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浮気

私は彼を心から愛していたし、全部受け止められると思っていた。
思っていたが、無理だった。

彼の浮気、というのか。

敏感な私にはすぐにわかる。人妻と会っていること、スナックのママにいい顔をしてること、
真剣な付き合いではなさそうな相手ばかりだったけど、相当に傷付いた。

若い私は、小賢しくも、気付いていることを彼にアピールしていた。わかっているのよ!とばかりに、証拠を突き付けた。

彼は、言い訳したんだだったろうか、、
虚な眼しか思い出せない。

あんなに忙しい仕事の中で、私と会う時間もないと言いながら、他の誰かと会っているなんて、
気が狂ってしまいそうだった。
嫉妬、見えない誰かに。お願いだから、私に相手の事は隠してほしいとだけ願った。ほじくり出すのは私なんだけど。

彼が最後の人だから、何があっても、きっと最後にはうまくいくと信じた。
だって、「まだ」奥さんではないだけなんだと。

彼の浮気に気付くたびに、私は壊れた。壊れて、壊れて、考えた。
私の愛情のキャパが大き過ぎるのかもしれない。
私が与えたい愛情を彼がもらってくれないから、

他の人にあげてバランスを取ろうとした。
今ならわかるが、私が彼にあげていたと思っていた愛情は、単なるエゴの押し売りだった。

あげている、と勘違いして、
彼の時間を奪い取ろうとしていた。



私は世間の不倫を、肯定も否定もしない。
人それぞれに理由があるのだろう。
決まった相手への裏切りと騒ぐ人を見ると、
若い日の自分を見るようで居た堪れない。

道徳や法律で人の心は縛れない。

私は彼の行動に傷付き過ぎて、自分も対抗手段?に出て、更に傷付き、
その関係から離れることでしか、精神の安定を保てなくなった。

彼の浮気癖が原因かというと、そうとも思えない。彼が私を傷付けたというより、
彼の行動により、私の自尊心を私が傷付けたのだと思う。

彼のせいではない。自分の行動や感情を選ぶのは、自分自身だとわかってから、
彼への恨み辛みも消えて行った。

若い日の私に、なんにも知らずにはしゃいで泣いていたあの日の私に、
天にも登る喜びや、地獄の底を這う苦しみを
感じさせてもらえた彼に、
今は感謝の気持ちが湧いてくる。綺麗事ではなく。

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