複雑なものは壊れやすい、という話

Simple is best. という言葉を聞いたことない人はあんまりいないと思う。

ビジネスの現場でも「シンプルに考えよう」ということはよく言われる。

けど、この言葉の本当の意味と威力を理解している人は意外なほど少ない。「なんとなく」で言っている人のほうが圧倒的に多いと思う。ので、少しロジカルに紐解いて書き残しておきたい。(朝の15分で書ける程度でチャレンジ!)

なぜシンプルがいいのか?

それは、「複雑なものは壊れやすい」からだ。

これは定量的に示すことができる。


例えば、ビジネスオペレーションが複雑化した場合。

まず、複雑なビジネスオペレーションを、つくらなければいけない。「オペレーションを維持するコスト」が上がる。これは、投機コストとランニングコストの両方がかかる。

そして、それに携わる人が複雑なオペレーションを知っていなければならなくなる。「オペレーションを学習するコスト」が上がる。これも投機コストとランニングコストの両方だ。

さらに、現代はシステムが全く絡まないビジネスは存在しないと言ってもいいので、複雑なオペレーションに合わせたシステムを用意する必要も生じる。「システムの複雑性」が上がる。


次にシステムの目線で考えてみよう。

オペレーションの複雑化によってや、仕様の複雑化によって、システムは往々にして複雑化していく。

まず、複雑になったぶんの機能開発が必要になる。「機能開発のコスト」がかかる。これは投機コストだ。

そして、機能が増えたぶんの維持が必要になる。「システムの維持・メンテナンスコスト」が増える。これはランニングコストだ。

さらに、システム開発者は複雑な仕様を把握しながら開発をする必要が生じる。これにより「開発時のリスク把握や変更に要する時間的コスト」が上昇する。これはランニングコストだ。


マーケチャネルが複雑化した場合で考えてみよう。

チャネルを増やすと、そのチャネルに適した運用プロセスをつくる必要がある。「チャネルに適したプロセスを作成、維持するコスト」が上がる。これは投機コストとランニングコストの両方だ。

チャネルを増やすと、そのチャネルについて最新動向を常にウォッチし続ける必要が生じる。「効果を維持するコスト」が上がる。これはランニングコストだ。

ブランディングを一新するとしたら、おそらく全てのチャネルで変更を入れる必要があるだろう。「方向性を変更する時のコスト」が上昇する。これは投機コストだが、その投機にかかるコストが上がるということだ。


例えばライブの物販販売。

売るものの数が増えると、スタッフが知識を入れなければならない量が増える。「学習コスト」が上がる。これは投機的コスト。

買い手から出てくる質問の数も普通は増える。「接客コスト」が上がる。これはランニングコストだ。

在庫状況の管理も大変になるだろう。「在庫管理コスト」が上がる。これはランニングコスト。


みてわかる通り、複雑化は「ランニングコストの増加」を招くことが多い。

そして、「ランニングコストの増加」は、複雑化が進めば進むほど指数関数的に増加する。つまり、複雑さが倍になったら、コストは倍どころじゃなく、4倍とか100倍とかになることもあるよ、ということだ。

これによって、コスト構造的に耐えきれなくなったり、事故の発生が増えたりする。

そして、それをなんとかするために人員を増やすと、組織が大きくなればなるほどチームワークを保つために更に大きなコストがかかるようになる。

ものごとの複雑化は、派生的・指数関数的にコストやリスクを増大させてしまうのだ。これが「複雑なものは壊れやすい」の正体である。みんなが思っているよりずっとずっと、シンプルに保つことは大事なのだ。複雑化させてよいのは、よほど大きなリターンが見込める時だけだ。

ちなみに、製造業に従事している人ならわかると思うが、電化製品の故障率や製造コストはほぼ部品点数に比例する。これも指数関数的に。だから、機構や電気設計のミッションにおいて部品点数の削減が重要であったりする。

別の視点でいうと、「なにをやるかより、なにをやらないかが重要だ」というのも、同じ話だ。


ビジネスの話で書いたけれど、たぶん人間関係とかも同じだと思う。たぶん。


今日の強くなるポイント

ファイナンスの知識をつけ始めた!


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