標準語、なんやかんやムズい件①
以前、こんな記事を書いた。
①関西人による標準語の習得は、幼少期から続けてきたテレビ視聴などの影響でそこまで難しくない
②でもたまに標準語訳をしくじって変なことになる
これは関西人に限らず全方言話者あるあるじゃないかなと思う。
今回、ちょっとこの標準語訳の失敗例について紹介してみたい。
私は中学入学と同時に関西から上京し、はや13年。
もはや人生の半分以上を標準語圏で過ごし、ほぼマスターした気でいた。
それでも、最近になってもなお、標準語訳を間違い続けていた旨が発覚することはちょくちょくある。
例えば、『多い』という単語。
関西弁では『お↑お→い↓』と発音するのだが、これを私の経験を基に標準語訳するなら、『お→お↑い↓』一択だと思っていた。
『暑い』『寒い』『かゆい』『キモい』『ヤバい』など、ほとんどの3文字形容詞はこのパターンだったからだ。
ところが彼氏に言わせると、どうやら関東人は『お↑ーい↓』と発音していると言うではないか。語頭にアクセントがくるんだとか。
いや普通に信じられない。
私は絶対音感持ちで、関西弁も標準語も音程付で記譜できると豪語してきて10年もたっているのに、そんな頻出単語を見過ごすなんて。
活用形においても『多くない?』は『お↑ーくない?』であって『お→お↑くない?』ではないらしい。全然気づかなかった。
『お』の発音の立ち上がりって、どうしても僅かにずり上がるから、聞き分けられていなかったらしい。
他にも『遠い』も同じパターンらしい。確かに『多い』と同じく、o母音が2連続するパターンなので理屈は分かるけど、なんか腑に落ちない。
もっと言うと、埼玉以北など北関東の方言では、『多い』を『お↑ーい↑い↓』と発音するパターンがあるらしい。ちょっと稚拙なニュアンスが出るとか。
まったく、そのニュアンスも含めさっぱり分からない。何がどう稚拙なのかもよく分からない。やっぱり私はどんなに頑張っても関東ネイティブにはなれないんだな、と痛感した瞬間だった。
逆に、関東の人からすると、『〇〇してはる』というのが尊敬語に該当する、というのがいまいちピンと来ない、と友人から聞いた。
古典的な京都弁の一種とは認識していたけど、尊敬語だという認識はあまりなかったそうだ。
流石に分かりそうな感じするけどなぁ。
やっぱり方言が持つニュアンスって、母語としている人じゃないとどうしても分かりかねる部分があるんだろうな、なんて思う。
私自身、それなりに長年真面目に標準語を習得してきたつもりだけど、やはり超えられない壁を感じる瞬間がある。
でも同時に、長年誤りに気づけないほど手強い標準語が未だに存在するという事実は、なかなか興味深くもある。
まともに言語学を勉強したことはないけど、こうして自身の経験を基に方言を比較するのはなかなか面白いものだ。
東京に引っ越してよかった。地元帰りたいけど。
≫続く
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