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大腸全摘手術当日の話

私が大腸全摘手術を受けた日なので、忘れない内に書いて置きたいと思います。
当日私がした事と言えば、手術室まで歩いて行って、手術台に乗って、名前と何の手術を受けるか確認して、寝ただけなんですが。

一般的に大腸全摘手術の所要時間はは6時間程度なのですが、私の場合は7時間程掛かりました。
想定より小腸が短かったらしく、「繋ぎ合わせるのにちょっと手間取ったんだよね」とは医師談です。
手術に関してもやはり個人差があるかと思いますが、何かの参考になれば幸いです。


起きてからずっと好きな音楽を聞いて自分を鼓舞していました。
頑張るのは自分じゃなくても、起きた時の痛みや変わってしまう身体の事を考えるととても不安で、好きな映画やゲームの戦闘BGMをひたすらリピートしていました。

前日の内に案内がありましたが、手術室まで徒歩です。
ベッドとかストレッチャー移動かな〜なんて甘えていましたが、手術開始時刻に合わせてお迎えが来るので、手術室まで自分で歩いて行きました。
『グリーン・マイル』のワンシーンが頭を過りました。

手術室

手術台は思っていたよりずっと狭く、思っていたよりずっと温かかったです。
手術室の記憶が無いという話もよく聞きますが、私は比較的鮮明に覚えています。

手術台に乗ってからの看護師さん達とのやり取りや、吸入器を着けられた時、「ああ、本当に今から手術なんだ」と強く実感してとても怖くなった事だったり、全身麻酔を入れる為に手背でルート確保、一度失敗されて「痛い!」と文句言ったのも覚えています。
麻酔が効き始めて段々と意識が薄れていく中、「怖い……怖い……」と言い続けていた記憶まであります。
余談ですが、全身麻酔のあの引っ張られるように意識が落ちる感覚、個人的には好きです。

術中はずっとふわふわとまどろんでいるような感覚でした。

麻酔の投与が終わったタイミングというか、起きなければならないタイミングが来た時の感覚を覚えています。
名前を呼ばれて目を開けると「息を吸って下さい」と指示が出ましたが、一瞬呼吸の仕方がわからず、吸うの?吐くの?どっち?苦しい!と軽いパニックになりました。
吸って下さいね。

呼吸が出来るようになって漸く、お腹の痛みとドレーンによる鼻の痛みを実感しました。
そのままベッドに移されてICUへ。
道中で家族の顔が見れましたが、ほんの一言
「大丈夫?」
「痛い」
しか言葉を交わせませんでした。
手術を受けたのがコロナ禍の最中だった為、面会が制限されていた影響もあるかも知れませんが、手術中ずっと別室待機させられていた家族の気持ちを考えると、なんとも言えません。

ICU

手術室と同じく、ICUも記憶に無い方が多いと聞きますが、私はこちらも大体覚えています。

執刀医と術後に話をしたのはICUに入ってからです。
無事に終わりました、痛みはどうですか、明日から歩行訓練頑張りましょう、要約するとそんな感じの話をして、執刀医は一度退出。
時計を見ると時刻は16:20でした。

入れ替わるように消化器内科の主治医がとても悲壮感溢れる顔付で入室して来ました。
痛いよね、大変だったね、ごめんね、要約するとそんな感じの話をして、何かあったら執刀医に言うよう念押しして退室していきました。
私はその背中を見送って、もうあの人に診てもらう事はないのか……と唐突に寂しくなったのですが、年内には再び彼の患者に逆戻りします。
まさに「フラグ乙!」といった感じですね。

手術当日で一番辛かったのはその後でした。

起きていると傷が痛いしドレーンを突っ込まれている鼻が痛いし息苦しいしで辛いので、早く眠ってしまいたかったのですが、全然眠れないのです。
全身麻酔と鎮痛剤のおかげで頭はぼんやりしていていつでも入眠出来そうなのに、眠気が一向にやって来ません。
ドレーンがあるため、呼吸がしやすい角度が限られており、何とかベストポジションを見つけようとモゾモゾしているとお腹の傷が痛くなって来るのも困りものでした。

少しウトウトして、1時間くらい経ったか?と思って時計を見ても10分しか経っていないなんて事を何回も何回も繰り返し、その度に時間の長さに辟易しました。

19時頃に再び執刀医が顔を出してくれました。
丁度その頃、とても喉が渇いていたので飲水の確認を取ったのですが、驚くことに「吐き気が出ていなければ氷を舐めるくらいはOKだよ、看護師に伝えておきます」との事。
そしてその後すぐに看護師さんが氷の欠片を手ずから食べさせてくれたのです。
ひんやりと冷たい水がじんわりと身体に染み渡るような心地でした。

21時消灯前に点滴で睡眠導入剤をお願いして漸く眠れる……!と思っていたのですが、何故か全く眠れず。
3時頃までずっと、痛みに苛まれながら動きの鈍い時計を眺め続ける夜でした。
眠れない私に1時間おきに「氷舐めますか?」と声を掛けて下さった看護師さん、本当に天使のようでした。
たまにちょっと大きな欠片を突っ込まれましたが、それも今となっては懐かしい思い出です。


翌日以降のお話はまた後日。


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