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技能実習の改正法案が閣議決定。国会審議へ


技能実習制度を発展的に解消し、新たに「育成就労制度」創設へ

「制度廃止」とする報道各社と微妙に表現の相違がありますが、私はJITCOのこの表現が一番しっくりきています。

私が現職に就いて、まもなく1年が経過しようとしています。
この1年の間、「技能実習指導員」「生活指導員」「技能実習責任者」と養成講習を総ナメにし、技能実習制度について多くを学びましたw

講習では主に法律を学ぶ訳ですが、制度見直しの議論のきっかけ(?)になった人権侵害について、外国人技能実習生(以下、技能実習生)が暴力やいじめを受ける動画を視聴したりもしました。

動画を見るたびに、目を背けたくなると同時に、「てめえらの血は何色だーーッ!」ばりに、強い憤りを覚えたものです。

しかしこれは全てにおいて「法律や仕組みが悪いから」とは思いません。
だって技能実習法の内容はほぼ労働基準法ですし、違反については重い処分が科せられます。

仮に問題が発覚し認定取消しになれば、ただちに技能実習生の受入れができなくなります。
技能実習生を受入れている企業がこの取消処分を受ければ、まず間違いなく事業が立ち行かなくなるでしょう。

問題は、"発覚"すればという点。
技能実習生には、我慢せざるを得ないような状況があるということです。

「移民政策」との批判を回避するための詭弁と欺瞞

『"技術等の移転"による"国際貢献"です!!だからこれは移民政策ではありません。』

技能実習法 (目的)第1条
(前略)もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする。

技能実習法(基本理念)第3条2
技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。

私は政治家ではありませんので移民の是非を語るつもりはありませんが、深刻な労働力不足に悩む産業を守るためには、当時、これは必要な詭弁だったのかもしれません。
実際にこれによって救われた産業、企業は多いでしょう。

  • "技術等の移転"が目的の"実習"だから、労働力ではありません。

  • あくまで"実習"ですから、職業選択の自由(転職の自由)という概念は存在しません。

必要があったと肯定的に評価しつつも、制度が詭弁と欺瞞から始まっている訳ですから、実態と合わず、ひずみが生じるのも仕方のないことです。

しかし、それによって、暴力やいじめ、劣悪な労働環境で我慢を強いられている技能実習生がいて、耐え切れず失踪する実習生もいるのですから、制度の見直し、とりわけ転職について制限の緩和は絶対必要だと思っていました。

目的と理念を変えるだけで

技能実習法の目的と理念を変えるだけで、技能実習生をとりまく環境は大きく(より良い方向に)変化するはずです。
制度の前提が変われば、縛りも変わる。

閣議決定された「育成就労制度」では、就労から1~2年経過で、日本語能力などの要件を満たせば、本人の意向で転籍できるようになるとのこと。

詳しくは改正法案や下図をご確認なさると良いと思いますが、"廃止"と言うよりも、まさに"発展的に解消"です。

●改正法の概要
https://www.moj.go.jp/isa/content/001415280.pdf

まぁ、技能実習生を抱える身からすると、諸手を挙げて喜ぶこともできませんけど、"人道"という観点ではやむを得ないと思います。

日本人よりも安い労働力ということも無くなるでしょう。(既にそうですが…)
賃金水準の高い都市部の企業と獲得競争になりますから、経費をひっくるめて、むしろ高くなるかも。
しかしこれも、人がいないと事業そのものが立ち行かないとなれば、四の五の言ってられません。

弊社は、この3月に新たに3名が加わり、計6名の技能実習生に来てもらっています。
ホント仲が良くて、問題など何もないように思えますが、それでも改正法施行によって「"情"だけが頼り」では通用しない変化と、厳しい現実に直面することになるでしょう。
残ってもらえる、選ばれる努力が必要ですネ=3


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