道路掃除夫ベッポの言葉

ミヒャエル・エンデ『モモ』より

「なあ、モモ」と、

ベッポはたとえば
こんなふうにはじめます。

とっても長い道路を
うけもつことがあるんだ。

おそろしくて、
これじゃとてもやりきれない。
こう思ってしまう。

そこで、せかせかと働きだす。
どんどんスピードを上げていく。

ときどき目をあげて見るんだが、
いつ見てものこりの道路は
ちーともへっていない。

だからもっとすごいいきおいで
働きまくる。

心配でたまらないんだ。

そしてしまいには
息がきれて動けなくなってしまう。

道路はまだ残っているのにな。

こういうやり方はいかんのだ。

一度に道路ぜんぶのことを
考えてはいかん。わかるかな?

つぎの一歩のことだけ、
つぎのひと呼吸のことだけ、

つぎのひと掃きのことだけを
考えるんだ。

いつもただ
つぎのことだけをな。

するとたのしくなってくる。

これがだいじなんだ。

たのしければ仕事がうまくはかどる。

こういうふうに
やらなきゃあだめなんだ。

ひょっと気がついた時には、

一歩一歩すすんできた道路が
ぜんぶおわっとる。

どうやってやりとげたかは
じぶんでもわからんし、
息もきれてない。

これがだいじなんだ。

#note読書部

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?