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わたしとキムくん #7
祇園祭から数日後。
わたしは仕事終わりにキムくんを駅でピックアップして、一緒に遠出をする。
海と山に挟まれて、温泉がたくさんある街へ。
わたしが大学生活を送った街だ。
学生時代の思い出がたくさんある、大好きな街。
ここもまた全国的に有名な観光地であり、高速で1時間ほどでいつでも行けるんだけど、近いと逆になかなか行かないという不思議な地元心理。
せっかく日本にきているのに、ずっとわたしの地元にいるのももったいないし、九州内ならどこでも連れていくよ〜と言ったら、この温泉の街をみてみたい、とキムくんが言ったのだった。
卒業後、街並みはだいぶ変わってるかもしれないけど、少しは案内できるだろうし、わたしも懐かしいし、ちょうどいいじゃん!ということで、2泊3日の旅行に出かけることに。
前回はコボちゃん事件で煮え切らない感じでバイバイしたんだけど、その後気持ちの整理もついた。もっとキムくんのことを知ってみよう。
仕事が終わって待ち合わせの駅へキムくんを迎えにいく。
遠くから歩いてくるキムくん。
やっぱりコボちゃんだったけど、なんだかコボちゃんも見慣れてきたぞ……
「オツカレサマ〜」
「お疲れ様!さっそく出発しよう!わたしも久しぶりだから楽しみ^^」
✳︎
車の中は、思ったよりも盛り上がった。キムくんも、この間より少しは緊張がとけたみたいで、会話がスムーズだ。
わたしも、車の運転席と助手席で並んでいると、コボちゃん頭が視界に入らないので、会話に集中することができる。
会話に集中すると、やはりキムくんとの会話は楽しいのだ。
運転中、わたしは携帯を触ることができないので、
まず、キムくんがパパゴで訳した言葉を音声で聞く。
そして、わたしが簡単な韓国語で答えるか、
英語で答えるか、
キムくんに携帯を持ってもらって、パパゴで音声入力をするか……
というやっぱり不思議な状況。でも、そんなやりとりもなんだかおもしろい。
「みるは、米津玄師とあいみょんのどちらが天才だと思う?」
「えー、どっちかな……?どっちもすごいと思うけど、うーん……どちらか選ぶなら、米津玄師かなぁ?」
「うん、僕もそう思う。韓国で、その2人はとても人気があるよ。」
「でも、わたしは藤井風が一番かも。知ってる?藤井風。
ずっとYouTubeでピアノを弾いていたんだけど、今、有名な歌手になったんだよ。」
「へぇ〜、そうなんだ。藤井風は初めて知ったよ。この人もストーリがある人なんだね。でも僕はやっぱり"Lady"が好きだな……」
「あ!"Lady"はわたしも好きだよ!あの曲を初めて聞いたときはびっくりしたよ。米津玄師が、あんな爽やかな恋の歌を歌うなんて……どういう心境の変化があったんだろうね。決まったイメージが既にあるのに、その枠を超えてまだまだ進化できるのはすごいよね。」
そんな話をしながら車を走らせる。夕暮れが近づいてきて、藍色と朱色の空が交差する……
「あ、ねぇ、みて!あれがわたしが通ってた大学!」
「へぇ〜、そうなんだ。」
「明日、行ってみようか?学食でご飯食べてみる?」
「え!?そんなことしていいの?捕まったりしないの?ㅋㅋ」
「大丈夫だよ、卒業生と言ったら入れてくれるよ。わたしは本当に卒業生だし。」
「ほんと?じゃぁ行ってみようか……」
「あの大学はさ、学生の半分は海外からの留学生なんだよね。韓国人もたくさんいるよ。明日は平日だから学生もたくさんいると思うし、韓国人がいたら話しかけてみる?ㅋㅋ」
「なんでだよ、いきなり話しかけたら変な人じゃん!ㅋㅋ
僕はミルがいるからいいんだ。」
そんな話をしながら、目的のホテルに到着。チェックインを済ませる。(安心してください、シングルルームふたつです。)
ロビーで、ウェルカムドリンクのシャンパンをいただきました。
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ホテルの目の前に焼肉屋さんがあったので、そこで食事をすることにした。
人気のお店らしく、店内は仕事帰りのサラリーマンや若者でいっぱいだった。15分ほど待って、お店の中に案内された。
キムくんは何も言わずにトングを手に取って、肉を焼いて、わたしのお皿によそってくれる。韓ドラみたいだ。
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サービスで出てきたキャベツをそのまま生で食べるキムくん。
「それ、日本人は焼くんだよ」と告げると、「え!?焼くの!?」と不思議そうだった。
付け合わせに出てきたキムチも日本人向けの味だったらしく、「酸っぱいキムチが恋しい……」と終始言っていた。(ごめんね、甘いキムチばっかりで……という気持ちになった。笑)
ふたりでたらふく食べた後、浜辺を散歩することに。
この近くに海がある。
大学時代よく訪れていた場所だ。懐かしい。
わたしたちは、コンビニでアイスを買って、海へ向かった。
これは余談だけど、ご飯を食べたあとに、「ハーゲンダッツじゃんけん」をするのが私たちのお決まりになっていた。
ただ単に、じゃんけんに負けた方がハーゲンダッツを奢るというだけの話なんだけど、普段あまり自分では買わないハーゲンダッツを賭けてじゃんけんをするのは、なかなか楽しかった。
このハーゲンダッツジャンケンは、キムくんが滞在中、3勝0敗でわたしが勝った。ヌナはジャンケンが強いのだ!
浜辺に座ってアイスを頬張る。
夜景と波の音がなかなかロマンチック。
静かで落ち着く。
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キムくんが突然話を切り出した。
「僕、聞きたいことがあるんだけど……」
「なに?」
「どうして、僕みたいに日本語もわからない外国人と仲良くしてくれるの?」
「あー……わたしは、海外の人と接することに慣れているし。大学とか留学とかワーキングホリデーとか、海外旅行とか、仕事とか……」
「ふぅん……そっか。僕だけに優しいわけじゃないんだね……ㅋㅋ」
「……まぁ、そうだね。ㅋㅋ」
よっぽど嫌な人じゃなければ、キムくんじゃなくても一緒に遊んだりしたかもしれない。
でも、旅行にまできたかはわからない。
こちらがNoと言えば、無理矢理何かをしてくるような人ではないという安心感がキムくんにはあったのだ。
「あとさ……」
「うん?」
「……もしかして、祇園祭のとき、手を繋ぐチャンスをくれていたの?」
……ドキッ……
…
…
…
気づいてたんだ……
ザザンッ……
一瞬、何と返答したらいいのかわからず、ただ波の音だけが優しく響いていた。
続く……
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【あとがき】
いつも読んでいただき、ありがとうございます^^
お待たせしました!祇園祭のその後です。
今回は、曲が何も思いつかず……でも、そういえばあの時の浜辺にいるみたいに、波の音をBGMに読んでいただけたらと思ったので、波の音のリンクを貼っておきます。笑
次回はいつも通り、水曜日に公開予定です!
ぜひ、お楽しみに〜^^
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