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★動画チャンネル向けシナリオ講座【0】

毎日、数多の動画チャンネルで、掃いて捨てるほどのシナリオライターが生まれては、あっという間に消えていきます。

「小銭稼ぎになると思って動画チャンネルのシナリオを書きはじめたんだけど、いつも『修正してください』って言われるんだよね」
「動画シナリオならウェブメディアよりまだラクかと思ったけど、こっちはこっちで難しい」

そりゃそうですよ。動画チャンネルとはいえ、シナリオの執筆は決して甘いものではありません。
よく、募集メッセージに

「未経験者OK!初めてでも大丈夫!」

などと書かれていますが、添削する側にとっては正直困りますね。
ほんとうに、今までまったく文章を書いたことのないような人まで応募してきますし、

「動画再生数、〇万回いったことあります!」

と自信満々の人が、ふたを開ければ……ということも数知れず。
赤字確定のような報酬で、フィードバックをきちんとしてほしいだの、ライターをほめろだの、場合によっては、こちらでリライトに近いことまでしなければならないのですから大変ですよ。

わたしは校正・校閲に携わる者として、自分が関わった記事やシナリオでは、できる限りミスのないように気をつけて仕事をしています。それは、自分で記事を書くときも同じです。

――ただ、それでも完璧にはならないものです。あとから読み返して修正漏れに気づいたときほど、悔しいことはありません。

中身のない記事や内容の矛盾したシナリオを通すわけにはいかないので、いつも細部に至るまで推敲を重ね、ライターにフィードバックをするのですが、残念ながら同じことを繰り返す方が実に多く、常々わたしはこう思っていました。

――これって、今までわたしが追究していたノウハウを、タダ同然で教えてるってことだよな……
しかも、生かそうともしない人たちにまで。
なんか、労力と時間がもったいない……

そういうわけで、ここで次のような方を対象とした「動画チャンネル向けシナリオ講座」を、有料で連載することにしました。有料でもいけそうだと思ったのは、ここ数年、自分のスキルやノウハウを提供するサイトが出現しているためです。


【この講座のターゲットとしている方】

★シナリオの修正依頼や修正箇所をなくして、納品サイクルを速めたい方
 
→少なくとも、わたしの担当するチャンネルでは修正依頼は減りますね。★わかりやすい文章を書きたい方
 
→中身の伝わる文章を書きたい方やウェブメディアでも執筆したい方。
★シナリオのクオリティを上げたい方
 
→マンネリな表現からの脱却を目指したいですね。

連載なので、週1回をメドにしたいと思うのですが、仕事がずれこんだ場合などはお休みすることもあります。日曜日は作業なしとしているので、そのあたりで更新できればと考えています。

ライターの分類

今回は初回(無料)なので、わたし独自の「ライターの分類」について書いておこうと思います。わたしは、シナリオライターの人たちを技術と性格の面で次のように分けて、それぞれに合わせた対応をしています。

1.技術面による分類

A:持ち味を生かしたほうがいいので、ある程度書き方を任せる人
B:ごく簡単な手直しで済む人
C:チャンネル視聴者のニーズに合う話を書けない人
D:話を書けているように見えて、ほかの動画に類似している部分の多い人
E:基礎的なことから全部教えなければならない人(超初心者)

AとBの人には、ほとんど修正依頼をする必要はありませんが、このような人たちは、アマチュアの寄せ集めである動画チャンネルのシナリオライターにはあまり……というか、めったにいません。こういうライターさんが、チャンネルに2、3人もいればラッキーですね。

Cの「チャンネル視聴者のニーズに合う話を書けない人」には、このような人たちが含まれます。

C-1:チャンネルの執筆ルールを守れていない人
(例)
NGワードを毎回のように使う
 →しかも、こういう人の多くはフィードバックをしても繰り返します。
・急に丁寧語が混じるなど、決められた文体での執筆ができない人
 →丁寧語を書く人に限って、謙譲語の使い方をわかっていません。

C-2:チャンネルのテーマに合っていないシナリオを書く人
(例)
・「スカッとさせること」が目的なのに、全然スカッとしない
・「感動させること」が目的なのに、なぜか主義主張を始めてしまう

AからCまで説明しましたが、Dの「話を書けているように見えて、ほかの動画に類似している部分の多い人」もけっこう厄介です。

シナリオに限らずウェブメディアでも、執筆時に参考となりそうな資料などを提示してもらえると思います。動画シナリオの場合なら、タイトルに似ているケースを扱う動画などですね。

よく、誤解をしている人がいるようですが、動画シナリオの執筆を依頼する際に参考動画を提示するのは、
「この動画とは、できるだけかけ離れた内容にしてほしい」
という意味からです。

決して「この動画と同じように書いてください」ということではありません。

さて、Dの人たちが書く文章はうまく見えますが、よさそうな場面を切り貼りしているため、参考元と同じ箇所を間違えています。さらにいうと、写し書きしているだけなので、その表現が間違えていることをわかっていない人も多いようです。

D-1:参考動画に似ている点が多い人
(例1:丸パクリ)
――この人けっこう表現力もあって、話作るの上手だなぁ。

あるシナリオを読んだときにそう思ったのですが、何かを確認する必要があって参考動画を見たところ、なんと、ほとんどの箇所がその動画そっくりということが……あったんですよ。

詳細は省きますが、その内容もさることながら、言い訳にも驚愕しましたね。もちろん修正してもらいました。こういうのを、世間ではパクリといいます。著作権の侵害で訴えられることもあるのでやめましょう。

(例2:同じような展開にしてしまい、真似できない点までそっくりに)
こちらも詳細は書けませんが、参考動画とほぼ同じタイトルで、キャラクターの設定が別のものに指定されているシナリオでした。

これは正直言って、直すのがとても大変でした。おそらく調べて書かなかったのでしょうが、参考動画ならOKでも、そのタイトルのキャラクターには絶対使えないシチュエーションを、そのまま流用していたのですから。

せめて、書こうとしているタイトルと話の流れが合っているかを、確認していただきたいものです。ウェブメディアの記事を書いている方にも共通しますが、全体を通して読むとタイトルから話がそれていることや、辻褄の合っていないことも多いので、気をつけたほうがいいでしょう。

D-2:どのシナリオでも、全体的なものがなんとなく似ている人
こちらは他人のシナリオをパクるのではなく、いわゆる「使い回し」というものです。キャラクター設定にしても、悪役をやりこめるシーンなどでも、いつも同じネタを使い回す人はいますね。

たぶん、ほかの添削担当の方もそうかと思いますが、何度か同じ人の文章を読むと、書きグセがだいたい頭に入ってしまいます。そのせいもあって、パクリにも気づいてしまうのですが。

そういうわけで、毎回同じようなキャラクターで似たような流れにされてしまうと、すぐにわかります。

――実家が金持ちで、理解のある両親っていう設定、この人好きだよね。
――そんなに海外へ新婚旅行させたいかな……国内もいいとこ多いのに。

こんなふうにです。

それ以外によく見るのは、語彙と状況描写がとても少なく、毎回同じ表現を多用する人。表現がパターン化しているので、そのままの状態で次の工程へ回すと、読み上げるナレーターや視聴者の飽きを招きそうな感じもします。

Dの人たちに関する説明が思いのほか長くなってしまいましたが、最後はEの「基礎的なことから全部教えなければならない人」に該当する人たちです。

たまに、
「義務教育で国語習いましたよね?」
と尋ねたくなるほど、破壊力のあるものを納品する人がいます。

助詞を間違える程度なら、まだかわいいものです。中には、話し言葉丸出しで、まったく文章の体を成していないシナリオもあります。おそらく、頭に浮かんだものを手当たり次第に書いているのでしょう。説明の順序がおかしい、文体がごちゃ混ぜであるといった特徴がみられます。

20代の現役大学生や少し前まで学生だった人に限らず、還暦を過ぎた、それなりのところに勤務していた人もいるようなので、文章力に学歴・経歴・年齢は関係ありません。

文章を書けていない人に限って、言い知れぬ自信に満ちて反論してきたり、

「プロットとか、どうやって作ればいいですか」
「シナリオを書く勉強になる本があったら知りたいです」

などと聞いてきたりしますが、わたしはこう伝えたいです。

「もし小中学生のお子さんがいるなら、国語の教科書を借りて勉強してください。話はそれからです」

――あくまで「伝えたい」なので、実際に言ったことはありませんけど。

まず、Eの人たちには、修正点やアドバイスといったフィードバック(FB)をたっぷり書いたうえで、納期は気にせず、きちんとした文章に直してもらうようにしています。とはいえ、ライターさんの理解力がどれだけあるかによって、どこまで直してもらうかを考えますが。

そういうわけで、次は、ライターさんの性格・理解力による分類を挙げていきます。

2.性格・理解力による分類

A:FBを理解して次に反映してくれる人
B:反応は薄くても、さりげなく気をつけてくれる人
C:修正した箇所やFBに対して反論する人
D:FBしても聞くフリだけで、次回に生かさない人
E:FBされていることの意味を理解できない人

こちらも5パターンに分けました。
Aには、FBを理解して反映しようと努力してくれる人も含みます。
AとBの人は技術面でもAやBにあたる場合が多いため、注意事項もそれほどありません。

Cの「修正した箇所やFBに対して反論する人」は、技術のあるなしにかかわらず、一定数います。プライバシーの関係上、そのままの形ではありませんが、修正に対する反論を3つ挙げます。

C-1:「すべて計算して書いているので、修正する必要はないはずです」

こうやって言ってくる人の文章は確かに、ある程度まとまっています。それでも、セリフが続きすぎて誰と誰が話しているのかわからない状態になっているなど、どこかに問題が潜んでいるケースが多いです。

このような人の場合、修正はしますが、余計なことを言わないようにしています。「NGワードを使わないでほしい」など、守る必要のある点や注意事項を伝えるにとどめています。

C-2:「この文は〇〇と直されていましたが、自分は意図があって書いたので、元に戻しました」

添削側の修正を受け入れず、こう言って書き換える人もたまにいます。

わたし自身も、以前「Webライターと呼ばれる人たち③」で書きましたが、校閲担当者に記事を曲解されて慌てて直したことがあるので、心情はわからなくもありません。

ですが、そのシナリオは意図がどうこうという以前に、文法の面で問題がありましてね。いろいろ修正したものの、その人は気に入らなかったらしく、直す必要性を感じないと言われて、数箇所は元に戻されました。

このような、意思の固い人を納得させようとしても厳しいので、C-1のケースと同じように、最終チェックで修正しなおして次の工程に回し、本人には伝える必要のあることだけを連絡して終わらせます。

さて、次は反論の3つ目ですが、これについては修正する必要があるので、しっかり言わせてもらいました。

C-3:「このキャラクターは、〇〇の状態なんです」

肝心のシナリオに書かず、自分しかわからない設定を持ってきて、FBの段階で

「説明不足でしたけど、主人公は××をしていたんです」

などとわたしに言われても意味のないことです。視聴者に与えられる情報は、漫画動画でなければ字幕と声だけですからね。一応、こういう場合は「本文に書かなければ視聴者がわからないので、きちんと状況説明をしてください」と修正依頼を出します。

しかし、このような「理由を後づけするタイプの人」は、筋の通った説明が苦手なのか、修正を頼んでも手つかずで戻ってくることも多いです。先の段落で「一応」を強調したのはそのためです。

性格・理解力による分類のDは「FBしても聞くフリだけで、次回に生かさない人」です。Dの人たちは人当たりとレスポンスがよく、筆も速いように思います。FBをしたら、

「FBありがとうございます」
「わかりました」
「次は気をつけます」

などと愛想よく反応してくれます。

ところが、次のシナリオも、そのまた次もFBの内容に変化はありません。つまり、いい返事はするものの、このタイプの人たちはFBを実行しないのです。

このような成長意欲のない人たちに説明しても徒労に終わるので、特に重要な点を3~4個コメントしています。ムダだと思いながらもFBをするのは、言ってしまえば、そこまで頼まれているからです。

ライターのレベルを上げたいと思っている運営の方は多いようで、添削の際にこういうお願いをされます。

  1. ライターの人たちが成長できるようなFBをしてほしい

  2. シナリオがさらに面白くなるなら書き足してほしい など

1については、いくらこちらで懇切丁寧に説明したとしても、受け取る側に向上心がなければ意味はありません。そのため、わたしもFBを減らします。

「この頃あいつ(みずき)に、あんまりゴチャゴチャ言われなくなったなあ」

こう思った人は、気をつけたほうがいいですね。わたしが諦めたサインですから。

そして2のような注文……いえ、お願いに従って書き足して、添削後のデータを執筆した本人に開示すると、

「どーせ添削のときに書き直してくれるから、テキトーでも大丈夫~♪」

そう言わんばかりのシナリオを次回もよこしてくるのですが、これも、Dの人に多く見られる特徴でしょう。ある意味、Eの人よりタチが悪いと思います。

最後はEの「FBの意味を理解できない人」です。ここには、次の人たちがあてはまります。

※なお、すべてにおいて、
「修正依頼をしたときに」という前提が入ります。

E-1:理屈がわからないので、ほかの箇所に応用できない人
→ひとつの箇所で「ほかにも数箇所あるので、同じように修正してください」と書いても、そこ以外は直さず放置している、など

E-2:コメントに書かれたとおりの修正しかしない人
→「これは修正例にすぎませんので、アレンジしていただいてかまいません」と書いても、同じ言葉で修正する人

◆どちらも、あまり自分で考えない人が多いようです。シナリオに限らず、話を書くには想像力(創造力)も必要だと思うのですが。

E-3:チャンネルの趣旨を理解できず、修正の方向性を間違えている人
→主人公の語りによって展開するチャンネルなのに、後半のヤマ場で本人が一切出てこないままカタがついた。説明して修正を頼んだが、サブエピソードが増えただけで主人公は相変わらず不在のまま終了、という不可解なケース。

E-4:説明の意味がわからず、修正せずに再提出する人
→タイトルから離れた話になっているので、軌道修正してほしいと依頼したが、手つかずのままで再提出してきたケース。

E-3やE-4のような人については、もう1回ぐらいなら再修正依頼を出すかもしれませんが、それでも変わらないようであれば、修正を頼めない(技術的にも難しい)と判断します。


ここまで、技術面と性格・理解力での分類と、わたしなりの対応方法を書き出してみましたが、これは、あくまで個人の基準で分けているにすぎないので、気にする必要はありません。

わたしもまだまだ感覚を磨き、執筆や添削に必要な知識も吸収しなければなりません。自分の知識をまとめることで、新たな発見につながればと思っています。

今回は初回なのでこんな感じですが、次回から動画チャンネル向けシナリオの執筆に役立つことを書いていきます。毎週続けばいいのですがね。

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