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見上げればいつも四角い青空#21 老眼鏡という名の魔法の杖

「○○さんの掛けている眼鏡ってハズキルーペってやつですか」
「そう。これってメガネの上からでも掛けられるから便利なんですよ~」

○○さんはそう言いながら、ハズキルーペを頭の上に上げる。
掛けていると見た目は、精密機械の修理を行う職人さんと見間違いそうで、普段の生活で掛けるには少し勇気がいる気もするが、掛けさせてもらうと思いのほか……を通り越して本当によく見える。
最近、書類を読もうとすると、目の前にどこかから霧のような雲が流れてきてよく見えないという状態が続いていたのに、ハイキング中に視界が確保され、目の前に美しい山々が姿を現すかのようによく見える。それと同時に、やはりボクの老眼が著しく進んでいることに改めてショックを受けた。

人を老いるもの。

分かってはいるが受けいれるのはなかなかに難しい。でも、こうとなれば受け入れねばなるまい。

普段の生活や仕事の中で、新聞や雑誌、書類や本を読む際、老眼鏡を持たないボクは、霧の中から見える文字と、見えない文字部分にハマりそうな文字量から、内容を推測して文字を追っていた。当たり前だが、目も頭もすこぶる疲れる。

一方で、掛けさせてもらったハズキルーペのおかげで、極端に目が悪くなった訳ではなく、ただ単純に老眼が進んだことによるものだと分かり、大量に購入しているコンタクトレンズをどうしようかという悩みは解消した。
人は何かを失えば何かを得るとはこのことだと妙に納得する。

そして今日、ついに老眼鏡を買う決心をし、周囲のススメも参考に、お試しも兼ねて近くのダイソーに出かけた。老眼鏡の事をよく分かっていないボクは、おそらく数字が大きいほどが老眼の度が強いのであろうと、先ずは一番小さな値のものを購入してみたが、これでも驚くほどよく見える。

こんなアナログだけど魔法の杖のような道具が、デフレの象徴ともいうべき百均で買えるのは、ほとんど魔法の国の話のように思えてしまう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。同じようでいて同じではない日々の生活の中で、感じたことや考えたことをスケッチしています。よかったらまた立ち寄ってください。

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