「委員は恋に飢えている!」第1会
あらすじ
主人公、月浦月が入学するのは日本一の進学校「最皇高校」。この学校で生徒会長を務めて卒業すると望んだ将来が約束される。「生徒会長になって絶対富豪になる!」そう決心した月だが、簡単に生徒会長になれるわけがなく、、、。
「委員会×ラブコメ」の楽しい?学校生活が今、幕を開ける!
第1会「4つの出会い」
「ここが今日から通う学校か…」
校門の前で校舎を見上げる。
「うわ!」
突然強い風が吹き、桜が舞う中一枚の紙が俺の顔に張り付いた。
慌てて紙を取るとそこには長々と文章が綴られていた。
「何かの原稿か?」
興味本位で内容を読んでみようとしたその時、目の前に一人の美しい女子が立っていることに気づいた。先ほどの強風で舞いあがった桜の花びらが、雨のように彼女にゆっくり降り注いでいる。
風でなびいた濃青色の髪と桜色の花びらが儚くも美しい。こんなに桜が似合う人がいるのか、と彼女を見てそう思った。
「それ」
俺が持っている一枚の原稿を指さしながらその子はこちらを見つめている。
「私のなの。拾ってくれてありがとう」
そう言って、彼女はこちらに歩いてきて手を差し出した。
「ああ、そうなんだ。もっと飛ばされていかなくてよかったよ。はい」
俺がその子に原稿を返すと、
「じゃあ」
とだけ言って彼女は校舎に向かっていってしまった。
(きれいな人だったなぁ。)
入学初日、小さなイベントに戸惑いながらも、俺は校舎に向かって新生活の、そして夢への第一歩を踏み出した。
入学式を終えた新入生は、教室に戻り、俺たちのクラスは自己紹介をすることになった。
当然、先頭から順に自己紹介が始まった。名前、出身、趣味…。みんなの自己紹介がどんどん続いた。とうとう俺の前の席の人が終わり、拍手が鳴る。
「じゃあ次の人、お願いします」
先生から促され、俺は自己紹介を始めた。
「月浦月です。この学校で生徒会長になります。よろしくお願いします」
少し沈黙が続き、ぽつぽつと拍手が鳴り始めた。緊張していたので、不愛想な感じになってしまったかもしれない。
「ありがとうございます。では次の人」
特に変わったことのない、普通の自己紹介。
この時、本を読んでいる手を止め、少しだけこちらを見ていた彼女に、俺は気づかなかった。
その後、何人かの自己紹介が終わり彼女の番になった。
「日早片日奈です。よろしくお願いします」
それだけ言って、日早片さんは席に座り、さっき読んでいた本を再び読み始めた。
今朝校門で出会った彼女は、俺と同じ一組。さらに入学式では新入生代表のあいさつもしていた。きっと入試で一番だったんだろう。
クラス全員の自己紹介が終わると、先生から今後の予定とこの学校について改めて説明があった。
「みんな説明会とか入学前の資料とかで分かってる人も多いと思うけど、一応説明しますね。この最皇高校は日本一の進学校。優秀な生徒が多いから、ぜひうちに来てほしいっていう大学や企業が多くの支援金を出してくれています。そしてそのお金も含め、学校の運営はほとんどが生徒会と委員会に任されているんです。委員会は生徒会に加えて四つ。風紀委員会、美化委員会、経理委員会、催事委員会。この五つで学校を運営しています」
これはパンフレットに載っていた。ほとんど生徒で運営している学校は初めて見たからパンフレットを読んだときすごい驚いたな。でもそこじゃない。
「そして、この学校の生徒会長になった人は、卒業時に本人の望んだ将来が約束されます。これは、行きたい大学に無償で行くことができますし、働きたい職種、職業にも就くことができますね。国家予算や、ありえない額のお金なんかは無理ですが、単純にお金が欲しい、なんてものもお願いできます。もちろん、人を殺すとか犯罪に手を染めるといったものはNGです。まあ、ドラ○ンボールみたいなものですね」
これだ。望んだ将来が約束される。学校案内のパンフレットでこの言葉を見つけた時、吸い込まれるようにしてここに入学を決めた。
「ついでに言っておくと、各委員会の委員長を務めた人も生徒会長ほどではないですが進路について融通が利くようになっています。」
それは説明がなかった気がする。俺にとってはどうでもいいことだったので見落としていただけかもしれない。
「委員会に所属したい人は委員会説明会に参加してください。説明会に参加するには生徒会に行って申請書を書いてね。期限は二週間後まで。この申請書を提出しないと説明会に参加できなくなって、委員会には所属できなくなるから注意してね。さらに詳しい内容については、説明会の時に話があると思うのでその時聞いてください。じゃあ、休み時間!」
先生はそう言って教室を後にした。クラスのみんなも自己紹介で気になった人同士話したり、教科書を開いたりと各々が休み時間に入った。
「月くん、だよね!俺、土内土門、ってさっき自己紹介したよな。月くんって…」
「月でいいよ。俺も土門って呼ぶからさ」
「そっか。月って生徒会長になりたいんだって?なにか将来やりたいことでもあるの?」
結構ぐいぐい来るんだなと思いつつ、話しかけてくれたが嬉しかったのでしっかり受け答えをする。
「俺の家、貧乏なんだよ。ここの生徒会長になって卒業すれば、望んだ将来が約束されるだろ?それで俺は富豪になって幸せに暮らすんだ!」
「なるほどね。じゃあ当然申請書も…」
「もちろんもらいに行くよ」
「そうなんだ。生徒会長になれるよう頑張れよ!これからよろしく!」
土門は一言残していき、別のクラスメイトのもとへ向かっていった。
友達に困ることはなさそうかな、なんて思いながらふと日早片さんが気になり目をやると、ひとりで静かに本を読み続けていた。
あっという間に放課後になり、俺は申請書を提出するため生徒会室に向かった。
生徒会室の扉を開けようとしたその時、ひとりでにドアが開いた。
「きゃっ!」
開いた扉の先には、きれいな黒髪ボブのメガネをかけた女子が立っていた。お互いが譲るために、同じタイミングで左右に動き、少し膠着状態が続く。
「あのー、先どうぞ」
少し照れくさくて、頬を搔きながらそう言うと、彼女は顔を真っ赤にし、手で顔を隠しながら何も言わずに走り去っていった。不思議に思ったが気まずくなってしまったのだろうということにし、申請書を書いて俺は生徒会室を後にした。
次の日から授業は開始し、しばらくすると部活動に参加する生徒も増えていった。
土門はサッカー部に入ると言っていた。俺は生徒会長になるので、部活動を行う時間はない。
日早片さんはというと、休み時間は本を読んで、放課後になればすぐにいなくなってしまうことが多かった。見たところ、友達の気配はない。
別に俺が気にすることでもないのだが、初日に原稿を拾った、なんていうちょっとしたイベントがあったので、声を掛けに行くことにした。
「日早片さん、いつも本読んでるけど、なんて題名?本好きなの?」
「これ、参考書」
「勉強してるってことか。やっぱり入試で一番をとる人はすごいね。今度俺にも勉強教えてよ」
こちらを一瞥し、それ以上は反応することなく日早片さんは参考書を読み進めている。
(ええー、それだけ!?)
もしかしたら一人でいるのが好きなのかもしれない。これ以上はやめておこう。こうして自分の席に戻ったのと同時に先生が教室に入ってきた。
「はーい、みんな注目。委員会説明会が明日の放課後に体育館であります。申請書を提出した人は、必ず参加してくださいね。参加できなくなった人は直接連絡しに行ってください」
ついに明日、俺の富豪生活に向けた第一歩が始まる。俺は、明日に向けて少しそわそわしながら、帰路についた。
家に向かっている途中、電柱の前でうずくまっている女の子に遭遇した。
「ちょっと!?大丈夫!?」
「おでこ、ぶつけだーーー!」
おでこも赤くなっているし、涙目になっている。きっと結構な勢いでぶつかったのだろう。何があったのか聞こうとしたその時、後ろからものすごい勢いで走ってくる人がいた。同じ制服だ。
「なに女の子泣かせちゃってるんですかぁぁぁ!!」
そう叫びながらつっこんできた彼女のタックルが俺にクリーンヒットした。
「うげっ!」
数メートルは飛ばされた。とても痛い。
「大丈夫!?あの男に何されたの!?私が来たからもう安心して!あ、おでこ!赤くなってるよ!何か冷やすものは…」
そう言って冷やすものを探している彼女に俺はすかさずつっこんだ。
「ちょっと待って、誤解だよ、誤解!俺はこの子に何もしてない!君と同じで助けようとしたんだ!!」
「え、そうなの?」
「そうだよな、な?」
まだおでこを手でおさえてる彼女に二人で問いかける。
「うん。そう。これはぁ、電柱が私をよけてくれなかったからぁ」
薄紫のロングヘアで背が低い彼女は鼻水をすすり、おでこを抑えながら俺の誤解を解いてくれた。
「いやー、本当にごめんなさい!私、てっきりあなたがこの子に何かしたのかと思って。いつもそうなんです。私、頭より先に体が動いてしまって…。こういうのも初めてじゃないんです」
タックルしてきた彼女は申し訳なさそうな表情で頭を下げた。きっと、困っている人がいたら見過ごせない、優しい人なんだろう。ちなみに、おでこをぶつけた彼女は、ゲームに夢中で電柱にぶつかってしまったらしい。
「いや、誤解が解けてくれたならよかったよ。ていうかみんな同じ制服だ。しかも一年生だよね。俺は日浦月。一組だよ」
「私は紗衣火火恋。二組だよー!」
「金速金美。五組」
自己紹介をしながらも、紗衣火さんはハンカチを水で濡らし、金速さんのおでこを冷やしている。面倒見もいいのかもしれない。紗衣火さんが金速さんと一緒にいるというので俺は帰ることにした。
「じゃあ、また学校で」
こうして二人と別れ、またプチイベントに遭遇したな、と思いつつ再び家に向かった。
翌日、とうとう委員会説明会の時間になった。俺が体育館についた時点で、かなりの生徒が集まっていた。受付を済ませ、館内に入ってすぐ聞いたことのある声がした。
「あー!月くん!来てたんだね!」
振り返ってみると、昨日知り合った紗衣火さんと金速さんが歩いてきた。
紗衣火さんは金速さんの頬を触りながら歩いている。
「紗衣火さん、金速さん。二人も来てたんだ」
「昨日の帰りにお話ししてたらお互い説明会に申請しててさ!せっかくだし一緒に行こうってことになったんだ!」
「そうなんだ。紗衣火さんと金速さんはどの委員会を希望しているの?」
「も〜、紗衣火さんだなんて、やめてよー!もう私たち、友達なんだからさ!火恋でいいよ!金美ちゃんも、いいよね、ね!」
「私はなんでもいいよぉ」
「ちょっと恥ずかしいな。分かった。火恋さんと金美さんはどの委員会を希望してるの?」
「私は催事委員!まだ詳しいことはわからないけど、文化祭とか体育祭とか行事の運営やりそうじゃない?私、楽しいことが好きだからさ。せっかくなら私がみんなを楽しませられるように運営側に回りたいなって」
「私は経理委員。理由は〜火恋、パスゥ」
「ええ!もう、しょうがないなー。金美ちゃんのお姉さんが経理副委員長なんだって。それで、お姉さんにゲーム買ってやるから委員会に入って手伝えー!って言われて渋々入るらしい、ね、金美ちゃん!」
「そうそう、その通りだよぉ。ゲームをだされたらねぇ」
金美さんはかなり面倒くさがりらしく、ゲームが大好きらしい。
そういえば電柱にぶつかったのもゲームをしていたせいだったもんな。
そして火恋さんも本当に面倒見がいい。というか出会って二日目なのにもうこんなに仲がいいのか。すごいな。
「月くんは?どこの委員会?」
「俺は委員会というか、生徒会長になりたいんだ。だから正直ほかの委員にはあんまり興味ないんだよ」
「生徒会長か!やっぱり、卒業したときの、あれ?」
「そう。あれが目的」
「すごいよねー、ほんとに。生徒会長になっただけで、あんなに優遇されるなんて。なーんか怪しくない?裏がありそうっていうか。なるのがとても大変ーとか、死ぬほど激務で寝る暇もないーとか、あったりして。金美ちゃんは、お姉さんから何か聞いてない?」
「私は委員会、ましてや生徒会長のことについてなんか何にも知らないよぉ。お姉ちゃんとあんまりそういう話はしないんだぁ」
「あはは、確かにね。でもそれでもいいんだ。俺はどれだけ仕事が多くて大変だとしても生徒会長になって、将来富豪生活を送るんだ!」
こうして話している間も火恋さんはずっと金美さんの頬を触ったりつまんだりしていた。金美さんもされるがままだ。きっともちもちなのだろう。そして定刻になり、アナウンスがあった。
「ただいまより、委員会説明会を始めます。各委員長は準備してください」
このアナウンスを合図に、ステージ端から委員長が位置についた。
(あれ、あの子は確か…。)
この時、前の方に見覚えのある顔を見つけたが次のアナウンスで俺の視線は壇上に引き戻された。
「では、生徒会の皆さん、お願いします」
こうして、生徒会長、続いて副会長がステージ横から出てきた。さすが会長、副会長、やはりオーラが違う。そう思った次の瞬間、副会長の後ろに見覚えのある顔が続いていた。
時間が止まったかのようだった。彼女のきれいな濃青色の髪が、靴音に操られるようになびいている。ゆっくりと進み、そして彼女は何事もなかったかのように副会長の横についた。
「え」
「「「ええええええええええええええええええ!!!」」」
そこに立っていたのは、同じ一組の日早片日奈だった。
俺はもちろん、説明会に参加していた一年生のみんなが声を出して驚いていた。
「これより、委員会説明会を始めます」
生徒会長の一言は聞こえない。少なくとも俺の耳には届かないくらい、彼女が壇上にいることが衝撃だった。
「現生徒会長の入神勉だ。これから各委員会についてと委員会に所属するための条件を説明する」
生徒会長の入神は驚いている俺たちを意に介さず淡々と説明を続ける。
「ちょ、ちょっと待った!なんで壇上に日早片さんがいるんですか?だって、え、だって、まだ入学したばかりの一年生で…」
あまりにも普通に進行してしまうので、俺は思わず質問をしてしまった。
「質疑応答の時間は最後に設けているからそこで聞いてほしいんだが…。まあいいだろう。君たちと同じ一年生の日早片日奈だが、彼女は現生徒会の書記という仕事を任せている」
(書記だって?なんでまだ入学したばかりの日早片さんが生徒会の役員ポジションについているんだ?)
生徒会長の回答に俺はあまり納得できていなかった。副会長の英田英凛が説明を加える。
「彼女は本学で毎年一人だけ受け付けている推薦入試で無事合格を果たしました。そして、早めに学校に通っていたんです。その時に入学と同時に生徒会の書記を務めるという話になりした。これで疑問は解消しましたね。では続けます」
そう言って生徒会は説明会を進めていった。まだ俺の中で整理できていないが、一旦説明を聞くことにした。壇上のスクリーンにもまとめられたものが表示されている。
「まずは委員会に入るための条件を説明します。生徒会以外の委員会に所属を希望する人は、五月から夏休み前までの三か月間、所属したい委員会に仮配属という形で所属してもらいます。その間に気が変わった人は夏休み後、やめていただいてもかまいません。ただし、その場合は今後委員会に所属することはできないので注意してください」
自分の希望する委員会に所属するには、仮配属、研修期間のようなものがあるということだ。
「そして生徒会は少し特別です。生徒会に入りたい人は、仮役員として配属され、五月から夏休み前までの三か月間で各三週間ずつ、すべての委員会を回ってもらいます。ただ委員会を回るだけではありません。期間中、委員としてしっかり仕事をこなし、委員長からサインをもらってください。これは委員長があなたを認めたという印です。この四つのサインがなければ、夏休み明けの生徒会選挙の候補者にはなれません。といってもあなたたち一年生は副会長選挙ですが。基本的に生徒会長の候補者がいなければ副会長がそのまま繰り上がりで会長になるので、目指している人は今年から立候補した方が良いでしょう。もちろん、仮役員ですので生徒会の仕事もしていただきます。まあ、生徒会に入りたい人なんてそうそういないでしょうがね」
最後に小さい声で何か話していたが、よく聞こえなかった。
全委員会を回るだけなら、一学期を頑張りさえすればいい。そうすれば副会長に立候補。確実に副会長になれるとは限らないが、もしなれたとしたらそのまま来年生徒会長だ。
これで将来が約束されるなら安いものだ。
そう思った時入神会長が口を開いた。スクリーンの画面も切り替わる。
「生徒会長について補足だ。生徒会長には、生徒からもらった意見や要望、その他校則などを決定する最終決定権を持つ。例を挙げれば、俺が来月からの授業時間を増やすと決めたら実行することもできなくもない。ただし、この権利はだれか個人の利益のために使用するのは許されない。発覚しだい即解雇、退学だ」
生徒会長にはそんな権限もあるのか。このことについては初知りだ。会長はさらに補足を続けた。
「そしてこれが生徒会長の一番大変なルールだな。生徒会長は学校の顔だ。この学校では我々が運営していることもあり、他校の会長より責任が大きくなる。だから、本学の生徒が何か問題を起こし、最皇高校に泥を塗ったときは生徒会長も責任を取って退学処分となる。過去に何人かこの事例で退学した会長もいる」
問題を起こした生徒だけではなく、会長も責任を取って退学なんていう規則は誰も知らなかった。生徒の中には将来が約束されるというメリットを求めて軽い気持ちでこの会に参加したものも多いだろう。
「生徒会長になるだけで将来が約束されるなんてうまい話があるわけないだろう。加えて仕事は激務、成績も維持し続けなければ退学。ここまで大変な思いをすると分かっていながらこのポジションに立ちたいというものはいるか?まあ、来月が楽しみだな」
そう言うと会長はマイクを置き、ステージ横にはけていった。
アナウンスが質疑応答の時間をとったが、誰も手を挙げる者はいなかった。副会長、日早片さんもそのままはけていく。この時、日早片さんは一瞬だがこちらを見ていた気がした。
その後各委員長から委員会の仕事内容について説明があり、説明会の最後にGW明けの月曜日、委員会に所属したい人はもう一度体育館に集まるよう指示があった。この日から委員会活動がスタートするのだ。
説明会が終了し、生徒会を希望していた生徒たちは重い足取りで帰っていった。火恋さんと金美さんが少し心配して声をかけてきてくれたが、俺自身整理がついていないので変な相槌をすることしかできなかった。
入学してからひと月が立ち、学校にも慣れ始めたと思いきやGWでリセットされる人も多いだろう。
GWが明けた最初の月曜日、何人か休んでいる生徒もいた。
いつも通り授業を受け、休み時間を過ごし、放課後になる。俺は自分の足で体育館に向かった。
扉を開けると、五つのブースに区切られ、それぞれに風紀、美化、経理、催事、生徒会の名前と椅子が用意されていた。
俺はまっすぐに目的のブースに向かっていった。
「今年はひとりか」
「物好きもいるんですね」
「…」
「生徒会長になれるか確証はない。仮になれたとしても退学になるリスクが伴う。学生のうちに過ごせる青春という時間もなくなってしまう。それでもいいのか?」
「俺、生徒会長になるって決めたんで。あと、こういうぎりぎりな感じ、なんか燃えます」
俺は会長の目を見てはっきりと言い切った。
会長は少し笑いながらこちらに手を差し伸べてきた。
怖い人かと思っていたが、俺たちの本気度を確かめるためにそうしていただけで実際はそうでもないかもしれない。
「悪くない。今日から仮ではあるが役員として認めよう。ようこそ、生徒会へ!」
生徒会長が歓迎してくれた時、じっとこちらを見つめていた日早片さんが歩いてきて俺の前に立った。
「生徒会長には私がなる」
指をこちらに突き出しながらそう言った。
(日早片さんって自分からもしゃべるのか)
少し驚いたが、俺も日早片さんに指を突き出し返し、もう一度宣言する。
「生徒会長になるのは俺だ。絶対負けないからな」
自己紹介の時はそっけなかった彼女が、自分をライバルだと思ってくれているのだと思い、なんだか嬉しかった。
今日から生徒会、そして委員会の活動が始まる。
この時の俺は、生徒会、そして各委員会を巻き込んだ楽しい?学校生活がまっているなんて思いもしなかった。
第2会「風紀委員」
第3会「報告会!兼親睦会!?」
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