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全国能楽キャラバンを見に行った

「大槻文藏が舞ふ! 日本全国能楽キャラバン」を見てきた。

宮崎は清武文化会館。ご近所だし狂言の野村萬斎も出るというので、旦那が乗り気でチケットを買ってくれたのだ。

演目は翁、大槻文藏と野村萬斎の対談、仕舞「野守」、宮崎の鵜戸神宮ゆかりの「鵜羽(うのは)」。800席のホールがほぼ満員の盛況だった。

旦那は鎌倉の薪能などを何度か見に行ったことがあるそうだ。
私は学生時代、平安神宮の参道の脇の小屋でかかっていた、参道から無料で見ることができる狂言を見たことがあるくらいだ(今でもやっているのかな?)。
香港の友人と見ていて、英語で内容を説明していると、近くにいた欧米の観光客がいつの間にかひしひしと寄ってきて聞き耳を立てていてびびったことがある。下手な英語だったのに~。

その程度の知識で行ったのだけど、途中の対談のときにMCが会場に「能を見るのは初めての人」と聞くと半数近くが手を上げていた。「何度も行ったことがある人」はそれより少ない半数弱だった。

宮崎は延岡で毎年、天下一薪能が開かれるので、関心も高いのかもしれない。

延岡天下一薪能 – 天下一が舞う

新聞の折り込みチラシで知って、旦那が申し込んだときにはもうS席は売り切れ。ちょっと後ろの方のA席だったので、舞台からは遠く、最近、目も悪くてあまりよく見えなかった。

しかし、囃子方や地謡の迫力がすごかった。

正月以降、今でも車に乗るたびにNHKFMでおめでたい邦楽系が流れることが多く、「ラジオはいまだに正月やってるね~」と笑っていたのだけど、その邦楽が生のど迫力で迫ってきた。

気持ちよくて、結構、寝ていた…。

能を見るのは初めてなので、何が何だかわからない状態。

パンフレットはそういう客も多いことを見越して、演目の説明やお能全体の解説も詳しいものだった。

「翁」は、天下泰平、国土安穏、五穀豊穣を祈る、古代からの祝祭儀礼の演目で、「能にして能にあらず」と言われるそうだ。

松が描かれた舞台に、静かに音もたてずすべるように演者たちが入ってくる。挨拶をするわけでもなく、向上と述べるわけでもなく、静かに準備が始まり、舞が進み、退出していく。

一応、パンフレットでおさらいはしていたけど、思っていた感じと全然違ってとまどった。いつ拍手したらいいのかも、わからないのだ。

隣の旦那は、なんどか拍手をしかけて「本当はあそこで拍手入れてもいいんだけどね」と、後でいっていた。

千歳の舞、大槻の翁の舞、そして萬斎の三番叟。三番叟は一度舞った後、黒式尉(こくしきじょ)の面をかけ、鈴を持ち「鈴ノ段」を舞う。

音もせず流れるように進むときと、ダン!ダン!と激しく床を踏み鳴らす静と動の差。

バリで舞踏を見たり、ジャワ島で徹夜ワヤン(影絵芝居)を2度見たりと、日本よりもむしろ、インドネシアの伝統芸術の方が親しいんじゃないかと思うくらいだが、共通する空気感、観客ではないプレゼンスを感じる。場の磁力というか。

対談で萬斎が「能というよりは儀式。翁が客席に向かって一礼するのは客に向かっての礼ではなく、天の神、地の神への一礼であり、箱の中にあるのはご神体にあたる白と黒の面。面をつけて神になるのです」と言っていた。
「舞台から見えないところでも、昔は精進潔斎して、あまり外部の人と食事などで接しなかったし、火鉢も分けたりしていました。舞台で火打石を打って清めてましたが、裏でも全員にしているのですよ」。

三番叟についても「最初は畔を作って足を踏み鳴らして神を呼び出し、鈴を持ってからは種を蒔く。食べ物があれば平和ということなのです」

これは別の公演でのハイライト。

【「三番叟」#能 「松風」】神奈川特別公演 江之浦 ダイジェスト映像(日本全国 能楽キャラバン!2022) - YouTube

新作「能 狂言『鬼滅の刃』」の話も出ていた。

監修・大槻文藏、演出・謡本補綴・野村萬斎で、出演もしている。

大槻文藏は「子供さんもたくさん見にこられた。子供が一番笑っていた。鬼滅のファンだけに内容をよく知っているから。筋を知った上で見る、という能の在り方に近くて大変ありがたい」

「鵜羽」について。

大槻文藏「演じられなくなった廃曲は、なぜ廃曲になったかほとんど理由はわからないのですが、鵜羽はわかっています。足利将軍が鵜羽を観劇中に暗殺されたので縁起が悪いと禁止されたのです」

このブログに詳しく出ていた。

鵜羽@大槻能楽堂: マックとクーとルークな日々

鵜羽は、将軍家にとって不吉な曲とされ、江戸時代初期より廃曲になっている。
というのは、室町時代、赤松満祐が、将軍足利義教を自邸にまねき殺害したのは(嘉吉の変)、『嘉吉記』によると、ちょうど鵜羽の観能中のできごとだったからだ。
今回上演される「鵜羽」は、平成3年(1991年)に大槻文蔵師が中心となって復曲されたものだ。

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