ててみる。しかしその黒い影は立体的な輝きを放つことはなく、ますます黒みを帯びていくばかりであった。

そして気づいた。

影はただの黒いシミだということに・・・
もしかしてこの暑さの中でアスファルトの熱気とタイヤの摩擦熱で溶けてしまったのではないかという安易な考えを2秒で放棄したあとに気づいたのは、わずかにぬか喜びしていた自分がいたことだった。

くそっ、またしてもやってしまったぜ。。あんなにぬかで喜びはしないと心にきめていたのに!!

わずかに残っていた力をまたしてもぬかに奪われてしまった私は家に辿り着くのが精いっぱいだった。ふたりの間にはどんよりした空気が流れていた。

暑さで朦朧としていた私はこの雰囲気を打破すべく何か盛り上るようなことを言おうと必死で考えていた。
そして丸メガネの男が自分のカギで家のドアを開けていたのを見て、あれに似たカギを私は失くしたんだと悲観しながら、ふと言い放ってしまった。


「あれ、その鍵この辺でひろったやつじゃないよね笑?」


疲労困憊の中で放たれた乾いたジョークはだれにも受け入れられることなく宙を舞い、ふわふわと浮かびながらふたりの間を漂っていた。

丸メガネの男は静かにこういった。


「違うよ。これは僕のだよ」

つづく


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